「テクノプロデューサー®」を育てる~TechnoProducer株式会社が目指すもの(14年目を迎えるにあたり)
こんにちは、楠浦です。弊社TechnoProducer株式会社は、3月で14年目に入りました。さすがに14年になると、創業当初からいろいろ社会状況が変わってくるわけでして、今は当たり前のこと(例:全社員完全在宅勤務の実施、知財先行・知財開発の考え方、など)も、当時は奇異の目で見られたりしていました。
時代が追い付いてきた部分も含め、いよいよこれからだなと思う
「テクノプロデューサーの育成と輩出」
という、弊社が創業当初から掲げてきたミッションについて、創業時のお話やその後の経緯などを含め、ここで整理しておきます。
「テクノプロデューサー®」の由来~弊社 TechnoProducer株式会社 設立時の想い
TechnoProducer®(テクノプロデューサー®)という社名は、2008年の3月に創業した時から一貫して変わっていません。創業時に、当時のメンバーと社名について「どうしようか?」と話をした際、いくつかの案が出ました。僕も案を出しましたが、「くだらない」とすぐに却下されました(笑
当時、メンバの一人が「楠浦さんみたいに、特許情報を徹底的に調べまくって、実用化不可能と言われた技術を仕上げて、お客さんを見つけて、資金調達までして、事業として立ち上げてしまえるような人材を育てることをミッションにしたい」と言っていました。
当初は、かなり知財寄りの事業内容と名称を考えていたのですが、もっと人材育成に軸足を置きたいという意見です。それで出てきたのが、「テクノプロデューサー®(TechnoProducer®)」です。完全に我々の造語で、技術を生み出す・プロデュースする、みたいなイメージをそのまま横文字にしたらこうなった、ということです。
ただ、当初はメンバーにできることが限られていたため、「特許eラーニング」「特許調査」の2つがサービスでした。名前には相当距離がありましたが、目指すところを忘れない、という意味で価値があった名前だと思っており、当時のメンバーには大変感謝しています。13年かけて「事業を育てる」ことができたのは、この名前があったからこそなのかもしれません。
「テクノプロデューサー®」は、技術と機会をつなぐ「カタリスト」
2008年にTechnoProducer株式会社(テクノプロデューサー®)を創業してすぐ、思わぬ大きな仕事をアメリカの投資ファンドからいただきました。日本で、発明投資ファンドを本格的に立ち上げるので、発明者として参加し協力してほしいとのこと。
投資ファンドは、「今後10-20年で、出てくるであろう事業機会」について、マクロ的な情報(例:PEST分析)を提供してくれます。それを、われわれ発明家は読み解き、最先端の状況を調査して把握し、将来生じるであろう課題(社会課題・顧客課題・技術課題)を予測し、解決できる技術を世界中から探して提案する。これが当時の仕事でした。
よく、発明というと「課題が明確に決まっていて、解決手段を考える」ものだと誤解されがちですが、弊社ではそれは発明とは呼んでいません。弊社でいう発明とは
「将来生じるであろう、解決すべき価値ある課題を見つけ出し、同時に、それを解決できる技術を見つけ、セットで提案する」
ことです。一般的には、新規事業の企画とか、研究・開発テーマの企画、技術開発テーマの企画と呼ばれる領域ですね。
言ってみれば、「機会」(未来の課題)と、「技術」(解決手段)を世界中から探し出して「化学反応」をおこさせる、「カタリスト」(触媒)みたいなものです。
「テクノプロデューサー®」は、分野を問わずアイデアを理解し、企画へ育てる
実は、TechnoProducer株式会社(テクノプロデューサー®)の前に設立したナノテクベンチャーでも、ナノテク以外の先端技術の事業化検討などを行っていました。その時に感じたのは、「理解されず放置されている」アイデアや技術が、たくさんあるということです。
例えば、当時事業化を検討した技術の中には、「ウエアラブル血糖値測定装置」や「モンテッソーリ教育ツール」などがあります。今は、すごく話題になっている分野ですよね。でも当時は、「何それ」「難しそう」「高そう」「儲かるの」「誰も困ってない」「誰が使うの」と言われ、放置されていました。
