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現代俳句 作品集 5 〜露の玉〜


「 露の玉 」
~現代俳句集〜

ことごとくいっぽん立ちよ竹の春

コスモスもあるきたそうに散歩道

金木犀香もゆうぐれてゆくばかり

まぶしさの都市あかるさの名月よ

黙として真向かうものに今日の月

古じんらのおもいのこしの名月よ

望の夜いちねんいちのしずけさよ

十六夜があかるくなってからよ宴

いちねんを忘れはじめの十六夜よ

図書館のさいげつ黄葉してゆくか

屋じょうに出て見晴らしの黄落期


生きてきたさいげつほどに星明り

そのおくにしろい日ひとつ秋夕焼

航海よ秋ゆうやけのまっただなか

秋風鈴路地には路地のものがたり

永代橋ゆくひとびとのつゆけさよ

千光寺千々のひかりのつゆむすぶ

鐘さまざま祈りさまざまあきの空

いくすじも陽がさしてより台風後

秋光のひとつひとつよくだもの籠

からすらのこえもあかあか秋夕焼

はるばるとそらがひらけて星月夜


立ちどまる秋スクランブル交差点

もみじしてもみじのなかよ吉野山

四万十川ながれのままに水澄むか

草のさきしならせてこそつゆの玉

停電かいつまでとなくほしづき夜

精霊が羽ばたくようにつゆくさよ

工場をうつくしくしてあかとんぼ

ビルひとつふたつよ霧のくもの上

うなばらを船ひとつゆく露けさよ

いっぽずつ身にしみてくる浜よ波

羽織りもの道後は秋ということか


宮神輿ほうじょうの秋そのものか

どのみちも赤あかあかよ紅葉狩り

歩道橋錆びてあかあかあきの暮れ

道の駅あかり消えてもほしづき夜

嶺々というまっくらやみよ星月夜

月に雲こえだけがしてからすとぶ

どんぐりを土にかえしてゆく雨か

ゆらゆらとむねのあたりよ吾亦紅

鬼怒川の秋がしずまりはじめるか

見つめては非げんじつへ曼珠沙華

温め酒たどりついたということか


東京タワー明けがたの月暮れの月

みの虫のちんもく星のちんもくよ

非力さにふるえながらよ胡桃割る

生き死によ消えてはむすぶ露の玉

自転車の露そのままにはしりだす

あさがおに明けおくれてよ町の空

灯はどれも夜明けのきざし天の川

町、都市、国そして地球よ天の川

えんとつよあがるけむりも秋の空

きつつきよ静かさという山のおと

東京はとうきょうのまま赤とんぼ

9月20日〜10月12日
発表日順


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