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私の下痢はなぜ起こっている?

以前、薬剤師の専門性を活かしてできることについて記事をまとめました。

現場で患者さんの対応を行う中で、専門性を活かして、ちょっと良い関わりができた事例があったので紹介をしたいと思います。

先日、生活習慣病の治療をされている患者さんの服薬指導を担当することになりました。お話を聞いてみると、最近食事習慣を変えたり、運動習慣を変えたりとてもがんばられたようで、採血結果もみせてもらうと大幅に状態が改善していました。

状態が改善していることを患者さんと一緒に喜び合いながら、状態が改善に向かうとともに副作用の兆候の症状は特に見られないということで一安心して対応を終えようとしたところで患者さんが気になることを言われました。


「最近、脂ものを食べると下痢をするんですよね。食事制限をして脂ものを食べるのをだいぶ控えていたので、体がびっくりしてるんですかね(笑)」

その話を聞いて、私は改めて服用されいる薬を見直して考えました。
すると、飲んでいる薬の中にメトホルミンがあるのに気づきました。

その糖尿病治療薬のメトホルミンには、消化管内に分泌された胆汁酸が再利用されるために体内に再吸収されるのを阻害する働きがあることを思い出し、もしかしたらこれが下痢を引き起こしている原因かもしれないと思いました。

※記事の閲覧に会員登録が必要ですが、メトホルミンの胆汁酸再吸収阻害の作用機序が詳しく書かれているので無料で会員登録ができるのでよかったら登録して記事の詳細を見てみてください。

なぜ胆汁酸の再吸収が下痢と関係するのかというと、現在発売されている薬の中で胆汁酸の再吸収を阻害することで便秘を解消するグーフィスという薬があり、メトホルミンの胆汁酸の再吸収阻害作用によってこれと同じように体に薬が起こるのではないかと考えたのです。

また、胆汁酸は体内への脂肪の吸収を助ける役割があることから、脂ものをたくさんとった時に下痢の症状が出るというのも、薬の働きとつながります。

下痢の症状は薬の影響によって起こっている可能性があると患者さんに伝えるとともに、症状が脂ものをたくさんとった時だけとのことだったので、今治療効果が得られて順調に進み始めているタイミングで薬の減量や中止、変更を検討するよりは食事に気をつけながら服用を継続して、薬と上手に付き合っていくのがよいのではないかとお伝えしました。

すると患者さんからは、次のような言葉をかけていただきました。

「なぜ下痢になるか気になっていたので、原因がわかって安心して薬を継続していけそうです。ありがとうございます」


薬物治療が変わらなくても、自分の体で起こっていることの謎が解けることも患者さんにとっては大きな価値なんだということを改めて感じることができる症例でした。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。

【この対応をもっとより良くするために!】←2020/5/18に補足として追記
今回薬の要因は十分に検討できていますが、医師などと情報を共有し薬以外の要因を精査することができたらもっとよかったかもしれません。
今回は、薬以外の要因はないと考えるため、今後経過観察の際はこの視点を明確に持ちながら対応をしていきたいと思います。

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