現代語俳句 メール初句会 〜2021年1月 結果
現代語俳句メール句会と題して、
メールによる句会を開催しています。
今回は5名のみなさんに
全25句をお寄せいただきました。
以下その結果発表です。
現代語俳句メール句会
2021年 1月
ご参加のみなさんの選と講評です
《 矢口れんとさん選 》
◎ 特選句 ◎
百人が我を見つめる歌留多とり
悠凜
まず「百人が我を見つめる」に強く興味を引きつけられます。挨拶か演説か、などと考えているうちに「歌留多とり」の華やかな会場が映像として現れてきます。無理のない語順、流れの中に生まれる緊張と緩和が見事な句だと思いました。
◯ 入選句 ◯
息災をインクが告げる年賀状
笹塚心琴
老いた手で春待つ母の筑前煮
笹塚心琴
ひとひらの風にうなずき寒椿
悠凜
いちぞくがまるくおさまれ春炬燵
草笛
《 悠凜さん選 》
◎ 特選句 ◎
息災をインクが告げる年賀状
笹塚心琴
年賀状離れが著しいと言われる昨今ですが、今年はこれを実感した方もいるのではないでしょうか。いつもは直接顔を合わせて挨拶するのに、今年は会うことが叶わなかった人、元々送り合っていた人……そこにひと言ふた言でも手書きの文字があると、逆に互いの老いを感じたりすることもありますが、「無事ですよ」の声なきメッセージに安堵出来ることもあるな、などと思いました。
◯ 入選句 ◯
砂利を踏む音すらひびく初やしろ
吉田翠
方丈庭園雨のおとまで枯れきって
草笛
老いた手で春待つ母の筑前煮
笹塚心琴
いちぞくがまるくおさまれ春炬燵
草笛
《 吉田翠さん選 》
◎ 特選句 ◎
百人が我を見つめる歌留多とり
悠凜
勝負の前、一瞬の緊張を鮮やかに詠みきった句だと思います。ハッとした凛々しさが飛び込んできました。
◯ 入選句 ◯
行く末に拳つき出す初筑波
矢口れんと
初雪と消える初恋あわい窓
笹塚心琴
だんだんとへいわになる世雪達磨
草笛
吹いてまた吹き荒れてまた淑気立つ
矢口れんと
《 笹塚心琴さん選 》
◎ 特選句 ◎
大空を一葉にして枯欅
矢口れんと
枯れてなお力強い欅の生命力を感じさせてくれた句です。晴れ渡る澄んだ冬の空の青も鮮やかに浮かびました。
◯ 入選句 ◯
フリルでも暖をとれるか冬牡丹
悠凜
生きつづけあるきつづけて落葉道
草笛
殺伐とした世を包むねんねこよ
吉田翠
ひとひらの風にうなずき寒椿
悠凜
《 Kusabue選 》
◎ 特選句 ◎
大空を一葉にして枯欅
矢口れんと
葉を落とした冬の欅(けやき)の木。大空自体が一枚の葉であるかのように感じるのは、ひろく枝をひろげる欅の木ならではだと思いました。雄大な句です。
◯ 入選句 ◯
殺伐とした世を包むねんねこよ
吉田翠
語り部が捨てた神話か眠る山
吉田翠
老いた手で春待つ母の筑前煮
笹塚心琴
見上げれば祖母の微笑む冬銀河
笹塚心琴
【得点票】
◯ 3点句 ◯
老いた手で春待つ母の筑前煮
笹塚心琴
◯ 2点句 ◯
百人が我を見つめる歌留多とり
悠凜
息災をインクが告げる年賀状
笹塚心琴
ひとひらの風にうなずき寒椿
悠凜
大空を一葉にして枯欅
矢口れんと
殺伐とした世を包むねんねこよ
吉田翠
いちぞくがまるくおさまれ春炬燵
草笛
◯ 1点句 ◯
砂利を踏む音すらひびく初やしろ
吉田翠
方丈庭園雨のおとまで枯れきって
草笛
行く末に拳つき出す初筑波
矢口れんと
初雪と消える初恋あわい窓
笹塚心琴
だんだんとへいわになる世雪達磨
草笛
吹いてまた吹き荒れてまた淑気立つ
矢口れんと
フリルでも暖をとれるか冬牡丹
悠凜
生きつづけあるきつづけて落葉道
草笛
語り部が捨てた神話か眠る山
吉田翠
見上げれば祖母の微笑む冬銀河
笹塚心琴
【ご投稿句より作品鑑賞】
殺伐とした世を包むねんねこよ 翠
ねんねこは、子守り用の半纏(はんてん)のこと。おんぶ紐でおんぶした上から羽織ります。赤ん坊だけでなく殺伐としたこの世界まで包みこもうかという母性愛の句です。
老いた手で春待つ母の筑前煮 心琴
筑前煮は現在の福岡県の郷土料理。しみじみとして大変深みのある句だと思いました。言葉を次々とくりだして変化をつけながら、一句としても完成している、技術的にも優れた句です。
大空を一葉にして枯欅 れんと
葉を落とした冬の欅(けやき)の木。大空自体が一枚の葉であるかのように感じるのは、ひろく枝をひろげる欅の木ならではだと思いました。雄大な句です。
百人が我を見つめる歌留多とり 悠凜
大会の緊張感が伝わってくる句だと思いました。競技かるたの名人・クイーン戦も先日開催されたようです。我・己・私・自分など俳句の一人称代名詞の変化も見守り続けたいです。
敬称略
失礼いたします
【ご投句いただいたみなさんの全作品です】
◯ 吉田翠さんの作品 ◯
火を見せるストーブの前にかざす手よ
砂利を踏む音すらひびく初やしろ
冬を越し長い旅路か聖火リレー
語り部が捨てた神話か眠る山
殺伐とした世を包むねんねこよ
○ 笹塚心琴さんの作品 ○
息災をインクが告げる年賀状
老いた手で春待つ母の筑前煮
平等か良い子悪い子お年玉
初雪と消える初恋あわい窓
見上げれば祖母の微笑む冬銀河
◯ 矢口れんとさんの作品 ◯
行く末に拳つき出す初筑波
吹いてまた吹き荒れてまた淑気立つ
白バイの鳥居かまえて駅伝よ
枯蓮の池よ問われる審美眼
大空を一葉にして枯欅
◯ 悠凜さんの作品 ◯
ひとひらの風にうなずき寒椿
陽をあびてほっと息つく冬木立
荒波は飛び散る汗か冬の海
フリルでも暖をとれるか冬牡丹
百人が我を見つめる歌留多とり
◯ Kusabueの作品 ◯
伊勢海老の重ばこも赤めでたさよ
生きつづけあるきつづけて落葉道
方丈庭園雨のおとまで枯れきって
だんだんとへいわになる世雪達磨
いちぞくがまるくおさまれ春炬燵
みなさま、ご投句・ご参加
ありがとうごさいます
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