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「頑張る気になる」組織と社会を実現する~トヨタの章男会長の発言に思うこと

こんにちは。TechnoProducer株式会社 CEO/「発明塾」塾長の楠浦(くすうら)です。
僕をよく知っている方は、ちょっとイレギュラーに思われるかもしれませんが、時事ネタと言うか「ニュース」に反応してみます。

ニュース自体は、「煽り」もあるでしょうし、その場の雰囲気もわかりませんので「売り言葉に買い言葉」の積み重ねでこういう見出しになっている気もしますが、豊田章男会長の発言には、僕は大いに共感できる部分があります。
話題になっている「認証」は、僕もカワサキ(バイクのKawasaki=川崎重工業株式会社)時代に毎年関わってましたので、その辺含めて、業界目線での意見や現場の状況も、ちょっと書いておきます。
業界関係者には、「もっと頑張る気になってほしい」んですよね。同期・先輩・後輩が、多数いますから。


豊田章男会長「頑張ろうという気になれない」発言に共感する部分

  • 「今の日本は頑張ろうという気になれない」発言

  • 言いたいことをズバリ言う方なんですね、大いに共感

  • トヨタのトップですら頑張る気が起きないと思わず言ってしまう「日本」って、なんなんだ?

これは、記事の引用になります。おそらく現場では、これ以外のやり取りもあったはずです。したがって、ここだけ切り取るのも問題あるとは思いますが、一旦事実確認として、書いておきます。

「今の日本は頑張ろうという気になれない
「ジャパンラブの私が日本脱出を考えているのは本当に危ない」
「強い者をたたくのが使命と思っているかもしれないが、強い者が居なかったら国は成り立たない

これに対して「だったら出ていけ」みたいな発言が、X(エックス:前Twitter)で出ているようですが、まぁこれも売り言葉に買い言葉でしょうね。不毛です。
今まであまり興味がなかったので(笑)、言動に注目していませんでしたが、章夫さんって言いたいことをズバリ言う方なんですね。たぶん正直にそう思ってるんだと思うので、非常に好感を持ちました。その上で、トヨタのトップですら頑張る気が起きないと思わず言ってしまう「日本」って、なんなんだ?という感じはしました。
もちろん「日本」は、日本全体を指しているわけではなく、国交省であったり、その場の発言者(記者)を指しているんだと思いますけれど。

世界で活躍できるメーカー、という意味でトヨタは非常に期待できる存在だと思いますので、基本的には皆さんで応援するのが良いのかなと、僕は考えています。もちろん、「認証不正」など、正すべきものは正していくとして、ですけれど。ここで、そもそも「認証」って何だっけ、ということになります。

「認証」って何?~規制緩和の観点から

  • 自動車やオートバイは、人命や環境に大きくかかわる製品、製品ごとに厳しく管理

  • 「認証」は、かなり複雑でコストがかかる各国ごとに対応が必要

  • 日本として、「認証」制度や運用を、今後どうしていくのがよい?

自動車やオートバイの場合「型式認証」と呼ばれます。これは、サンプルや生産体制などが一定の基準を満たせば、個々の製品の検査が無くても、製品を製造出荷できる、という制度です。自動車やオートバイは、人命や環境に大きくかかわる製品なので、「製品ごと」に厳重に管理されているわけですね。なので、新製品を出す度に、認証が必要になりますし、改良品でも、内容によっては部分的に認証を取り直すことになります。

「認証」は、かなり複雑でコストがかかる作業です。章男会長が別のインタビューで「すべてを把握してなかった」とおっしゃってますが、そらそうでしょう。あんなの把握している経営者がいたら、「もっと他のことやってくれ」と僕は思います(笑。
設計者として認定にかかわっていた僕も、当然ながら全ては把握してません。認証専任のGrが、各部署と調整して段ボール何箱もの書類を国土交通省に送って、現場での立会試験も手配して・・・気の遠くなる作業です。

しかもそれは「国ごと」に発生します。カワサキのオートバイの場合、国内仕様は「101」、北米は「201」「202」「205(カリフォルニア)」、欧州は「401」「402」「405」・・・もう、憶えてません(笑)が、仕様が細かく分かれています。バイクマニアの人は、「これは201だからアメリカ仕様で、すごくパワーがでるんだぜ!」とか言って、喜んでいました。僕もその一人です。各国ごとに規制が細かく分かれているので、設計も国ごとに変えます。テストも当然変わってきます。認証手続きも、バラバラです。僕は一設計者として、「なんでこんな仕組みになってんの?アホなの?」と思ってました。良い製品を作る、という意味では、はっきり言って阻害要因でしかありませんでした。そんなことしなくても、安全なバイクを世界中に提供できる社内基準を、カワサキは持っていたからです。当然、トヨタも持ってます。認証は社会的に必要な仕組みだと思いますが、基準は世界統一して欲しい所ですね。

