日本におけるMaaS②

お疲れ様です。カワチです。ご無沙汰しておりますが修士論文が終わり卒業目前になって時間ができたのでまた更新していきます。

私は修士論文で日本のMaaSについて研究をしていました。
MaaSなんぞや?という人は前の投稿見てネ

本日は日本のMaaS全体について、修士論文を乗り越えて得たことも含めて私の所感を書きます。

MaaSという線引きの曖昧さ

MaaSという言葉が日本に現れて4年ほど経っているなかで、その線引きはどんどん曖昧になっています。
本来フィンランドで生まれたMaaSは、複数の交通手段を一つのプラットフォーム上で提供し、検索・予約・決済などを一括して行うことができるサービスというものです。
一方、日本ではオンデマンドバスなど新交通の導入から、アプリ上で検索決済できるサービスまで、様々なサービスがMaaSとして提供されています。経産省やいくつかのコンサルは、「狭義」:本来のMaaS、「広義」:新交通の導入など概念を広げたMaaS、として語っていたりもします。

実際に日本でMaaSとして実証実験されているサービスを類型化してみると、

  • 医療などの特殊な目的に適応した車両の導入

  • プラットフォームを持たず単なる既存交通再編事業的なもの

  • プラットフォームはあるけど単一交通(サービス)の提供だけしているもの

  • 既存のフリーパスの電子プラットフォーム化

  • 本来のMaaSの概念に近いサービス

というようにMaaSのサービスレベル感も含めて様々な分類があることがわかりました。(正直上3つはMaaSじゃないじゃん!!というのが私の感じるところです。)

社会実装への繋がらなさ

もう一つの現状として、実証事業は数多く行われるもののその後社会実装しないという課題があります。(社会実装することが必ずしも良いことではないですが、実証事業して得た知見があるはずで、その後に繋がらないのはとっても勿体ないと私は思っています。)

加えて、現状では地方部での実施が多く、結局は交通課題の喫緊性が高い地域で、導入されやすいサービス(本来のMaaSではなく地域交通再編のニュアンスが大きいもの)が社会実装されている傾向が高いです。

これらのことから、日本でMaaSを推進するのに、日本版MaaSだ!と言ってその概念を広げる必要はなくて、本来フィンランドで生まれたMaaSの概念そのままをどうやって成立させるかを考えるべきというのが私個人の意見です。

新モビリティあたりとごっちゃにして補助金制度にしてしまったことが最初の間違いだったんじゃないかなあ、MaaSという言葉が一人歩きして拡大してしまったなあという印象。

この投稿では以後、本来フィンランドで生まれたMaaSの概念そのままをMaaSと呼びます。

何が社会実装の壁なのか

では結局何が社会実装を妨げているのか?というと以下2点が大きいかな、と。

MaaSだけのシステムでは儲からない!!

結局MaaSを構築するのにかなりの投資が必要で、相当の利用者がいないとペイできないことが実証事業を通してわかってしまったので、進まないという現状があります。コロナも追い討ちをかけていますね。

事業主体がいない!!

今は儲からなくても、長期的にみたらプラマイゼロ、プラスにできるぞ!という責任を持って長期的に事業を引っ張れる主体がいない。
実証事業の時点では事業主体いっぱいいるように見えましたが、国の補助金も単年度仕様、自治体の契約も単年度ごと、となると、なかなか継続して事業主体を担う存在が出てこない。

今後の日本のMaaS展開

以上のことから、次の3点が今後の方針の鍵なのかなと思っています。

  • 責任をもって主導する事業主体の存在

  • 大課題であるマネタイズの成立を支援するシステムがあるべき

  • 単年度のチャレンジで終了は勿体ないので、事業継続のためのフォロー体制

小田急やトヨタみたいな体力ある事業者だといいんだけど、皆が皆そうじゃないもんね〜
むしろ今先頭切ってる会社にコンサル的業務も積極的に担ってもらって、横展開していくのが良いのかもしれないです。

ただ、MaaSを導入するべき環境なのか?という議論は忘れないほうがよくて

特に観光地とかだと、既存フリーパスもあるしMaaS導入しやすいじゃん!となる一方で、MaaSを導入する以前に観光地の魅力度が高くないと利用者数を維持できないし、そもそも前提として交通がある程度揃ってないとMaaSのサービス内容として不完全に終わってしまったり、MaaSで便利にしようとしていたけど実はすごい儲かっている既存タクシー路線があったとかそういう問題も浮き上がってくる。

これらの問題を浮き上がらせてMaaS導入環境にふるいをかけたという意味では、数々の実証事業は意味のあるものだったのかもしれません。

MaaSは結局利便性を高める1つの手段であって、
MaaSだMaaSだ!となる前にやるべきことがある地域もあるのを忘れないようにしないといけない。

期待すること

前述の通り、基本的には体力ある事業者の横展開が基礎になっていくのかな〜という印象です。
でも結局MaaSだけを進めてもダメなので、それが成立する環境みたいなのを知りたい、観光地ならこれくらいの集積度合いがあってこれぐらいの魅力度がないと成立しないとか研究してみたい。(もう卒業するけど)誰かやってないかな。

自動運転とか、ダイナミックプライシングとかみたいに、そもそもプラットフォーム環境下でないと利用できない新技術が発達したら、自動的にMaaSも推進されていくと思うので、特に地方部はそれに期待かな…というのと、都心部では既に利便性が高いし、人々の利用をシフトさせるほどのMaaSを作れるのか?投資のコスパ悪そうだし事業者はやらなさそうだな、という感覚があります。

おわりに

なんか久しぶりにnote書いたら色々アップデートして戸惑いました。
あと自分の文章の書き方がわからなくなってました。笑
今後も2〜3000字程度で書いていきたいと思います。

今日はこれで終わります。最後まで読んでくださってありがとうございました。
カワチ


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