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現代俳句 作品集 8 〜雪降る街〜


「 雪降る街 」
~現代俳句集〜

晴れぞらよ白落ちてくるふゆの滝

陽よ風に吹かれどおしのふゆの菊

また一人あしたへ去っておでん酒

ガス燈よそのむかしから夜々の雪

ホットティーホットコーヒー婚話

きょうまでをわすれ果てても冬桜

未来にも過去にも僧よ奈良しぐれ

かがやいてどれもしんじつ冬の星

ただの灯か信仰の灯かクリスマス

かお上げてスカイツリーの街に雪


いっしゅんで冬あたたかに鳩の空

とうきょうよ池あるところ浮寝鳥

安心をさずかりつつよ日なたぼこ

はつゆきよ筑波は筑波富士は富士

たき火してうちゅうの歴史百億年

舞い舞って夜かぐらは子々孫々と

和の国よ行くさきざきに置き炬燵

真向かってまっただなかへ年の暮

まいにちよ箸とりながら年の暮れ

売り子にもほんものがいて年の市


ぜんいんは僧にならずよ京しぐれ

胸ちゅうで笑む人々と日なたぼこ

ウォークマン身を揺らしつつ冬暖

にっぽんはしばらく冬かかえり花

自我あってみな旅人よ雪をあおぐ

あしあとよのぼったひとに雪の山

さまざまなけはいのなかか浮寝鳥

焼芋屋うしろすがたがあるだけか

大人らも大人になれとレノンの忌

げんじつと信仰と灯のクリスマス


いちぞくにあの日この日よ返り花

家族いてホットカーペットの平和

ぜん身にゆきわたらせて冬至風呂

窓にこえ路じょうにもこえ初雪か

けさの雪ひとひらずつが幸になれ

毛糸編む天まどからは日のひかり

こころいま船こえてゆく冬かもめ

かもめとぶ瀬戸金いろに冬のくれ

ホットティーノートパソコン茜空

冬薔薇よホテルのロビーただ静謐


シリウスよ一夜こころのとおい旅

大きくてちいさなくじら沖を跳ぶ

フェリー行く島ひとつずつ雪景色

ちいさくておおにぎわいの鴨の池

本まぐろ箸のさきまではるばると

手のかずのいっぽん締めよ忘年会

寄鍋よみな日々に消え夜々に消え

あかん坊が手をやいやいと初雪よ

釣り人ら消え年の瀬ということか

とおい灯もちかい灯も雪降る街よ

11月22日〜12月16日
発表日順


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