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君から返ってくるまで #4


 ーーあれから僕は直ぐに救急車を呼び、一緒に病院へと向かったが、さくらの母は助からなかった。アルバイト中で電話が繋がらなかったさくらは、母親の最期を看取ることが出来なかった。

「優太・・・!」

 2時間ほど経って、涙と汗でぐちゃぐちゃになったさくらが、息を切らしてやって来た。僕を見つけた途端、力一杯僕にしがみつき、声を荒らげる。

「お母さんは・・・!?ねぇ、お母さんは!?」

 僕は首を横に振ることしか出来なかった。なんて声を掛けてあげればいいのか、その時の僕にはまるで分からなかったのだ。

「どうして・・・!!今朝だって、あんなに元気だった・・・!!」

 そう言って、僕にしがみついたまま地面へと崩れるさくら。


 小さい頃、父親が出ていってしまい、兄弟も居なかったさくらは、母親だけがたった一人の家族だった。二人は、姉妹のように、友達のように仲が良く、その二人のやり取りに僕も何度も笑わされたし、励まされた。

「優太も私の家族だもん!」と、そんなことを言っていても、さくらの家族はたった一人なのだ。母親しか、居なかったのだ。そんな唯一の大切な人を亡くしてしまった彼女の絶望は、とても計り知れない。


 僕が居残りなんてせず、もっと早く帰っていたら。もっと早く、おばさんを見つけていたら。後悔が押し寄せて離してくれない。

『ごめん・・・さくら・・・ごめん・・・!』

「・・・謝らないで。優太は何も悪くないよ。・・・お母さんの所に連れて行って。」

 そうして、変わり果てた母の姿を目の当たりにしたさくらは、先程より更に声を荒らげて泣いた。



 僕にとっても第二の母のような存在だったさくらの母。いつも明るく優しくて、自分の子供のように僕に接してくれた。

「優太くんはさくらの未来の旦那さんなんだから、もう家族同然よね!」・・・おばさんまでそんなことを言っていたっけな。



 もうさくらに家族は居ない。だから、子供の頃以上に、僕がさくらを守っていかなきゃいけない。そしていつか、さくらの本当の家族になる。

 泣いているさくらを抱き締め、僕も激しく泣きながら、そう、心に誓ったーー



次章 〜虚無の世界〜


✄--------キリトリ--------✄


冬休み特別企画4日目です❄️
さくらぁあああああああああ。°(՞இωஇ՞)°。

新年一発目になんて悲しいお話なんだ・・・!!


ということで、暗い幕開けになってしまいましたが、新年あけましておめでとうございます🎍今年も何卒よろしくお願い致します🙇🏻‍♀️

明日もお楽しみに!

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