文豪の真似事

数年前の話になるのですが、大学の講義のレポートの作成が思うように進まない時がありました。

関心のある講義では無かったため、やる気があまり上がりませんでした。

日に日にレポートの〆切が近づき、ヤバいヤバいと思いつつも一向にレポートを書く気にはなれません。


そういえば昔の文豪は、小説を書くために温泉宿で缶詰になって執筆を進めていたなぁ。

もしかしたら、ちょっと環境を変えたらやる気がでるかも!


と、本当は現実逃避したかっただけなのですが、レポートの最初の1行を書くためだけに、どこかで一泊することに決めました。

東京の都会の喧騒を離れてみたかったこともあり、甲府の格安の宿を予約しました。予約後、すぐに中央線に乗り、甲府に向かいました。

宿は、1泊約4000円、朝食付きの家庭的な宿でした。

部屋は畳の和室で、冷蔵庫やエアコンはレトロなものが多く、

浴衣を着れば、なんだか本当に昔の文豪になったような気がしてきました。

さぁ、書くぞ。パソコンを開き、最初の1文字を書きました。

宿のきれいに掃除された部屋には誘惑が少なく、2時間程度集中してレポートを書くことができました。


夜になり、夕飯を調達。部屋で夕飯を食べたあと、宿にある大浴場に行きました。

大浴場というよりは大きめのお風呂でしたが、一人暮らしを始めてから、ほとんどシャワーで済ましてしまうことが多かったため、久々に足を伸ばしてくつろぐことができました。


風呂から上がったあとはレポート・・いやぁ~でもちょっとテレビ観よう。ふむふむ、山梨のローカル番組はこういうのをやっているんだね。今日、山梨ではこんなことがあったんだぁ~明日の山梨の天気は・・

今日は東京から電車移動だったけど意外と疲れたなぁ~眠くなってきた・・


夜もレポートを書くつもりでしたが、結局、そのまま寝てしまいました。


翌朝、朝食が付いていたので、一階の食堂へ。

テーブルに座ると、宿のおばさんが朝食を持ってきてくれました。

ごはんに焼き魚に漬け物に味噌汁。こういう一番シンプルな朝食が、なんだかんだ一番美味しいんですよね。一人暮らしを始めて、不健康な食生活を送っていたため、家庭的で健康に良さそうな朝食はものすごく美味しかったです。離れた実家の朝食を思い出して涙が出てきそうでした。


朝食を食べた後は、荷物をまとめて、そのままチェックアウトしました。

結局、レポートは書き終わりませんでした。ただ、泊まった宿は一泊4000円にしてはお風呂も入れるし、朝食も美味しかったし、宿のおばさんも優しく、とても良いところでした。

翌年、また同じ宿に宿泊しました。なんと宿のおばさんが私のことを覚えていてくれた(宿泊履歴を見ただけかもしれませんが)ようで、これ以降、縁も所縁もなかった甲府に何だか親近感を抱くようになりました

現在、コロナの影響かどうかは分かりませんが、その宿では宿泊の予約を受け付けていません。もしまた予約できるようになったら、泊まりに行こうと思います。

思いつきで行動したものの、思わぬ良い宿に巡り会い、旅はやっぱり良いですね。ただ、旅先で何か〆切に追われるものをやるのは自分には向いていないような気がしました。最近、「ワーケーション」が話題になっていますが、私の場合、きっと遊んでくつろいでしまい、仕事は捗らないんじゃないかな~。昔の文豪を見習いたいものです。

ちなみにレポートはなんとか〆切に間に合うことができました。ちょっと書き始めれば、自然とやる気は出てくるものですよね。最初のやる気を起こすきっかけ作りと考えれば、今回の旅は無駄ではなかったのかなと思います。

今日はここまで。最後まで読んで頂きありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?