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飯塚 佳美「愛する犬と暮らすために」

1.出張専門のドッグトレーナー

コロナ禍によって自宅で過ごす時間が増加し、「ペットに癒しを求めよう」と子犬や子猫などを飼う人が増えている。

ところが、いざ飼ってみたものの、世話をすることに負担を感じるなどして、すぐに飼育を放棄してしまう人も多いようだ。

「飼うまでに一度相談して欲しいと思っています。命を育てることの大切さに気づいて欲しいんですよね」

そう語る飯塚佳美 (いいづか・よしみ)さんは、週末に歯科衛生士として働きながら、平日は出張専門のドッグトレーナーとして活動を続けている。

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捨てられたり殺処分されたりする犬を少しでも減らすため、中学校で命に関する授業を行うこともあるようだ。

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2.小説家を夢見ていたころ

飯塚さんは、1983年に2人姉弟の長女として埼玉県深谷市で生まれた。

小さい頃は人見知りで、小学校入学前に初めて犬を飼ってもらった思い出がある。

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「お祖父ちゃんがワンちゃんを連れてきてくれて、すごく嬉しかったのを覚えています」

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小学校2年生のときには、父親の転勤で群馬県南部にある佐波郡玉村町へ転居。

小学校5年生のときに仲良くなった友だちが、とにかく明るい子だった。

そのお蔭で少しは人見知りを改善することができたようだ。

町内の公立中学校へ通い始めると、中学校2年生のときは小説家になることを夢見ていた。

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昔から読書が好きだった飯塚さんは、恋愛小説を自分で執筆し、当時流行っていた「講談社X文庫ティーンズハート」などに応募したこともあったようだ。

3年生になると、希望していた先生が担任になった。

そうしたこともあって3年生のときは、楽しい思い出だらけだったようだ。

「楽しくて面白い生徒目線で物事を考えてくれる先生でした。私は副会長をやっていたので、クラスのまとめ役を任させることも多かったんですが、団結力のあるクラスで、あと1年、みんなと一緒に過ごしたいなと思っていました」


3.歯科衛生士の道へ

卒業後は、群馬県伊勢崎市の市立高校へ進学。

飲食店のバイトに打ち込んでいたが、将来の夢は見つけられずにいた。

看護師だった母から同じ道を勧められたものの、人の生死に携わることは荷が重いと感じた。

「何か手に職を付けたほうが良い」と歯科衛生士の仕事を勧められ、快諾。

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当時、妻夫木聡と柴咲コウ主演のドラマ『オレンジデイズ』のような甘酸っぱいキャンパスライフに憧れていたが、合格通知が届いたため、群馬県高崎市にある歯科衛生士の専門学校に進学した。

「初めての実習のとき、歯を削る音が苦手なことがわかって先々が不安だなと感じたんですが、卒業する頃には慣れて平気になりました。他にやりたいこともなかったので、歯科衛生士として働くという未来を思い描いていました」

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卒業したあとは、伊勢崎市内の歯科医院へ勤務した。

飯塚さんは、介護施設に入所していた祖父の見舞いに訪れた際、祖父の口腔ケアをするようになっていた。

認知症を患っていた祖父だったが、口腔ケアをしたあとは、必ず意識が正常に戻っていたように感じた。

口腔ケアで脳への刺激を促すことが、認知症の人にとって有効であることを体感することができた。

やがて「訪問歯科」の分野へ興味を抱くようになった飯塚さんは、12年働いた後に退職し、訪問歯科へ勤務。

老人ホームや障害者施設を訪問して口腔ケアを施すようになった。


4.動物愛護センターでボランティア

そんな飯塚さんにとって大きな転機となったのは、訪問歯科で働き始めて1年も経たないときに地元の動物愛護センターでボランティアとして働き始めたことだ。

「小学校3〜4年生からはビーグル犬を外で飼っていて、私が22歳になるまで生きてくれていたんです。でも、全然世話できていなくて。散歩の時間になると外から中を覗いてくれていたんですが、散歩へ連れて行きたくない私はカーテン越しにじっと動かないようにしていて、いまから思えば最低の飼い主でした」

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そのときのことを、飯塚さんはいまでも後悔しているという。

ビーグル犬が亡くなって1年も経たないうちに、ミニチュア・ダックスを飼い始めた。

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ビーグルに注げなかった愛情を、目一杯ミニチュア・ダックスへ注いでいるようだ。

