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現代俳句 作品集 7 〜朝日夕日〜


「 朝日夕日 」
~現代俳句集〜

あしもとにとどく日ざしよ冬木立

サーカスの旗はためいて冬が来る

冬かもめ花咲くように飛びたつか

近海のむかしなつかしくじら跳ぶ

さいげつをただよう鴨か水のうえ

きた山からみなみ山へとふゆの虹

ぱちぱちとたき火のこえよ葛城山

焚き火していましばらくは星の空

マスクしてひとりひとりの交差点

今日までの旅今日からのかえり花

あるはずの地球のにおいふゆの星


しずけさに又鳴く鶴のしずかさよ

日本史を吹き抜けてきた木枯しか

いちりんよさざんかの木に日の光

銀閣の寂びしたたってはつしぐれ

船の水尾ひろがりつつよ冬に入る

ちらばって小春ひなたの島じまよ

人力車降りていまの世冬あたたか

金堂よおともさだかにはつしぐれ

山じゅうが散るしずかさよ紅葉川

恋ふたり焚火のようであってこそ

幸をよぶ火よいつまでも宮焚き火


風が火を吹きちぎっては磯焚き火

あしあとが散らばって行く雪の門

冬蝶のたましいにそら晴れてこそ

木がらしよ家すえながくにわの松

毛糸編む月日を編んでゆくように

いちりんよへいわ通りのかえり花

ゆうぞらを行くかぜになれ落葉焚

くだり列車むかしむかしへ冬夕焼

けぶり立つ街灯いくつはつしぐれ

寒灯よはたらくひとのつくえの上

人工衛星見あげてみえず夜々の冬


ロケットの軌跡ひとすじふゆの空

瀬戸内のひとりひとりが冬かもめ

戸島から見えるのも島日なたぼこ

野仏は野になるまでよ日なたぼこ

峡谷のそらともどもに木の葉降れ

三津浜港冬よりしろくかもめ飛ぶ

寄せ鍋よ道後しんじつ湯気ゆたか

ロボットがはたらきだした街よ雪

仰ぐひと雪とひとつになりゆくか

五重の塔れきしの果てのかえり花

わたむしよあさひゆうひの五重塔

11月04日〜11月21日
発表日順


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