![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/63252996/rectangle_large_type_2_2a76a0cadf1e15b434df80cfe2c74bab.jpg?width=800)
現代俳句 作品集 5 〜露の玉〜
「 露の玉 」
~現代俳句集〜
ことごとくいっぽん立ちよ竹の春
コスモスもあるきたそうに散歩道
金木犀香もゆうぐれてゆくばかり
まぶしさの都市あかるさの名月よ
黙として真向かうものに今日の月
古じんらのおもいのこしの名月よ
望の夜いちねんいちのしずけさよ
十六夜があかるくなってからよ宴
いちねんを忘れはじめの十六夜よ
図書館のさいげつ黄葉してゆくか
屋じょうに出て見晴らしの黄落期
◇
生きてきたさいげつほどに星明り
そのおくにしろい日ひとつ秋夕焼
航海よ秋ゆうやけのまっただなか
秋風鈴路地には路地のものがたり
永代橋ゆくひとびとのつゆけさよ
千光寺千々のひかりのつゆむすぶ
鐘さまざま祈りさまざまあきの空
いくすじも陽がさしてより台風後
秋光のひとつひとつよくだもの籠
からすらのこえもあかあか秋夕焼
はるばるとそらがひらけて星月夜
◇
立ちどまる秋スクランブル交差点
もみじしてもみじのなかよ吉野山
四万十川ながれのままに水澄むか
草のさきしならせてこそつゆの玉
停電かいつまでとなくほしづき夜
精霊が羽ばたくようにつゆくさよ
工場をうつくしくしてあかとんぼ
ビルひとつふたつよ霧のくもの上
うなばらを船ひとつゆく露けさよ
いっぽずつ身にしみてくる浜よ波
羽織りもの道後は秋ということか
◇
宮神輿ほうじょうの秋そのものか
どのみちも赤あかあかよ紅葉狩り
歩道橋錆びてあかあかあきの暮れ
道の駅あかり消えてもほしづき夜
嶺々というまっくらやみよ星月夜
月に雲こえだけがしてからすとぶ
どんぐりを土にかえしてゆく雨か
ゆらゆらとむねのあたりよ吾亦紅
鬼怒川の秋がしずまりはじめるか
見つめては非げんじつへ曼珠沙華
温め酒たどりついたということか
◇
東京タワー明けがたの月暮れの月
みの虫のちんもく星のちんもくよ
非力さにふるえながらよ胡桃割る
生き死によ消えてはむすぶ露の玉
自転車の露そのままにはしりだす
あさがおに明けおくれてよ町の空
灯はどれも夜明けのきざし天の川
町、都市、国そして地球よ天の川
えんとつよあがるけむりも秋の空
きつつきよ静かさという山のおと
東京はとうきょうのまま赤とんぼ
9月20日〜10月12日
発表日順
いつも
ご覧いただき
ありがとうございます
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?