こういう、理解されていないがゆえに、機会と技術が結びついていないものは、いつの時代でもたくさんあります。既に前職の時から、こういうことをメインのナノテク事業の傍ら行っていたので、「テクノプロデューサー」が何をしないといけないか、明確なイメージは持っていました。
「まず、技術を理解し、可能性を最大限探る(育てる)」ことが、最初にやらないといけないことです。「この技術は、専門分野外なので私にはわかりません」とか言っていてはダメですし、「儲かるの」とかもダメです。儲かるかどうかを確認するために、理解するのです。順序が逆なんです。
今でも、弊社には「分からないと言われて、出願を断られた」発明や、「ノーベル賞級の発明」の事業化案件が、良く持ち込まれます。「理解されない」というのは、ある意味チャンスなので、良くお話をお伺いすることにしています。誰でも理解できることをやっても、勝てません。
「テクノプロデューサー®」は、事業、製品、技術開発をプロデュースする
TechnoProducer株式会社(テクノプロデューサー)設立当初、投資ファンドの仕事で海外の発明家に会うと、必ず、「オー、君たちはまさにテクノプロデューサーだね!」と言われました。英語にすると、「技術を生み出す人」だから、発明家のことになります。
でも、テクノプロデューサー®は必ずしもアイデア・発明・技術を生み出す必要はない、と僕は考えています。先ほど申し上げた通り、「技術と機会をつなぐ」のが、主な仕事です。そのために、まず理解し、可能性を探り、育てる。日本語の「プロデューサー」のイメージに近いですかね。
実際、弊社の「企業内発明塾」サービスで僕が行っていることは、まさにそれです。僕もアイデアは出しますが、あくまでもそれは、こういうアイデアもあり得るよねという話であって、これで行きましょうと言うことではありません。可能性を探るための活動の一つです。むしろ、それを育てて「お金を取れる企画」にするのが、僕の仕事であり「テクノプロデューサー®」の仕事だと考えています。
プロデュースする対象は、自らが開発した(する)技術でなくても良いわけです。もちろん、自分で開発してもよいです。自ら開発することも、大変尊いことだと思います。
「テクノプロデューサー®」は、世界中の最先端情報を調べ倒す
弊社 TechnoProducer株式会社(テクノプロデューサー®)は、設立以来完全在宅勤務ですので、ラボはありません。実験はできませんので、「発明」は「調査と思考実験」で行うしかありません。「発明とは設計」だと考えればそれで十分です。
前職での「特許情報分析を用いた技術マーケティング」の時と同様、世界中の特許や論文、投資情報を調べまくります。ここで大事なことは、世間一般の常識も含め、その場で持っている知識や常識に頼らないことです。
例えば、「微生物を用いたバイオ燃料」の実用化について検討するとして、「いやー、それはまだまだコスト的に合わないでしょ、だって、微生物って生産効率悪いし、遅いし、スジが悪いです」みたいな意見が、発明初心者からは良く出るのですが、僕はこの手の議論を
「時間の無駄」
と一蹴します(笑
最先端で何が起きてるか調べず、知らずに、こういうことをグダグダ言っても、時間の無駄なんですよね。
「無知の知」(自分が知らないんだ、ということを知ること)
が大事です。あと、自分にできそうにないからといって、何かが(技術的に)できそうにないと判断していないか、と問うことも大事です。これは
「自身の限界を人類の限界だと考えない」
という感じかもしれません。人類の可能性を信じる、ということですね。実際、何かが難しそう、と思った時、僕は人類の可能性を信じて調べまくります。世界中の研究者が、いろいろなことを考え、試しています。それが分かればシメタものです。解決策の糸口が見つかるだけでなく、その先「だけ」を考えればいいので、結果として楽ができます。「巨人の肩に乗る(借りる)」とは、まさにこのことですね。
「テクノプロデューサー®」は、知財戦略を駆使して「独占的普及」を実現する
TechnoProducer株式会社(テクノプロデューサー)は、特許・知財教育サービスも提供しています。これには2つの意味があります。
