私の推薦図書5選 vol.7

先日、札幌市図書・情報館へ行きました。
老若男女多くの人で賑わう館内。ざっと徘徊して、明らかに他の図書館とは異なる空気を感じました。

それは、本を並べた人間の意思が感じられること。

何故この本を置くのか、何故この本の隣に置くのか。ゆるやかな連続性と意図が感じられる本棚って大好きです。

敬愛するブックディレクター・幅允孝さんが選書に関わっているそうですが、「やっぱり!」「そうこなくっちゃ!」「なるほど、、」と逐一頷いてしまうセレクトに心が弾みました。

バウハウス100周年コーナーにパウル・クレーの『造形思考』が置いてあって、あーもう避けられねえなと思って数ページめくりましたが、あっけなく挫折しました。5年後には読めるようになっているだろうか。自分よ。

脱線しますがswatchのバウハウスモデルが可愛すぎるのでめちゃくちゃ欲しいです。

そんなこんなで、今日もスタートです。


高野文子 「私」のバラけ方  高野文子・大竹昭子 

大竹昭子さんが主宰する連続トークイベント「カタリココ」に、漫画家の高野文子さんがいらした時の内容をまとめた本です。とても薄い本で、たった50ページくらいかな? でもさらっとなんて読めないから気をつけて。
高野文子は、ズルい。『黄色い本』で全ての本読みが最も欲していたであろう物語を描いちゃったと思ったら、『ドミトリーともきんす』で科学の世界まで手懐けてしまった。こういう人こそが、真似したくても出来ない、唯一無二の存在だと思います。
私にはしょっちゅう漫画のシーンやセリフを脳内で反芻してしまう癖があるんですが、『黄色い本』からの抜き出しが一番多いように感じます。本を愛する人間であれば絶対に読んで欲しい漫画。
完全に話が逸れましたが、この本はやっぱり彼女の漫画を読んでから開いて欲しい。本の中身には敢えて言及しないことにします。


花森安治装釘集成    唐沢平吉

『暮らしの手帖』の表紙で有名な花森安治さん。
彼の装幀作品をまとめた本です。タイトルを見てあれ?と思ったあなた。そう、花森さんは拘りを持って「装釘」という言葉を使っていたそうです。
そんな花森さんの思想や仕事への姿勢に関するエピソードの紹介から始まり、あらゆる装釘作品をフルカラーで眺めることが出来ます。
読み終わってまず一言、よくぞここまでまとめてくれた!!!  
著者の唐沢さんへ心から感謝を示したいです。古い本なんかは集めるの相当大変だったろうに、、、そんな努力の結晶をたやすく読めてしまうって、本ってなんて尊いんだろうと久々に思いました。
花森さんの拘りエピソードで印象に残ったのは、文字やレイアウトをテンプレート化しないこと。例えば『暮らしの手帖』では、タイトルの文字が毎回微妙に異なっています。その時々の表紙の絵や写真に合うように、全体バランスをみてデザインされています。法定文字も、デザインの一部として世界観を壊さないように毎度違う位置にレイアウトされている、、、。細部まで徹底的に拘る素晴らしい仕事だと思います。
花森さんも言ってましたが、本を売るために付いているオビが私も嫌いです。本を買ったら真っ先にオビは捨てちゃう。せっかく装釘家が作り上げた本の見た目を壊すものだと思います。いつまでそういう無駄を続けるのかなあ。


会いたかった画家    安野 光雅

画家の安野光雅さんが、自分の好きな画家と絵について語っている本。表紙はパウル・クレーの作品。装幀も内容も美しい本です。
私がこの方の存在を認識したのは、漫画家の安野モヨコのペンネームが安野さんに由来しているって知った時からです。
自分でも不思議なのですが、安野さんの本には呼ばれてしまうんです。古書店で視線を感じて振り返ると彼の分厚い作品集が静かに佇んでいたり、探していないのに何故だか目に付く。本棚から飛び出して彷徨う力が彼の本にはあるんじゃないかと思います。


ぼくの道具  石川直樹

ヒマラヤ、K2など極地をフィールドとする写真家・石川直樹さんが、登山時に愛用している道具を紹介している本。
私はこの手の本が大好きでして。モノ好き・ギア好きには刺さるでしょう。
石川さんといえば、去年開催されていた写真展【この星の光の地図を写す】がスンバラしかったです。写真そのものもさながら、この方の言葉選びは、「地に足のついた」とでも言いましょうか。実際に足を運んで、体験して、感じたことから紡ぎ出されているので、深みが違います。彼がいつも対峙している自然のような、優しさと厳しさが同居したテキストがとても好きです。


組長の妻、はじめます。 : 女ギャング亜弓姐さんの超ワル人生懺悔録  廣末 登

こちらは、娯楽と割り切って読むことをオススメします。
その道で知らない奴はいないと言われたくらい有名だったらしい女番長の人生録。犯罪者であることは間違い無いんだけど、とりあえずそこは一旦横に置いとこうと思ってしまう面白さ。開いたら最後、ページをめくる手がとまらなくなってしまうでしょう。


本日も偏愛が加速しましたね。次回もお楽しみに。


〜本日のBGM〜
Frail State Of Mind   / The 1975
ワクワクするってこういうこと。



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