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浅煎りと深煎りに挑戦! 成功のポイントは香りと音!?

“慣れ”とは退屈なものだ。最初は手さぐりだったことも、やり続けると警戒心がなくなり、あたかも自分が玄人になったような錯覚に陥り、いろいろなサインを見逃してしまう。そんな時に訪れる不測の事態! 得てしてトラブルはこんなときに起きる。
 
ライターFM中西が挑戦するコーヒー自家焙煎。前回はコーヒー焙煎器「くるくるカンカン」を組み立て、焙煎前の重要な儀式である空焼きまでを終えた。
 
そして、焙煎器と9種類の豆のこだわりを学び、ついに初焙煎に挑戦! ということで、自分にとって記念すべき初焙煎の豆を選んでいく。
 
今回選んだのは、「マダガスカル ワオリーマー」。コーヒーを産地で選ぶことは普段ないのだが、なんとなく「マダガスカル」という響きに聞き覚えがあり、有名だと思ってこちらの豆をチョイス。すると福島社長から「珍しい豆を選びましたね」との声が。あれ…有名な豆じゃなかったのかな…? でもまあいいや。普段飲んだことがない味に挑戦するのもいい。豆の説明書きを見ると、ミックスベリー/すもも/オリーブといった味の特徴があるらしい。生豆の時点だと青臭く、色も形も「THE 豆」といった感じ。これがコーヒーの味になるとは想像しにくいが、本当にそんな味がするだろうか?
 
豆を決めたら、あとはくるくる焙煎するだけ!


浅煎りは「1ハゼ」まで。火を止めたらすぐ冷ませ

まずは浅煎りの焙煎からスタート!

コーヒー焙煎は、焙煎時間によって味わいがかなり変化するそう。今回は焙煎時間が短い浅煎りと、焙煎時間が長い深煎りの二つを試してみようと思う。
 
浅煎りは果実のようなさっぱりとした味わいになるのに対し、深煎りは豆の苦みと深みが凝縮されたコクのある味になるらしい。味わいだけでなく、香りや見た目にも違いが出るそうだから楽しみ!
 
なお、一般的に流通しているコーヒーは深めの焙煎が多いそうだ。
 
まずは浅煎りからスタート。以下の準備物をしっかり確認しておこう。

■準備物
・くるくるカンカン本体とコンロ
・火傷対策の手袋
・ザル(焙煎後の豆を冷やすため)
・熱冷まし用のうちわ
・豆の焼き具合を確認するスプーン

準備物を確認したら、いざ挑戦開始!
 
空焼きを終えた焙煎缶にコーヒー豆を入れていく。生豆は1箱あたり125g(およそ10杯分)が入っており、1回の焙煎で1箱全て使い切る。慎重に豆を入れるが、早速何粒かこぼれ落ちた!(泣)。全部こぼれなくてよかった…。

生豆を焙煎缶に投入

缶に豆を入れたら空焼きの時と同様、スタンドにしっかり固定しコンロの五徳ギリギリまで近づけ、火力最大でいざ点火! 
 
点火後は商品名通り“くるくる”していくだけだが、早く回しすぎると火の通りが遅くなり、焙煎に時間がかかってしまうそうなので、気持ちゆっくりめで回していく。
 
もし、ハンドルが重かったら、けっこう腕が疲れただろう。なるほど、ハンドルの滑らかさはこのためだったのか……!

ゆっくりと火を通していく


4分ほどで生豆の色が変わってきた

くるくるくるくる……
 
最初はおよそ2〜3秒に1回のペースでハンドルを回し続ける。
 
3〜4分経った頃、段々と大豆を煎ったような香ばしさが漂ってきた。
 
ここでいったん豆の様子を見てみよう。
 
すると先ほどまで白っぽかった生豆が、少しだけ黄緑色に変わってきている! 生豆は焙煎時間により、白や黄緑といった薄い色から茶色に濃くなっていき、香りも変わるそうだ。
 
福島社長にチェックしてもらうと、まだ焙煎が必要とのことで、引き続きハンドルを回す。少しでも周りに気を取られるとハンドルの手が止まりそうになるので、集中力が必要だ。

ほんの少しだけ色づいてきた


ポンッポンッと弾ける音が特徴の「1(いち)ハゼ」

10分ほど焙煎したら、豆の変化に耳を澄ます“音さぐり”が大事になってくる。生豆がポップコーンのようにポンポンと爆ぜ始めるが、この最初の爆ぜる音を1ハゼと呼ぶそうだ。これを聞き分けることが美味しいコーヒーづくりにおいて重要になってくるのだという。

