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耳が聞こえます。助けてください。⑤

連載「耳が聞こえます。助けてください。」⑤ byりこ
(この小説は今現在、くつばこのメンバーに起きている事実をもとにしています。)

私には、反応してくれなかったな。どうしよう。上手くいくのかな…

LIMEのアプリを閉じる気力もなく、スマホの電源を切った。暗い画面が、もっと暗い自分の顔を映している。こんなんなら、入らなきゃよかった。っていうか、さやかちゃんくらい返信くれてもいいのに…

そのまま、スマホの電源を切った。しばらく、開きたくなかった。
こんな時は、昼寝だ。もう何もかもがどうでも良くなって、私は昼寝をした。

「みか、ご飯よ。あと、LIMEに写真送ったから、見といて」
「はーい」

私の家族は、私だけではなくみんな耳が聞こえてしまう。いわゆる「ヒアファミリー」だ。ヒアはhearである。晩御飯は、茄子と豚肉の炒め物だった。大好きな茄子も、今日はのどを通らない。食事中、しゃべろうとするとお母さんに怒られた。
「ほら、食べながら話すのやめなさいって、ずっと言ってるでしょ。私たちは手話じゃなく口で話すんだから、外でやったら白い目で見られるわよ。」
そうだ。私は耳が聞こえるんだ。

なんとか茄子を胃に押し込むと、自分の部屋に戻った。
(あ、LIME見なきゃ)
スマホの横のスイッチを長押しする。ぱっと白い画面になって、起動した。アプリの左肩に㉚とある。つまり、LIMEの通知が30件もある。全部、あの竹本君とやらへの返信だろうか。あ、1つはお母さんか。
そんなことを思いながらアプリを開く。


違った。


グループチャットではなく、個人チャットに、クラスメイトからのメッセージが届いていた。
▷はじめまして!追加しました。坂下です。できることはするね!よろしく~
▷勝手に追加してごめんね。わたしの親戚にも耳が聞こえる人がいるから、勝手に親近感沸いちゃって。よろしく!
▷こんばんは。優美です。追加して大丈夫だったかな?オンラインだけど、よろしくね!

みんな一言メッセージと、指文字ではないスタンプを送ってくれる。中には、文字をわざわざ読み上げさせた動画を送ってくれる人もいた。文字は読めるからそんな必要はないのだが、嬉しい。嬉しい。嬉しい。


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