現代俳句 作品集 4 〜秋風鈴〜
「 秋風鈴 」
~現代俳句集〜
コーヒーに紅茶にふかみゆく秋か
人がゆく火星ひとつぶほしづき夜
甲州のそらずっしりとぶどう狩り
熱気球つぎつぎとそらさわやかよ
関東よたくさんの灯といなびかり
日がのぼり日がのぼりして柿の秋
家あおぐ秋のコートのふるさとか
出会いとはわかれのことよ秋遍路
ネクタイよ鏡にほのとあきのいろ
それぞれの絵にものがたり美術展
◇
レストラン深みゆく秋そのままに
おおぞらが散りはじめたか桐一葉
ひっそりと暮らしながらの観月よ
明けるまで銀河の島よなみのおと
婚があり葬がありしてあさがおよ
秋の蝶ときどきすがた失くし飛ぶ
田もひともあかあかと暮れ新米よ
灯台のあかりの果てよあまのがわ
ほしぼしよ身にしみてくる観測史
あおぎ見て銀河のながさ計られず
◇
天のがわ果てには天のうなばらか
漠としたあかるさの花すすきこそ
野菊の香ささやかな幸呼びそうな
秋風鈴かぜになりつつあることよ
秋ふうりん駅まえのそら鎮めるか
坂みちようえしたとなく虫のこえ
ひびきつつしずまりつつよ滝の秋
まいにちが絵物がたりのようよ秋
わたりどり明けがたの空暮れの空
ひがしから来るものに夜よ天の川
◇
オリンピック余情のように秋夕焼
露ざむよからすが悼むからすの死
あおい地球ただすえながく星月夜
さずかったからだひとつで秋耕か
ゆたかさよとうもろこしの北海道
まるい屋根そり返る屋根小鳥来る
さいげつはながめるものよ渡り鳥
とおくなる街をわたってゆく鳥が
羽田発あまのがわ行き飛びたつか
酒ひとりひとりながらの良夜こそ
◇
赤とんぼ昭和が飛んでいることよ
秋の傘ラーメン屋に灯ともるまで
十五夜よひかりながれるすみだ川
秋あかつき船あるほどの灯を点せ
自転車よみちどこまでも曼珠沙華
バックパッカーゆく国々の秋夕焼
飛びたった旅客機の灯も十五夜よ
さいげつがさらさらさらと新米よ
さいげつをいっ気に炊いて今年米
おむすびよおおぞらだいち今年米
8月30日〜9月19日
発表日順
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