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『とある創造主の末路』

 彼の創り出す世界は、それはそれは素晴らしいものだった。彼にしか創り出せないその世界に、人々は魅了され、虜になった。
 彼自身も、自分の世界を創ることに夢中になった。朝も昼も夜も世界を創ることだけを考えた。
 彼は、自分の世界に合う者のみを引き入れて、合わない者は排除した。彼は自分の世界だけを見つめていた。周りのことなど、どうでも良かった。
 大事なものがなくなっても、大事な人達が離れても、彼は自分の世界を創り続けた。

 ある日気づくと、彼の周りには、ただの暗闇だけだった。
 すべてが彼から離れていったのか、それとも、彼が他のもの全てを閉ざしたのか……。
 しかし彼には自分の世界があったので、ちっとも寂しくなかった。

 たとえ世界が滅んでも、人々が滅亡しようと、彼は自分の世界を創り続けるだろう。
 誰も観てくれる人なんていないのに。
 きっと創り続けるのだろう。
 いつまでも、いつまでも。

(おしまい)

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