【エッセイ】嗚呼‼️ 就職氷河期

私は27年前に某私立大学の人文学部社会学科を卒業していますが「4年間で一番頑張った事と言えば、演劇サークルでの活動です!」…というふざけた学生でした。

ちなみに大学は『Fラン』大学。もっとも当時はそのような言葉はありませんでしたが、振り返ると笑ってしまうくらいFラン大の条件を満たしていました。そんな中での私の成績はほとんど『可』。

でも就職は何とかなると思っていたんです。

だって私、そんなに志が高くありませんでしたから…。

「希望職種は事務。言われた事をやって、裏方としてそれなりに頑張るけど、遅くても18時には退社しまーす。4,5年後は寿退社するからヨ・ロ・シ・ク」みたいな…。(いや、もちろん面接では間違ってもそんなこと言いませんでしたよ)

ぶっちゃけあの頃よりアラフィフの現在の方が色々向上心ありますわ(;'∀')

そんなおバカな私も大学4年生になり、ぼちぼち就職活動を始めて分かったことがありました。事務員になることがどれだけ高いハードルだったか…ということを…。

【私の理想の職場、それは…】

毎年大学生を対象に『就職企業ランキング』なんてやっていますよね。

様々な大手企業の名前がランキングしていますが、当時私の就職したい企業No1といえば『海山商事』でした。「え…?それ何?なんか聞いたことあるんだけど…」というアナタ、日曜夕方はフジテレビ系を観ている(又は観ていた)方ですね? そう、『海山商事』はサザエさんの旦那様、マスオさんの勤務先であります。

マスオさんて営業課勤務らしいです。しかし営業課でありながらノルマに苦しんでいるマスオさんなんて見たことない。電話取ったり書類の作成ぐらいの仕事だけのような…。

『料理好きが高じて部下に手料理を振舞う社長』をはじめとする『ちょっとクセのある上司』はいるものの、基本、穏やかな職場ですよね。パワハラもセクハラもない企業、そしてほぼ定時で帰宅…。

こんな会社の事務員になれれば最高じゃないですか!! どっかにないの?『私の海山商事』。

…結論から言うと、そんな都市伝説レベルの企業、私なんぞにチャンスが回ってくるハズありません‼️

そういや、マスオさんは早稲田大学卒業という高学歴の持ち主‼️ きっと大学3年あたりから、就職活動に向けてコツコツ積み上げた結果が現在に繋がっているに違いない…。

【バブルってなぁに?】

「一人で数社の内定は当たり前」

「先輩は会社訪問に行っただけで、多めの交通費を貰って差額がちょっとした小遣いになった」

入学したての頃、私は就職活動に関してこんな噂を聞いていました。当時はまだバブルの名残があったのでしょうか…。

しかし私が4年生になる頃には、名残すらどっかに吹っ飛んでしまい、やって来たのはあの「就職氷河期」‼️

それでも私、何とかなると思っていたんです。くどいようですが「だって私、そんなに志高くありませんでしたから…。」(苦笑)

【事務職の求人がない!!】

大学には『就職指導課』というセクションがあり、「その課に掛かれば就職率100%」という噂を聞いていました。もちろん「よろしくお願いしまーす♡」と私が就職課を尋ねたのは言うまでもありません

が、求人情報の掲示板やファイルを見ても、事務職はほとんどなし。あるのは理工系学科向けの専門的な職種、そして私のような文系には営業職くらいしかない…。

当時就職指導課の課長に就いていたのはイマムラ(仮名)と白髪混じりのオジサン。なんか「役所の受付で黒いアームカバーつけて仕事していそうな風貌」の持ち主でした。

イマムラ氏は私にしきりに営業職を勧めてきます。「だってアンタ演劇やっていたんだろう?」と。

出たー‼️「 演劇やっていた人間、全員積極的説」(ため息) 

私、超人見知りです‼️

「そんな自分が嫌だから、せめて作られたセリフで他者を演じたい」理由で演劇を始めた人間だっているんです。

そんな私に営業なんて無理‼️

…と、いうことで少ない事務職の求人の中から何件か挑戦した私でした。

結果、全敗(涙) 

某損害保険会社の事務員の採用試験では、採用枠一人に対して30人以上の大学生が集まった事も…。

採用試験を受けられただけでもまだマシ。問い合わせの為に電話した数社は「日程が決まりましたらこちらから電話を差し上げます」と言っていたクセに27年経った今も連絡がありませんから。

色々な面で考え甘すぎました(時、既に遅し)

【そんな私が車の営業職を選んだ理由】

まあ、「理由」と言っても「この会社しか受からなかった」というシンプルな話ですけどね。ここに行き着いた理由はイマムラ氏からの一本の電話でした。

「⭕️⭕️自動車で営業募集しているんだけど」

だから「営業はノーサンキュー」だと何回言わせるんじゃい‼️…と内心イラついたものの、表面は穏やかに「いやぁ、だから営業は無理ですってぇ…」と丁寧にお断りしようとしました。

が、彼は続けます。

「営業って言っても、女性営業は車のカタログを貰いに来たお客さんと会話して『ついでに』車を売ればいいんだ。オススメだぞ」

27年も前のコトなので、詳しい内容は忘れましたが、大体こんな感じ。ただし「『ついでに』売ればいい」は間違いなく彼の口から出た言葉ですが…。

そして更にイマムラ氏がトドメの一言…。「もう11月だぞ。どうするんだ?」

このボディブローは見事にヒットしました。ちなみに私は12月生まれで、来月も内定が貰えなければ、履歴書に書く年齢が21歳→22歳になってしまいます。どうでもいいと言われればそれまでですが、「なんかイヤだなー」と思ってしまい、会社訪問→そして採用試験を受け、22歳になる前にようやく内定を貰うことが出来ました。

