【社長の残シゴト】
『今日は、やたらと見舞いが多いから、もう疲れたよ』
「、、、
では、なんで嬉しそうなんですか?」
『嬉しそう?
そうか、、、嬉しそうに見えてるんだな』
「社長、しっかりしてください。
まだまだ、元気でいてもらわないと。私はまだ、社長に教えてもらわなきゃならないコト、沢山あるんです。
ずっと社長しか知らないコトとか、社長が決めたコトとか、知らないコトばかりで」
『やめちゃえば?』
「、、、やっぱり、そういうコト?」
『えっ、どういうコト?』
「そうやって無理難題を押し付けて、自分から辞めるように仕向けてるんですか?」
『そうだ、君には辞めてもらう、、、』
「、、、」
『、、、なんてコト、期待してるの?』
「、、、」
『おいおい、間に受けるなよ。
冗談、じょーだん、マイケル・ジョーダン‼️』
「、、、」
『すまん、すまん。
そんなんじゃないよ。ほんとうに』
「、、、もう、嫌になっちゃう。
社長、もう止めてください。私、真剣なんですよ。いきなり、社長候補だ、とかヤギさんから言われて。
社長から聞いてないんですか、ってあの方も珍しく、驚いてましたよ」
『そう?
言った気がしてたけど、、、』
「それに、あの方、いきなり、自分の会社のコト、なんだと思ってるんだ、とか何とか、大きな声を出して。
大声、出しますんで、って断ってから、だったから、まだ良かったけれど。
ビックリしちゃって、、、
何でしたっけ?」
『冗談、じょーだ...』
「違います。そうだ、そうだわ。やめちゃえば、って何ですか?
私、クビになるのかと思って、ビクビクしてたんですよ」
『なんで水嶋がクビになるの?
クビになるのをビクビク、、、』
「、、、それはスルーしますね。
引き継ぎをしろ、早く、って急に命令してましたよね。
今の人事の業務は、全部、部下に引き継いでおけ、って。それはハッキリ、しっかり言ってましたし、覚えてます。
じゃあ、私は?
私はどうなるの?
あぁ、そうか、クビなんだな。もう、用済みなんだな、私って、とか。
くじくじ考えてたんです。それに、ヤギさんも来たし。どういう仕事、業務ですか、とか、流れを知りたい、とか。
権限と責任?
難しいコトは分かりませんけど、そういう会社の仕組みとか、聞いてこられて。
いよいよ、辞めさせられるんだ、、、そんなコトを考えてましたよ。
家でも、そんな愚痴を言っても、夫は全然、頼りにならないし。
大丈夫だよ、とか、そうかなぁ、とか」
『元気?
オットセイだっけ、話の分からない』
「話が通じない、です。
元気、、、なのかしら。床にゴロゴロしてますよ」
『今の仕組みなんか気にしないで、水嶋のやりやすい形でイイから、全部、造り変えてもイイから、やりやすくしてよ。
全然、気にしなくてイイから』
「全部?
そんなの、その方が難しいですよ」
『そうかなぁ、、、
ヤギさんと一緒にさ、上手くやってよ。
制度とかもさ、勝手にドンドン変えてさ。それは水嶋の専門だろ。
スタッフが働きやすくしてさ。ずっと働いて、皆がさ、実力を発揮できるようにさ』
「、、、じゃあ、社名を変えますよ」
『、、、』
「、、、」
『、、、それはダメ』
「でしょ?」
『水嶋も面倒な所、あるんだな?』
「そうですよ。これでも、社長候補ですからね」
『いつ観ても、どんな時に観ても、最高の映画ですね』
「、、、そうだな」
『先ほど、主演女優の方が、いらっしゃいましたね。すれ違いざまですけど、簡単にご挨拶をしました』
「、、、そうだね。
あれっ、会ったの?」
『上手い具合に、二人にしてくれますね。
社長が気づかないように、社長に気遣わせないように、そっと』
「、、、そうね」
『グレゴリー・ベックはどこに、いるのかしら、、、』
「、、、ここにいるんだけどな」
『オフィス・アンには、まだまだ社長のやるコトが残ってます。早く帰ってきてくださいね』
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