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現代語俳句への旅 52 終 〜空港〜


「 空港 」
~現代俳句集〜

青葉木菟消えて神社のちんもくよ

ゆうべんは銀ちんもくは金冷し酒

吹かれれば風にもなれる涼しさよ

パソコンよ昼はコーヒー夜は麦酒

身ひとつに満天の星キャンプの火

夏の月待たれているということか

向日葵がひまわりらしく立つ地球

その声をやしなう山よほととぎす

寺のなか別のせかいのふうりんよ

夏菊よちいさいことのうくつしく

喜をかたり悲をかたりして蛍の夜


もくもくと雲もくもくと田草取り

もの言えばただあかあかと夕焼空

よいきおくだけがのこって時計草

しずかさよとどろきおちる滝の空

あきこ忌の明星ひとつかがやくか

ゆめはゆめ職場はしょくば昼寝覚

おもいでのなかでひとつよ夏祭り

ひとりずつちがう明日待ち夏休み

梅雨満月潮を引きよせ引きよせて

かたつむり水から進化して来たか

老人はなにを聞いてもふうりんよ


かきつばたあやめあじさい流水園

渓流がひかっていれば山女魚棲む

大くらげ地球まかせのまいにちよ

生麦酒そそぐもわもわもわもわと

棒高跳びただなにもかも汗になれ

おくれればおくれたみちの日々草

くりかえしくりかえす夏祭りこそ

町じゅうがひとつにけぶる夕立よ

あおぐとはさびしいことよ月見草

浴衣着ていまはむかしを楽しめよ

交番をけぶらせているゆうだちか


かなしさに涼しい月のあってこそ

生きてきた眼にありありと蟻地獄

その果てに空あることよ尺取り虫

だまるときひとつになって夕焼よ

うたた寝て凍ったころかみぞれ酒

淋しさをうつくしくして手花火よ

ねむってもねむっても覚め百日紅

青あおと嶺々青あおとキャベツ畑

かなしみをかたりつぐとき蛍とぶ

ネクタイをすずしく解いて金曜日

ながくながいわかれの虹の空港よ


5月30日〜6月17日
発表日順


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