コラム1 わたしがBL小説を書くようになったワケ。

 こんにちは。九灯兄妹の妹のほう、小膳です。

 わたしはnoteと小説家になろうでBL小説を書いています。
『いい人の中の悪い人。』『MANHUNT -マンハント-』
それまでNL(=ノーマルラブ、男女の恋愛)しか書かなかったわたしがなぜ突然BLを書き始めたのか。

コンプレックスから書き始めた

 結論から言ってしまえばわたしの抱える「恥の意識」が強く関係しているのだと思います。

 わたし、小膳は十代のころから親が要求する「女性らしさ」に応えられず、それがものすごく大きなコンプレックスになっていました。
ことあるごとに「女らしくない」「普通の女の子はそんなことしない(テレビゲームや少年漫画が大好きだったのが気に入らなかったのだと思います)」と母親に言われ続けた結果、自分は女性でない、女性モドキの何かだと思い込むようになったのです。

(このあたりのことは『リベレーター:アウェイクン』という短編に露骨に反映されています。良かったら読んでてみてください)

 だからいつも恥ずかしくて仕方ありませんでした。
服も体型も容姿も人並みになろうと努力していても、他人の眼がこちらに向くと緊張して手が震えました。
自分は周りにいるキレイなお姉さんたちとは違う、「女性モドキの何か」だから、きっとバカにされてる、気持ち悪がられているって。


自分が何を書きたいのかわかっていなかった

 唯一の救いは小説を書くことでしたが、こちらもうまく行っていませんでした。
書いたものをネットで公開し感想を募っても、反応は芳しくありません。
指摘されることはいつも同じで、「主人公の行動原理がわからない」「登場人物が何でこんなことするのかわからない」。

 要するに「登場人物が明確な意思のない、目的のハッキリしないヤツばっかり」ということです。

 今ならわかります、これはわたし自身のことだったと――わたしは何が書きたいのか自分でもよくわかっていないまま小説を書いていたんでしょう。 

 何もかも上手く行かず、わたしはいつしか創作から遠退いていました。
ある日、気が向いてパソコンに向かってみましたが、アイデアなんか何もありません。
そこでふと、これまで学んだ起承転結も小説の技法もまったく無視し、とにかく思いついたことを思いつくままに全部キーボードに打ち込んだんです。

 内容はふたりの少年が冷酷な奴隷商人に命じられてセックスさせられるという、相当にエゲツないホモエロ小説です。
これがすごく楽しかったんです。
何かから解放されたような気分になり、取り付かれたように書き続けました。


利根川先生の悪魔的正論っ……!

 わたしはそれまでエロは読むのは好きでしたが書くのはものすごく苦手でした。
ちょっとした触れ合いのシーンですら本当に恥ずかしくて、書いてて顔を背けてしまうんです。

 これも「わたしが抱えていた恥の意識」だったと思います。
わたしにとってはエロを書くのは公衆の面前でセックスするも同然で、ましてやわたしは「女性モドキの何か」なんですから、抵抗があったんです。
自分の内側の秘められた場所、一番醜い場所を絶対に人には見せられないって。

 それがBL世界でならいくらでも書けたのは、うーん、うまく言葉にしにくいのですけれど「自分がまったく無関係な場所から他人の性を見ていられるから」あるいは「他人を使って自分の恥をさらけ出せるから」だと思います。
『カイジ』の鉄骨渡りで利根川が言っていた「安全であることの愉悦……!」というべきでしょうか?
女性が性の対象になっていないから?

(強調しておきますがこれはあくまで「わたしはそうだった」という話です! 腐女子の方々がみんなそうというわけではありませんよ)


BLは心が自由でいられる場所

 ちょっとうまく説明できないんですけど、おそらく上記の理由で間違いないでしょう。
「女性らしさ」を誰からも要求されることのない自由な世界。
誰かに押し付けられた何かのふりをしなくてもいい場所。

わたしはそこで初めて「自分の恥の意識」つまり「女性モドキであることの劣等感」から解放され、素っ裸の自分でいられることが出来たんです。

 MANHUNTはもちろん読んでくれる人のためでもありますが、同時に「自分の心が自由であるため」に書き続けようと思っています。
自分に嘘をつかなくていい場所があるって、本当に幸せなことですね!


(小膳)

*ちなみに上記の奴隷商人に命令されてセックスさせられる少年たちの話はMANHUNT第1話の原型になりました。
つたない出来ですがもしよかったら読んでみてください。

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