まず、「最先端の状況を探ろうと思うと、特許を調べまくる必要がある」ので、特許制度や特許戦略について熟知せざるを得ないんですね。これが一つ目です。
もう一つは、発明は「知的空間」での戦争なので、「知財権」「特許権」や「特許戦略」を駆使して、知的空間での有利に戦いを進めるすべを知らないと、良いアイデアも事業にならない、ということです。
弊社の教材には「知財戦略」「強い特許の作り方」など、戦略的な知財の取得と活用についての講座があります。これらは、できれば「入社2ー3年」で身につけていただきたい、基本的な知識だと僕は考えています。知的空間での戦い方の作法、というイメージです。ルールを知らずに戦うのは論外ですし、定石を知らずに戦うのは不利ですよね。
最近では「オープン・クローズド戦略」についても、知っておいてくださいねと話しています。盛り込みすぎに見えますが、「知らないだけで負ける」のはもったいないですよね。戦いが始まる前に、負けが確定している状況は避けたいのです。
「テクノプロデューサー®」は、技術の価値を最大化し、企業価値を向上させる
TechnoProducer株式会社(テクノプロデューサー)は、設立直後の米投資ファンドからの仕事で、世界で戦える実力をつけてきました。その後も、投資家の方々のご縁は多方面にわたり、最近では「リンクスリサーチ」の方々と「知財情報活用投資」セミナーを複数回開催させていただいております。リンクスリサーチのメンバーでもあり、DFR(ダイヤモンドフィナンシャルリサーチ)の投資助言者である「山本潤」さんには、特にお世話になっています。
ここで、数多くの投資家の方々と話して気づいたのは、「企業価値」に結び付かない活動には、投資家は興味がないということです。当り前です。前職のナノテクベンチャーでも、「売り上げ」「バリュエーション」の話ばかりしてました。その前提に必要なので「技術」の話が出てくるわけなのですが、それはあくまで「前提」なんですね。
なので、テクノプロデューサーは「技術」のことだけを語ってもダメで、
「技術が事業になり、社会と顧客の課題を解決して、どう企業価値に結び付くか」
を語らないとダメなんです。
「テクノプロデューサー®」が、技術と発明で社会をより良くしていく
TechnoProducer株式会社(テクノプロデューサー)の前に設立した、ナノテクベンチャーは、「科学の価値を最大化する」という理念を掲げていました。社名もそこから取っていました。ナノテクはその一つであって、他にもいくつかの技術について、実用化の検討を行っていました。僕も例えば、先にあげた「ウエアラブル血糖値センサー」の実用化検討も担当しましたし、「医療用ロボット」の事業企画も検討しました。
ところで皆さん、マイクロソフトのホワイトペーパーを読んだことがありますか?僕が最近読んだホワイトペーパーを以下に掲載しておきます。
「Microsoft carbon removal ~Lessons from an early corporate purchase」
タイトルからわかる通り、これは「CO2」削減についてのマイクロソフトの取り組みを紹介したものです。この中に、
「今のCO2削減の取り組みは、森林保護などが主力であり、テクノロジーが入っていない」
という趣旨の記載があります。この考え方は、とても重要だなと思っています。結局のところ
「現状から、大幅に改善する」
となれば、技術に頼るしかないわけです。わかりやすく言うと
「世の中を、大幅に良くしたいなら、技術が必要になる」
ということです。
「テクノプロデューサー®が、技術と発明で社会をより良くしていく」
しかない、という感じでしょうか。特に、根の深い課題と我々が呼ぶ、解決が困難な課題の多くには、背後に「トレードオフ」が存在します。これらは多くの場合、何らかの技術的な解決策を必要とします。
弊社は、そういう根の深い課題をえぐり出し、世界中の技術を調べて解決策を見出していく、それを事業にして広げていく、そういう人材「テクノプロデューサー®」を育てていくことを、これからも続けます。
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楠浦 拝
P.S. 弊社HPもご参照ください。
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