会社訪問の際、ちょっと気になることもありましたが、早く内定欲しくて片目を閉じて話を聞いてしまった部分もありました。

そう、それがいけなかった‼️(嘆き)

【イマムラぁぁぁ‼️】

さて、私の社会人生活は…というと、お察しの通りブラックオブブラックでございました。パワハラ、セクハラ、サビ残…。サラっと書き流しておりますが、辛くて毎日帰りの車で泣いていました。

やっぱり自分の性格で車の営業なんて務まるワケなかった! それにそもそも自分、車に興味なんかないよね‼️ 

結局2年で辞めました。イマムラ氏が言っていた美味しい話などあるわけなかったのです。

「誰か車買う人いないの!? 家族でも親戚でも友達でもいいから早く営業所に連れて来いよ」

毎日毎日こんな感じで言われ続けていました。(※あくまで私の元職場の話。全ての自動車販売店に当てはまるわけではありません)本社での研修で「営業の心得」の話になった時、「知り合いに無理矢理販売するのは感心しません。関係にヒビが入りますし、そのうち手詰まりになってしまいます」なんて言われたのですが、そんな理想、売れない営業マンには関係ありません(友達無くすのがイヤで流石に言うことは聞きませんでしたが)

誰だよ。「『ついでに』売ればいい」なんて言ったヤツは…。

退職後、大学に行く機会があったので就職指導課も訪ねてみました。

イマムラ氏は相変わらずの風貌で働いていて、私の事はよく覚えていたようでした。

この時、あの自動車会社がどれだけ大変でどれだけノルマが酷かったのかを彼に伝えました。クレームというわけではなく、ありのままを伝えるつもりで…。

「…そうか、そんなに大変だったか」くらいは言ってくれるかと思ったのてすが、イマムラ氏は吐き捨てるように一言…。

「そりゃ、そうだろ」

これで終わりです。

はぁぁぁぁ!?((((;゜Д゜)))って感じでしたよ。 

確かに自分がもっと努力していれば、2年間あんなに苦労しなかったかもしれない。でもオマエの180度違う発言は何だ‼️ 「就職率100%」ってアンタが学生騙して手当たり次第企業にぶちこんだ結果かい!?この詐欺師がぁ‼️

って爆発しそうになりました。(キタナイ言葉遣いでごめんなさい)

【リアル版アリとキリギリス】

ただ何回も言っていますが、元々の原因は自分の努力不足。

Fラン大学とは言えど、日々の努力を重ねて、やりたい仕事を勝ち取った学生は何人もいます。

オイカワさん(仮名)は同じ学部の女の子。超がつくほど真面目な学生で、授業はどんなに広くてスカスカな講義室でも、常に一番前で熱心に授業を聞いていました。(私? 後ろで居眠りしていました)

学科内では委員長的な役割を引き受け、他人の為の活動を惜しまない人…。あ、特に仲良くはなかったのです(笑)

営業マン時代、そのオイカワさんと法務局で再会した事があります。

彼女は試験に合格して見事に公務員になる事が出来ました。そして法務局の一員として、私がやりたかった事務仕事をしていたのです。制服は地味な『ザ・事務服』ですが、私の目に彼女が眩しく映った事はいうまでもありません。

演劇ばかりしていて、努力をしなかったキリギリスさんは、やりたくない営業職をやらされ、4年間努力をしていたアリさんと法務局で再会しました(涙)…こんな感じです。

また、就職指導課を頼らず、自分の力で就職先を見つけた学生もいました。

あれ? なんか自分クズじゃん(笑)

【それなっ‼️】

夫にイマムラ氏の事を愚痴った事もありましたが、優しく意見されました

「ねぇ、知ってる? 世間はそれを『自業自得』と言うんだよ」と…。

それでもイマムラ氏にはムカついていますけど。あの二枚舌に『飲んだお茶が想像以上に熱くて、半日くらいヒリヒリする呪い』くらいかけてもいいですよね⁉️

年齢が変わってもいいから、ちゃんと両目を開いて納得する活動をすれば良かった…というのが27年前の反省点。ただ『選り好み』と『自分の適正を見極める』のボーダーラインが難しいですけど…。

そんなワケで、近い将来、就職を控えている長女には自分の失敗談を包み隠さず話しをしました。『積み重ねの大切さ』を解って貰えれば…と。勿論イマムラ氏の話もしましたよ。

が、長女はそこで衝撃的な一言。

「ママとパパは車の営業の仕事を通して知り合ったんだから、イマムラ氏がいなければ、私ら姉妹は産まれなかったんじゃない?もしかして私は『イマムラの二枚舌の産物』?」

た、確かに Σ( ̄ロ ̄lll)

長女、間違った事は言っていないので、考え込んでしまいました。

あれ? もしかして私はイマムラ氏に感謝しなければいけないのかい?

非常に複雑です。

と、いうことで本当はお礼など言いたくありませんが、最後に彼への一言で締めておきます。

えーっと、イマムラ氏、元気ですか?        その節はお世話になりました。健康に気をつけて長生きして下さい。


追伸、熱いお茶には気をつけて┐( ̄ヘ ̄)┌

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