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四季折々の俳句 26



「 生きかへる 」

降る雪へ耳を澄ましてゐたりけり

咳よりもさびしきものは一人の夜

湯浴みしてとかすこころの氷かな

月曜日ともしてさむきあかりかな

鼻のさきまであたたまる生姜湯よ

おもきおとたてて冬蜂とびゆけり

灯ともしてはたらくひとら窓に雪

踏みしめてはたらきにゆく街の雪

ひとびとのけものめくなり白き息

酒にむせけむりにむせて焼き鳥屋

本音言うていまよりなかま燗の酒

バス停にちひさき冬として立ちぬ

冬として家郷にかへりきたりけり

大寒をうたがふべきもなき夜かな

人の世に首をかしげてふくろふよ

なにごともなければ良いが雪の山

出くわしてあとずさりする狸かな

ひかる目のひいふうみいよ狸かな

逃げ足のなかなか遅きたぬきかな

釣りあげし鮃そつぽを向いてをり

飲むたびに生きかへるなり寒の水

ゆく雲にうなづきながら春を待つ

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