現代語俳句への旅 51 〜朝焼け〜
「朝焼け」
~現代俳句集〜
待ったひと待たせたひとに噴水か
なにもかも地球に借りて草ぶえよ
のぼる土手もう夏芝の踏みごたえ
たけのこのなかの宇宙の静かさよ
ほしぞらも旅館のうちよ河鹿鳴く
そこらじゅう水鏡してかきつばた
美意識の現われとして花しょうぶ
街灯はへいわのあかしまつりの夜
かわらないおもいがひとつ衣更え
巻き波よサーファー斜め四十五度
サーファーに妻と子がいて暮の浜
◇
それぞれに生きてひとつよ街の虹
母の日よ感謝の世とはへいわの世
このほしをあおくしてこそ夏木立
島のなかの島になるまで蝉しぐれ
芝に寝てすべてわすれていく涼よ
あかん坊はこの世の花かてんか粉
むらじゅうに黒がうずまく水害か
まいにちがかおりはじめて香水よ
島のおとすべておぼえている涼よ
腹わたにとどろく滝であってこそ
かぶと虫角振りながら生まれるか
◇
おのみちは会釈の町よせみしぐれ
こどくとはみずから選ぶものか虹
跳んではくずれ跳んではくずれ蟇
問かけてみよとうきょうの大夕焼
身のうちを川ながれるか梅雨の月
アロハシャツふたりの友好永遠か
くべくべて幾万年のキャンプの火
玉落ちてなにかが終わる手花火よ
たけのこのあじにいきおい筑前煮
せとうちよ島ひとつずづわかば山
きっぱりとしろでひとえで夏菊で
◇
わか葉してむかしをいまに東大寺
街のおと神輿あらぶりはじめるか
なつの雲こんなに村がひろいとは
この都市もゆめみる都市よ夏の月
ほんとうの旅立は死かほたるとぶ
神社だけあかるい村よまつりの夜
朝焼けがうつくしければ安らかよ
一つ摘んでふるさとおなじ夏蜜柑
京ふうりん一代ごとのものがたり
銀天街灯のすずしさのきわまって
おおいしちから享年十六義士祭り
5月09日〜5月30日
発表日順
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