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耳が聞こえます。助けてください。⑦

連載「耳が聞こえます。助けてください。」⑦ byりこ
(この小説は今現在、くつばこのメンバーに起きている事実をもとにしています。)

【夕日新聞 8月1日 朝刊】
コロナ蔓延 原因は音声での会話か
【数日新聞 8月3日 夕刊】
コロナ拡大の「立役者」 聴覚障害団体に抗議のメール100件以上
【読買新聞 8月3日 朝刊】
特集 唾を飛ばす聴覚障害者たち

ニュース、新聞、様々な場面で今、聴覚障害者が叩かれている。それもそのはずだ。コロナウイルスの感染拡大に、耳が聞こえる聴覚障害者による飛沫感染があるとされ、科学的に立証されているのだ。コロナによる活動制限がつらくなるにつれ、聴覚障害者へのあたりもきつくなる。私たちには他に話す方法がないのに。

手話教室の先生が入ってきた。
「こんにちは。みなさん、元気ですか?ニュースやSNSでの誹謗中傷が増えていますが、どうか気にしないで。聴覚障害があることは、悪いことではありません。音声会話はマスクをしていれば大丈夫です。でもできれば、街中では話さない方がいいですね。」
先生はそう悲しそうに言いながら、手話の授業を始めた。

病気がはやるたびに、こうなる。「音声日本語を使う人は、病原菌を持っているから、近づかない方がいい」そう小学校の時に言われたこともある。普段は多少言われても、ニュースになるほどではないし、どちらかと言えば「差別だ」とそういった発言はたしなめられる。しかし今回は訳が違う。ワクチンがないウイルスが、蔓延している。街中は静かにしないと歩けない。手話を使わずに楽しそうに話しているのを誰かに見られると、なにか手話でわーーーーっと(おそらく「しゃべるな!」といった内容)言われたり、紙に「だまれ」と書いて見せられたりする。お店にも、音声日本語を使う人は入れない。

帰り道、私は隣にいる後輩とLIMEで話しながら、時折笑顔を見せあいながら、家に着いた。

家に着くと、何やら知らない黒い物体が、ぴょんぴょんと飛んでいる。それ以上、どう表現することもできない。ぴょんぴょんぴょん。さっきまでの手話教室の現実と、今目の前に起こっている事が、結びつかない。(なんだこいつ)私はそう思って、じっと凝視していた。思わずスマホを取り出して、動画を取った。ぴょんぴょんぴょん。ジャンプしている動画が取れた。そしてこちらに気が付くと、飛んだ。飛んだ。羽をもっていたのだ。飛んで、部屋をぐるっとすると、私の前の棚にチョンッと止まった。そして、言った。なんとその鳥(?)は、音声日本語を話せたのだ。
「おいっ」
「おいっ」
「よろしくな」
「カラオだ。」

あまりに理解できないことが起こり、私はおどろいた。おそらくだが、これを読んでいる方も驚いていることだろう。さあ、今日からカラオと私の毎日が始まる。コロナが蔓延し、聴覚障害者への風当たりが強くなり、オンライン授業で新たな生活に四苦八苦しているわたしのもとにやってきたこのカラオは、何者なのだろうか…?

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