すくなくとも、今後販売台数があまり増えそうにない日本は、どこかの国に準じる基準にしても、よいのかもしれません。たぶん、クルマはもっと安くなります。誰も損しないと思います。この辺は、自動車工業会なんかで専門家の方が議論されているでしょうから、これ以上深入りはしません。ちなみに日本は、少なくとも僕が設計者であった当時、排ガス・騒音・出力の規制において、諸外国と比べて非常に厳しい基準を課していました。今の状況は、細かくキャッチアップできてません、ごめんなさい。

認証問題とEV化の関係~規制がイノベーションを促進すると思ってる人

  • 「排ガス規制」が「EV化」を後押ししてきた、脱炭素もしかり

  • 例えば、レベル3の「自動運転」対応を義務付ける規制を設ければ?

  • 「悪者を罰する」ためではなく、「もっと社会をよくする」のが、規制の存在意義では?

一方で、こう言う人もいます。

厳しい排ガス基準があったから、ホンダのCVCCエンジンは生まれた。イノベーションには規制が必要だ!」

はい、そういう例もあるでしょう。今で言うと、「CO2排出」規制があるから、脱炭素技術が生まれているわけで、それは否定しません。僕が知る限り、例えば「排ガス規制」が「EV化」を後押ししてきた部分もあります。なので、その規制が「どれぐらいの社会的インパクトをもたらすか」を、政策的に考えてもらえばよいと思います。今の日本の自動車の認証基準が、そういうイノベーションをもたらすかどうか。
今の自動車で言えば、「自動運転」対応を義務付ける規制を設ければ、イノベーションは促進されそうです。日本が国としてこの業界をリードしたいなら、レベル3ぐらいまでは義務付けてもよい気がします。一方で、例えば排ガスや騒音は、もうこれ以上は不要でしょうか。新車よりも古い車をどうするかとか、いろいろ突っ込みどころは満載ですので、これ以上は触れません。ちょっと雑な議論ですが、モビリティ業界から離れて久しい、一個人としての僕の意見です。

念押ししておくと、僕がここで言いたいことは、「悪者を罰する」のが規制だという考え方をいったん捨てていただいて、「イノベーションを促進する」つまり「みんなが頑張れるようにする」ために、規制を考えて欲しいということです。ようやく、本題に戻れました(ホッ)。
「認証不正けしからん!」の前に、その規制って何のためにあるんだっけ、を考えたい、ということです。単に「悪者を罰する」ためではなく、「もっと社会をよくする」のが、規制の存在意義なんですよね。国交省が「ダメ」って言ってるのが、本当にそういうことになってるのか、あるいは、記者の発言が、そういう意図になっているのか。
そもそも章夫会長の発言にも、そういう意図はなかったかもしれませんが、モビリティ業界、特に、エンジン開発にかかわっていたものとして、いろいろ考えさせられることが多く、おおいに共感できる部分がありました。

「もっと頑張れる」社会をつくりたい~「発明塾」の存在意義

  • 「悪者探し・叩き」ではなく、課題があるなら行動で解決する、結果だけが、周りを変える

  • そういう人を増やしたい、これが発明塾で目指しているもの

  • 章夫会長に「お互い、愚痴ってる暇なんかないっすよね!」と声掛けて

僕の結論は、タイトル通りです。以下で、X(エックス)にも書いてます。

「企業内発明塾」で、必ず一人一件、新規事業提案してもらって、実行に移してもらうところまで持っていくのも、結局これなんですよね。「認証不正けしからん!」って言っとけば、カッコいいかもしれないし、バズるのかもしれない。いや、もうそういう時代とちゃうんですわ(そういう時代ではない、という意味の関西弁)。
課題があるなら、行動で解決する」ことにしてほしい。そういう人を増やしたい。これが、僕が発明塾で目指しているものです。これを僕は、「結果を出す楽しさ」と呼んでいます。誰かが悪い、と言って愚痴るのは簡単なのですが、それでは何も変わらない。
偉そうなことを言ってますが、僕はかつて、典型的な「愚痴を言って終わる」タイプでした。大学生時代ですね。カワサキに入って、それではいかんということで、文句があるなら結果で示す、を徹底してきました。でも、それでも愚痴は言ってましたね。その後、「愚痴を言う暇があったら結果を出す」というマインドに変えて、愚痴はやめて「結果で周りを変えていく」ということに決め、実践してきました。
これらの経験から、現時点で僕は「結果だけが、周りを変える」と思っています。愚痴は要らないんです。だから、悪口もいらない。

なので、章夫会長にも、そう言わずに頑張ってほしいですね(笑)。お会いする機会があれば、「お互い、愚痴ってる暇なんかないっすよね!」と声をかけたいところです(笑)。別に、僕である必要はないので、今からお会いになる方、ぜひどうぞ。

まぁ、売り言葉に買い言葉だと、思いますけど、、、。
社長や会長には、「かっこよく」あってほしいですからね。

楠浦 拝

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