そして、犬が大好きだったからこそ感情移入しすぎてしまうため、これまでボランティアなどに携わることはできなかった。

あるとき、町の広報誌で愛護センターがボランティアを募集していることを知り、「いまならできそうだな」と応募。

休日を利用して保護犬の世話に携わり始めたものの、戸惑うことも多かった。

「働いてみて初めて気づいたんですが、それまで大型犬を飼ったことがなかったので、大型犬への接し方も分からなければ、犬同士の遊ばせ方も分からなかったんです」

大好きな犬について全然理解できていないことを痛感し、「もっと犬のことを知りたい」と思うようになった。

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その4ヶ月後からは、週末になると東京にあるドッグトレーナーの養成校へ通い始めたと言うから、何という行動力の速さなのだろう。


5.ドッグトレーナーとして

平日は訪問歯科の仕事をこなし、土日はドッグトレーナーの養成校に通っていたため、ほとんど休みはなかったが、大好きな犬のことを知ることができる喜びを日々感じていたようだ。

その思いは日に日に強くなり、訪問歯科では正社員として働いていたため、平日に開催されるドッグトレーナーに関するセミナー等へ行けないことがジレンマに感じるようになった。

翌年3月で訪問歯科の仕事を退職し、現在は週末だけ歯科衛生士として勤務している。

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第一種動物取扱業の届け出を行い、一昨年の11月からはドッグトレーナーとしての活動を開始した。

飼っていた2匹の愛犬の名をとって、ドッグトレーナーpomicobi(ぽみこび)として活動を始めたというわけだ。

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出張トレーニング専門のため、飼い主の自宅等に伺って支援していくスタイルだ。

「トレーニングの方針は、良いところを見つけて褒めて伸ばすということ。駄目なところは無視して、基本的には叱りません。いわゆる問題行動とされているものって、人間にとって駄目なだけなんですよ。どうしてその犬が吠えているのかなど、問題の原因を詳しくお伺いして、仮説と検証を繰り返していきます」

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犬が吠えたり噛んだりする行動には、必ず原因や理由がある。

一般的に言って、「問題行動」とされるものは、家族構成やライフスタイル、散歩の時間や犬の経験などが複雑にからみ合って起こっている。

そうした問題に犬の目線で向き合い、飼い主と良い関係でいられるようにすることが、飯塚さんが目指していることだ。

そのためには、飼い主を含めた家族の協力は欠かすことができない。

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「ドッグトレーナーは犬に魔法をかけるような存在として誤解されている面も多いかと思います。でも、実際は飼い主を含めたご家族の方々が協力的に犬と向き合って生活を変える努力をして頂く必要があります。例えば、生後3か月末までが犬の社会化期と言われています。この時期にどれだけ色々な良い経験をする事が出来たかが、その後の犬の成長にも大きく関わってきます。犬は何歳になってもトレーニング可能ですが、この社会化期は一度しか現れないので、子犬を迎えたら必ず社会化トレーニングを受けることをお勧めします」

そう語る飯塚さんは、さらに専門的な知見を得るため、これから別のドッグトレーナーの学校へ通っていくようだ。

それでも歯科衛生士の仕事は続けていきたいと語る。

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「休み中でも犬のことを考えてしまうので、今後も歯科衛生士の仕事は続けていきたいんです。歯石除去をしていると、犬のことから離れて『無』になることができますから。私にとって見れば『歯石除去デトックス』ですね」


6.愛する犬と暮らすために

愛犬と一緒に生活をする上で必要になってくるのが、しつけトレーニングだ。

犬と人の歴史は長く、しつけやトレーニングに関する多種多様な情報は書籍やインターネットで溢れている。

なかには間違った考えに基づいた情報も多く、こうした方法でのしつけやトレーニングは、愛犬が吠えたり噛んだりする行動を直すどころか、かえって悪化させてしまうケースも少なくないだろう。

こうしたときに必要となるのが、飯塚さんのようなドッグトレーナーの存在だ。

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ドッグトレーナーとは、愛犬を僕らにとって都合の良い存在にするための担い手ではない。

愛犬と僕らがお互いにわかり合うための仲介者として、その存在は欠かすことができない。

お互いのことを理解すれば、愛犬との暮らしが、いまより楽しく豊かなものに変わる。

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飯塚さんは、そんな明るい未来を見据えている。


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