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現代俳句 作品集 4 〜秋風鈴〜


「 秋風鈴 」
~現代俳句集〜

コーヒーに紅茶にふかみゆく秋か

人がゆく火星ひとつぶほしづき夜

甲州のそらずっしりとぶどう狩り

熱気球つぎつぎとそらさわやかよ

関東よたくさんの灯といなびかり

日がのぼり日がのぼりして柿の秋

家あおぐ秋のコートのふるさとか

出会いとはわかれのことよ秋遍路

ネクタイよ鏡にほのとあきのいろ

それぞれの絵にものがたり美術展


レストラン深みゆく秋そのままに

おおぞらが散りはじめたか桐一葉

ひっそりと暮らしながらの観月よ

明けるまで銀河の島よなみのおと

婚があり葬がありしてあさがおよ

秋の蝶ときどきすがた失くし飛ぶ

田もひともあかあかと暮れ新米よ

灯台のあかりの果てよあまのがわ

ほしぼしよ身にしみてくる観測史

あおぎ見て銀河のながさ計られず


天のがわ果てには天のうなばらか

漠としたあかるさの花すすきこそ

野菊の香ささやかな幸呼びそうな

秋風鈴かぜになりつつあることよ

秋ふうりん駅まえのそら鎮めるか

坂みちようえしたとなく虫のこえ

ひびきつつしずまりつつよ滝の秋

まいにちが絵物がたりのようよ秋

わたりどり明けがたの空暮れの空

ひがしから来るものに夜よ天の川


オリンピック余情のように秋夕焼

露ざむよからすが悼むからすの死

あおい地球ただすえながく星月夜

さずかったからだひとつで秋耕か

ゆたかさよとうもろこしの北海道

まるい屋根そり返る屋根小鳥来る

さいげつはながめるものよ渡り鳥

とおくなる街をわたってゆく鳥が

羽田発あまのがわ行き飛びたつか

酒ひとりひとりながらの良夜こそ


赤とんぼ昭和が飛んでいることよ

秋の傘ラーメン屋に灯ともるまで

十五夜よひかりながれるすみだ川

秋あかつき船あるほどの灯を点せ

自転車よみちどこまでも曼珠沙華

バックパッカーゆく国々の秋夕焼

飛びたった旅客機の灯も十五夜よ

さいげつがさらさらさらと新米よ

さいげつをいっ気に炊いて今年米

おむすびよおおぞらだいち今年米


8月30日〜9月19日
発表日順


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