桑原亘之介

1963年東京生まれ。82年都立清瀬高校卒。87年上智大学外国語学部英語学科卒、日本経…

桑原亘之介

1963年東京生まれ。82年都立清瀬高校卒。87年上智大学外国語学部英語学科卒、日本経済新聞社入社。その後、共同通信社へ。2021年退社。15年暮れよりコラム「スピリチュアル・ビートルズ」をサイト「OVO」にて連載。音楽、映画、美術展に興味あり。環境雑誌「奔流」編集委員。

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    ビートルズをはじめとした洋楽そして昭和歌謡など邦楽など音楽を取り上げた記事です。たかが音楽、されど音楽です。

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テレサ・テンの夢

 1989年6月9日未明、中国北京では民主化を求め天安門広場に集まった学生を中心とする市民が、軍によって武力弾圧された。いわゆる天安門事件だ。アジアの歌姫といわれたテレサ・テン(鄧麗君)も、この惨劇によって人生を狂わされた一人だった。  台湾生まれのテレサは10代から才能を開花させてスターダムをのし上がった。70年代には香港に進出し、成功を収める。やがて80年代になると中国大陸でも公には「精神汚染」をもたらすとされ禁止されていたにもかかわらず、広く聴かれるようになった。  そ

    • 5.8原子力規制委会見

       東京電力福島第一原発での作業中に電源ケーブルが謝って切断され作業員が負傷した先月の事故を受け、原子力規制委員会の山中伸介委員長は2024年5月8日の定例会見で東電の「リスク管理に甘さがあった」と述べた。  電源ケーブル切断以前にも度々同原発で起きたトラブルを挙げて、山中委員長は「いづれにしても東京電力のリスク管理の甘さという点で共通するところがあるという認識で、この点について東京電力に原因究明をしてもらわないといけないし、今回の施設だけでなく福島第一全体の作業についてリスク

      • アフロ民藝の作り手

         「アフロ民藝」の作り手、シアスター・ゲイツさん(1973~)の日本初の個展が2024年9月1日(日)まで森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)で開かれているのを、5月8日(水)に鑑賞した。  米ミシシッピー州とシカゴにルーツを持つアフリカ系アメリカ人のゲイツさんが日本に出会うことで生まれたコンセプト「アフロ民藝」。  アメリカ公民権運動の一翼を担った「ブラック・イズ・ビューティフル」と日本の民藝運動の哲学とが融合した独自の哲学とみられている。  ゲイツさん自身は次のように語

        • さらば!シンコー旧本社ビル

           日本の洋楽専門誌の先駆けといえばミュージック・ライフ。ビートルズへの直撃取材など音楽ファンが楽しみにしていたその雑誌を発行していたのがシンコーミュージック・エンタテイメント(旧・新興楽譜出版社)だ。  2024年、同社は創立92年となる。本社ビルが東京都千代田区神田小川町から、近所ではあるが錦町に移転したのを機に訪ねた。  同社の神田小川町の旧本社ビルの入り口を入ると熱狂する観客たちの写真と、エレベーター脇のビートルズの大きな写真が出迎えてくれる。  ビートルズ最後のツアー

        テレサ・テンの夢

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          越路吹雪衣装展を見た

           今年は稀代のエンターテイナー越路吹雪の生誕100周年。  それを記念して早稲田大学演劇博物館(東京都新宿区西早稲田1-6-1)で2024年8月4日(日)まで「生誕100年 越路吹雪衣装展」が開催されているのを、5月7日(火)に訪れた。  2009年以来15年ぶりの大規模な越路吹雪展だ。  展示会場には日生劇場リサイタル’70の映像が流されて、「ろくでなし」や「愛の讃歌」の歌声を聞くことが出来た。  越路さん(こーちゃん)は戦後、宝塚歌劇団で主役男役となり、退団後もミュージ

          越路吹雪衣装展を見た

          ハンセン病患者の絵画展

           国立ハンセン病資料館(東京都東村山市青葉町4-1-13)で「絵ごころでつながるー多磨全生園絵画の100年」というハンセン病患者たちの作品の展覧会を2024年5月6日(月・祝)に訪ねた。  この絵画展は9月1日(日)まで開かれている。休館日は月曜日および「国民の祝日」の翌日(月曜が祝日の場合は開館)。入館無料。  患者たちの絵画活動のはじまりから現在までを辿る初めての展覧会だ。油絵や版画など作品111点が展示されている。  また、活動に使われた道具など関連資料を見ることも出来

          ハンセン病患者の絵画展

          「Beatles in Hamburg」を読む

           【スピリチュアル・ビートルズ】英ノーサンブリア大学の客員研究員イアン・イングリスの2012年の著作「The Beatles in Hamburg(ビートルズ・イン・ハンブルク)」の日本語版(訳者:朝日順子、解説:藤本国彦)がこの度、青土社から発売されたのを読んだ。  ハンブルク時代に注目が再度集まっている折の出版で興味深く読んだ。  多くの識者がこれまでも指摘してきたように、ビートルズを本当に育てたのはリバプールのキャバーン・クラブではなく、むしろ長時間のギグを毎晩繰り返し

          「Beatles in Hamburg」を読む

          古賀政男音楽記念館を訪ねて

          「影を慕いて」「酒は涙か溜息か」「丘を越えて」「東京ラプソディ」「人生の並木路」「誰か故郷を想わざる」「湯の町エレジー」「無法松の一生」「悲しい酒」「柔」ーー枚挙に暇がない古賀政男メロディーの名曲の数々。  その古賀が気に入って「音楽村」を作ると意気込んで移り住んだ代々木上原に「古賀政男音楽記念館」(東京都渋谷区上原3-6-12)がある。  2024年5月4日(土・祝)に訪れた。  名曲の数々を作曲した”大衆音楽の父”古賀政男。  福岡県大川市に生まれ、大正12年に上京し、

