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四季折々の俳句 20




「 ゆめひとつ 」

吹き抜ける風のかをりよ松手入れ

きつつきに心つつかれゐたりけり

行く秋の雲いそがしくながれけり

あんまんの餡があつあつ今朝の冬

冬滝にこころひらきてしづかさよ

ふる里のすつかりさびれ果てて冬

立ち食ひの蕎麦すすらうか初時雨

橋に立つおんなひとりの冬げしき

凍蝶のはらりと終へしいのちかな

たましひをふるはせて鳴け冬の虫

よく晴れて九州場所ははじまりぬ

寄せ鍋へ箸いつせいにのびにけり

足だけが喧嘩してゐるこたつかな

麦の芽はまぶしきまでに元気なり

綿虫へわれのこころもふはふはと

傘さしてこころずぶ濡れ冬の雨

明日へと生まれかはらん木の葉髪

セーターを編む鼻うたは聖歌かな

しあはせが口いつぱいに冬りんご

揺り椅子に沈んでねむる暖炉かな

木枯しの行きどころなき都会かな

冬の朝おむすびふたつゆめひとつ

泣いてゐるこの子もよき子七五三

大根をつよくやさしく引きゐたり

箱河豚のぱたぱた泳ぐ生け簀かな

薪たしてふたりとなりし焚火かな

なかなかにへいわな世なり今川焼

あしあとがあしあとを追ふ雪の山

屋台出てぶるると寒くなりにけり

世に一人とりのこされて日向ぼこ

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