耳をすまして豆の声を聞く

そうこうしていると、煙の量が増えて、ついにパチパチと1ハゼが聞こえてきた! 音はポップコーンのような激しさではなく、炭を焼いたときのような軽めの音なので、注意深く聞くのがポイント。寒い場所だと火力が足りず、1ハゼが起こらないケースもあるため、冬場の野外で焙煎する際は火力の調整や防風にも注意しておこう。
 
思わず手を止めて中を確認しそうになるが、焼きムラが出てしまうので回す手を止めてはいけない。火力は全開のまま、ハンドルを回すスピードはほんの少しだけ速めることがうまく仕上げるポイントだそう。
 
しばらくして、1ハゼの音がある程度落ち着いたら、浅煎りの完成だ。


火を止めたらすぐ冷やして「チャフ」を飛ばす

浅煎り焙煎では、1ハゼがある程度落ち着いてきた時が冷却の合図。火を止め、すばやく豆を熱冷まし用のザルに出していく。
 
これは、焙煎の最後の工程である「コーヒー豆の冷却」を行うため。
 
焙煎直後の豆は熱を持っており、放っておくと焙煎が進み過ぎ、味や香りが変わってしまうからだ。

火から下ろしても焙煎は進む。急いで冷却が必要だ

豆はアッツアツ! ちゃんとコーヒーっぽい香りだー!──と興奮するのもつかの間、余熱で豆の焙煎が進んでしまい、浅煎りではなくなってしまう恐れがあるため、ここからはスピード勝負!
 
うちわでパタパタと豆を冷ましながら、熱でむけた豆の殻「チャフ」を飛ばしていく。熱くなった豆や缶が手にあたって火傷する危険があるため、手袋を必ずつけて作業するよう念を押された。


網を振りながら豆全体を冷やしていく

素手で豆を触れるくらいに冷ましたら、浅煎りの焙煎は無事終了! 


深煎りは「2(に)ハゼ」まで煎る

浅煎りの焙煎が終了したら、今度は深煎りに挑戦!
 
準備物や最初の工程は浅煎りと同じ。味の違いがわかるよう、先ほどと同じく生豆はマダガスカルワオリーマーにした。火力全開でくるくる回し10分ほど経つと、浅煎りの時と同じく1ハゼが聞こえてきた!
 
ここから浅煎りと少し工程が変わる。焙煎を始めるときは豆全体に火が通るようゆっくり回していくが、パチパチと1ハゼが聞こえてきたら、焙煎度合いをコントロールするために火力を半分以下に落とし、ハンドルを素早く回して、火を通していくことがポイントだそう。
 
煙がどんどん立ち込めてきたため、ハンドルを回す手を止めないよう注意しながら、豆の色をチェックしてみる。色味が浅煎りの時より茶色が強く、コーヒーらしい色になってきた。喫茶店にいるような良い香りが鷹尾ベースに立ち込める!


コーヒー色になってきた!


「2ハゼ」の音はピチピチ、そのあとに……異変が!?

1ハゼがある程度落ち着くと、次はピチピチという小刻みな連続音がし始める。これを「2ハゼ」と呼ぶそう。
 
2ハゼの音が際立ってきたら、ここで火を止め、余熱でじっくり火を通す。ムラができたり、火が通り過ぎたりしないよう、ハンドルは回し続ける。
 
豆の色は? 匂いは? 火の加減は? 音は?ーー焙煎作業は、まさにてさぐり...…! 最後の仕上げも、目・鼻・耳が頼りだ。
 
深煎りはコーヒー焙煎好きの間でも難易度が高いそうで、うまくいけばその達成感もひとしおだろう。
 
ところが、ここで思わぬ事態が発生。煙が想像以上に立ち込め、なんだか匂いも焦げっぽい気がする……。


大量の煙が! 緊急事態か!?

焙煎を見守っていたてさぐり部全員が、ここぞとばかりに声を掛け合い、助け合いながら、急いで豆を冷ます。
 
「慌てないで大丈夫ですよ(笑)」
 
福島社長がそう声をかけるが、何だか不安になってきた……。
 
果たして、深煎り焙煎は無事成功したのか!?

(「煎りすぎ厳禁! 焙煎は時間との勝負だ!」に続く)

Supported by くるくるカンカン

クレジット

ライター:FM中西
編集:いからしひろき(きいてかく合同会社
カメラ:橋口健志(合同会社ピノグリ)
取材協力:Mt.TAKAO BASE CAMP
制作協力:富士珈機

ライター・FM中西
1990年生まれ、静岡県浜松市出身。中学・高校7年間を韓国ソウル市で過ごす。Web/広告/ゲーム会社を経て、2022年よりフリーライター・編集として活動開始。エンタメ系・ライフハック系の取材やレポが得意で、最近の目標は減量。読者にとって分かりやすく伝わりやすい記事をお届けします♪


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