          古賀政男音楽記念館を訪ねて

          スーダン・チャリティバザー

           2024年5月4日(土・祝)、スーダン・チャリティバザーが東京ジャーミイ(東京都渋谷区大山1-19)で開かれたので行ってきた。  東京ジャーミイの歴史は戦前にまで遡る。ロシア革命を逃れてきたタタール人たちの礼拝所を求める声にこたえて1938年に東京回教礼拝堂が竣工した。老朽化により1986年に取り壊されて、2000年に新たに建てられたのが東京ジャーミイトルコ文化センターだ。  スーダンはアフリカ大陸北東部に位置する大国だ。古来より、地中海世界や紅海沿岸とアフリカ内陸部を結び

          スーダン・チャリティバザー

          湯島天満宮を訪れた!

           学問の神様・菅原道真を祀っていることで知られる湯島天満宮(湯島天神)を2024年5月3日(金・祝)に訪ねた。  伝承によれば、1355年、湯島の郷民が霊夢によって老松の下に勅請したといわれている。その後、太田道灌が社殿を再興し、江戸時代に徳川家康をはじめ歴代将軍があつく庇護して隆盛を極めた。  入口には銅製の鳥居。  梅の名所としても知られる。  宝物館もある。   湯島天満宮には「女坂」「男坂」と名付けられた石段がある。女坂は33段の緩やかな石段。38段の急な石段

          湯島天満宮を訪れた!

          春日局のお墓@鱗祥院

           NHKの大河ドラマにもなったことがある春日局。  本能寺の変で織田信長を暗殺した明智光秀の重臣斎藤利三は斬首される。  その娘が福で、のちの春日局だ。  裏切者の娘として辛い子ども時代を送らなければならなかった。  しかし、三代将軍家光の乳母として迎えられた後は、家光が将軍職に就くようにと献身的に支え、また大奥制度の確立に力を注いだ。  明正天皇より従二位に叙せられた。  1643年9月14日、65歳で亡くなった。  そんな春日局のお墓が東京・湯島の鱗祥院(りんしょういん)

          春日局のお墓@鱗祥院

          ダム湖に沈んだ越後奥三面

           越後奥三面(おくみおもて)は山深い。だがこの地域は2万5千年前の旧石器時代以来の人間生活、人間文化の地であった。  だが、そんな越後奥三面はダム湖の底に沈んでしまった。  その前に越後奥三面の「山に生かされた人々」を追いかけた記録映画を民族文化映像研究所が制作していた。  この度リマスター化がなされてポレポレ東中野で上映中の「越後奥三面ー山に生かされた日々」を2024年5月1日(水)、鑑賞した。  まずは村の冬から始まる。季節の行事などが映し出される。  順番に春、夏、秋と

          ダム湖に沈んだ越後奥三面

          「民藝展」を観た!

           民藝とは何かーそのひろがりと今、そしてこれからを展望する「民藝MINGEIー美は暮らしのなかにある」が2024年6月30日(日)まで世田谷美術館(世田谷区砧公園1-2)で開かれている。  同年5月1日(水)に訪れた。  日本民藝館の深澤直人館長は図録で書いた「美を生み出す力の原点であり、美しい暮らしの源泉たる「民藝」。この独自の「モノの美学」は約100年前に思想家の柳宗悦(やなぎむねよし)が説いたものですが、現代に至るまで人々魅了し続けており、普遍的な力の鮮度を保ち続けてい

          「民藝展」を観た!

          ジョージア映画祭2024@渋谷

           ファンが待ちわびるジョージア映画祭の開催まであと約4か月となった。超短編あわせて40作品が上映され、うち15作品が日本初上映となる。  東京渋谷のユーロスペースで2024年8月31日(土)から9月27日(金)までの4週間にわたって開催される。  今年の映画祭はAからHまで、8つのプログラムとなっている。  A:ラナ・ゴゴベリゼ監督特集   ジョージアの伝説的女性監督である。代表作「金の糸」は自身の過去を投影し、91歳にして発表した過去との和解の物語だ。  ゴゴベリゼ監督

          ジョージア映画祭2024@渋谷

          映画「彼は早稲田で死んだ」

           東京・高田馬場の本屋で「彼は早稲田で死んだ」という本が平積みされていた。早大の地元・早稲田だからかなと思った。  そして安保の時の話かなと漠然と思っていた。  70年安保の挫折そしてテレビ中継された赤間山荘事件、後に明らかになった内ゲバ・・・。左翼活動衰退への一つの転換点となった。  思うにそれは今日の政治の機能不全とも関係しているのではないか。政治というのは現実と理想のギャップを埋める仕事だと思う。理想だけ掲げて訴えていても仕方がない。だが、そういう連中も多い。  現実だ

          映画「彼は早稲田で死んだ」

          元風俗嬢の写真展を見た!

           1972年生まれの紅子さんは高校を中退し、10代で風俗嬢になった。  「紅子の色街探訪記 現代に生きる色街」によると、「小1から自殺未遂を繰り返していた私は、いつしか裸になって働くことを夢見るようになっていました。小学生の頃は家に閉じこもり暗やみの中で女体の絵を描き続けていました」。  「初めて風俗店で裸体となったのは19歳の夏。裸になれば人に受け入れてもらえるのでは?そんな愚かな夢は一瞬にして儚く散っていきました」。  「風俗で働くことは孤独との隣り合わせのような日々でし

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