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現代語俳句への旅 51 〜朝焼け〜


「朝焼け」
~現代俳句集〜

待ったひと待たせたひとに噴水か

なにもかも地球に借りて草ぶえよ

のぼる土手もう夏芝の踏みごたえ

たけのこのなかの宇宙の静かさよ

ほしぞらも旅館のうちよ河鹿鳴く

そこらじゅう水鏡してかきつばた

美意識の現われとして花しょうぶ

街灯はへいわのあかしまつりの夜

かわらないおもいがひとつ衣更え

巻き波よサーファー斜め四十五度

サーファーに妻と子がいて暮の浜


それぞれに生きてひとつよ街の虹

母の日よ感謝の世とはへいわの世

このほしをあおくしてこそ夏木立

島のなかの島になるまで蝉しぐれ

芝に寝てすべてわすれていく涼よ

あかん坊はこの世の花かてんか粉

むらじゅうに黒がうずまく水害か

まいにちがかおりはじめて香水よ

島のおとすべておぼえている涼よ

腹わたにとどろく滝であってこそ

かぶと虫角振りながら生まれるか


おのみちは会釈の町よせみしぐれ

こどくとはみずから選ぶものか虹

跳んではくずれ跳んではくずれ蟇

問かけてみよとうきょうの大夕焼

身のうちを川ながれるか梅雨の月

アロハシャツふたりの友好永遠か

くべくべて幾万年のキャンプの火

玉落ちてなにかが終わる手花火よ

たけのこのあじにいきおい筑前煮

せとうちよ島ひとつずづわかば山

きっぱりとしろでひとえで夏菊で


わか葉してむかしをいまに東大寺

街のおと神輿あらぶりはじめるか

なつの雲こんなに村がひろいとは

この都市もゆめみる都市よ夏の月

ほんとうの旅立は死かほたるとぶ

神社だけあかるい村よまつりの夜

朝焼けがうつくしければ安らかよ

一つ摘んでふるさとおなじ夏蜜柑

京ふうりん一代ごとのものがたり

銀天街灯のすずしさのきわまって

おおいしちから享年十六義士祭り

5月09日〜5月30日
発表日順

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