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【おかわり】聴いた曲を紹介する日記(番外編):『帰ってきたミエハルカラオケ夏バージョン』に参加してみた2(秋元康「東京に実在する場所が登場する曲」3選)

(2023年8月22日夜、追記しました)

■ミエハルカラオケにまた参加したよ

先週、チェーンナーさんの呼びかけ、ミエハルさんとの共同主催の「ミエハルカラオケ夏バージョン」に「秋元康作詞でタイトルや歌詞にポニーテールが登場する曲3選」で参加させて頂いたのですが、(ルールさえ守れば)何度でも参加して良いということだったので、開催期間の間にもう一本書いてみることにしました。
こういうふうに他の人の企画に乗っかっていく形でも無い限り、普段Noteでは基本的に目立とうとせず、そして実際目立つこともバズることもなく、ひっそりと書いているのですが、たまにはいいかなと。

前回も謎に秋元康縛りでしたが、今回もまた謎に秋元康縛りで、「秋元康作詞で東京に実在する場所が登場する曲3選」をお届けします。
それではどうぞ。

■偶然の答え/櫻坂46


『♪渋谷に出かけるなんて滅多にない僕なのに あの日の予定変更して一人で行ったんだ』
『♪スペイン坂を降りて帰ろうと思った時 階段を登ってきた君と目が合った』
『♪センター街の方へ二人で歩きながら もし誰かに見られたら誤解されちゃうね』

今回選んだ3曲の中では、わりと素直というか、わかりやすい曲だと思う。
実在する渋谷、その風景、場所が、そのまま物語の世界観の効果として使われている印象の曲。
渋谷の普段の街の風景を知っている人なら「偶然でかけた渋谷で君と目が合う」という出来事に、奇跡や運命、何かの意味を見出してしまう感覚を共有できる、その意図が作詞に現れている気がするので。
欅坂46、櫻坂46の曲は、渋谷区を舞台にした曲、あるいはイメージしたと思われる曲自体多いけど、だから最初から渋谷というわけではなく、曲の世界観と物語がもっとも効果を発揮する場所として渋谷を選んでいる印象がある。

地名や場所以外の要素に目を向けて見ると『なんでここにいるの?』という言葉選びも何気ないけどリアリティがあって好き。
本曲が詞が先か曲が先かわからないけど(秋元康の場合、レコーディング当日やリップシンクが必要なMV撮影当日にその場の感覚で歌詞を変えることもわりとあるみたい)、メロディの譜割的には「なぜここにいるの?」のほうが歌としては自然に思えるのだけど、「なぜ」ではなく「なんで」という言葉が、偶然出会えた驚きの感情と、日常会話感を演出している。

MVでは、さらに踏み込んで歌詞だけでは全てを解釈するのは難しい2人の特別な関係に踏み込んでいて、この設定自体は秋元康が意図したものかはわからないけど、歌詞から自然に解釈してもMVの設定を加えて解釈しても成立する楽曲になっているあたりも面白い。
MVの設定で歌詞を解釈した場合、『唐突に思ったよ 冷やかされたいって』『冗談ぽく言葉にしてたけどどうなんだろう?』という歌詞が別の意味を持ってくるのが、そこまで考えて歌詞が作られていたなら、ちょっとあまりにも凄すぎる。

■他の星から/乃木坂46

『♪飯田橋の駅を降りて気づいた いつもと同じだけど 私にはわかるんだ』
『♪神楽坂の坂を上がって急いだ 世界の危機ってこと 私にはわかるけど』
『♪紀の善であんみつ食べられればそれ以上の贅沢は望まない』

本曲は、実在する場所で描かれる『私』の日常感と、『私』が感じている『世界の危機』という、一見すると現実感が無い=非日常感の物語の対比を描いた曲。
現実に実在する場所が登場することで、その場所を知っていれば、あるいは知らなくても地名を知っているだけでも、聴いている人が「自分の知っている日常と同じ世界観」を共有できるというメリットが活かされている。

もっとも、この『世界の危機』という歌詞も、おそらく「生活環境の変化や対人関係における漠然とした不安感や終末感」の比喩の意味が込められていて、『私』にとっては「自分が感じているのだからこれはきっと本当に世界の危機なのに『誰もが同じ与えられた仮面で(表情がない)』と感じるのはきっと『他の星から来た(知らない人)偽政者の指示(目的は何?)』の仕業に違いないと思える、でも、それが妄想なのか事実なのかは表面化しないとわからないよね?……という物語と比喩の二重の意味を重ねた内容が面白い。

なお、詞の中で登場する甘味処「紀の善」も、神楽坂に実在した老舗だったけど、店主高齢化や諸般の事情を理由に閉店してしまっているのが残念。

■東京タワーはどこから見える?/欅坂46

『♪この歩道橋 渡る途中 東京タワー見えなかったっけ?』
『♪正面の空に 確か東京タワー 僕らと並んで立ってた気がした』

前回は「ドローン旋回中」を紹介したいがために「ポニーテール曲」という括りで3曲を紹介したけど、今回はこの「東京タワーはどこから見える?」を紹介したいがために「東京に実在する場所や地名が登場する曲」括りにした……まである。
なんせ自分が毎日書こうと思って始め、とりあえず今日まで164回毎日続いている「聴いた曲を紹介する日記」の記念すべき(?)第1回に選曲したくらい好きな曲(おかげで全く読まれていないけど)。

「東京タワー」がタイトルでも歌詞でも前面に押し出された曲ではあるけど、この曲のメイン要素は『記憶の断片を 真実より 美しく補正して』『振り返れば美化され 飾られた未来でも』と「思い出や記憶は、忘れたり書き換わったり、なんなら時にそれぞれにとって一方的に都合が良い内容に書き換えられるもの」という共感を「東京タワーが見えた風景の記憶の書き換えや忘却の物語」で比喩しているところ。
人間心理そのものを描くのではなく、現実にある物理的なもの(東京タワー)を使って間接的に人間心理を描く……こういう歌詞こそ歌ならではの文学性や芸術性を感じて、自分は良いなと思う。

■おわりに

いかがでしたか?(定番の終わり方)
秋元康、AKB商法とか他のアイドルビジネスとか、物議を醸す歌詞とか、いろいろと言われることも多いですが、やっぱり天才なのは間違いないと思います。
これは前回「ドローン旋回中」の紹介文で書いた内容の繰り返しになるのですが、「詞(作詞、歌)」というのは「文(文章、文学)」と同じようでいて別物で、リアルな物語の情景や心象を描くものであると同時に、リアルそのものを書くのではなく、テーマの比喩が重視されるもの、リアルそのものはあくまでも比喩のための材料であると思っていて、その比喩表現のバランス感覚が秋元康は本当に天才だなあと自分は思うのです。


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