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来戸 廉
2024年2月24日 12:33
「日溜まりの匂いがする」 サキは幼馴染みだ。 僕は思わずTシャツの肩口を交互に鼻に持っていった。「何してるの?」「別に」 僕は気づかれないように、サキから半歩下がった。夕べは遊び疲れて、風呂に入らずに寝てしまった。 だから登校の途中でサキに会った時から気になっていたんだ。 さっさと行けばいいものを、サキは僕の横に並ぶ。「拓くんは、日溜まりの匂いがするの」 サキが繰り返した。僕
2024年1月30日 20:49
「おかえりなさい」 平井孝夫は、出迎える妻の態度が、いつもと微妙に違うことに気づいた。はっきりどうとは言えないが、何か確かめるような視線を送ってくる。孝夫はそれが何だか分からず、喉に刺さった小骨が取れないような、もどかしさを感じた。「お帰り。パパ」 下の子が妻の足元をすり抜けて、孝夫の胸に飛び込んでくる。流石に上の子は照れがある。「お風呂に入るぞ」 子供達を洗ってやりながら、孝夫はいつ