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『見詰める』

深まった夜なのか、早まった朝なのか、親しくも、親しくなくもない友人と電車に乗り込んだ。そして何ともない話を点々と続け、発車を待った。 ドアが閉まると、軋む音だけ…

カトウ
8か月前
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僕は天才

彼は言った。 「僕は世界で一番悲劇的かもしれない。」 「と言うと?」 「僕は生まれてこのかた、苦労したことがないんだ。もちろん、多少の難しさはあった。でも、この世…

カトウ
1年前
『見詰める』

『見詰める』

深まった夜なのか、早まった朝なのか、親しくも、親しくなくもない友人と電車に乗り込んだ。そして何ともない話を点々と続け、発車を待った。
ドアが閉まると、軋む音だけが車内に響いた。すると、友人がクスクスと笑い出した。どうやら静寂にツボったらしい。友人は、
「先生の説教とかで笑っちゃう感じ。」
と言った。合わせにいこうかとも思ったが、頭の回る時間帯でもなかったので、
「あれってずっと同じ顔を見てるから面

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僕は天才

彼は言った。
「僕は世界で一番悲劇的かもしれない。」
「と言うと?」
「僕は生まれてこのかた、苦労したことがないんだ。もちろん、多少の難しさはあった。でも、この世界全てを恨んだり、妬んだりしたことはない。所謂、人間っぽさってやつさ。」
「なるほど。」
「でも、かといって楽観人生じゃない。ジョンみたいにカリスマ性を持ち合わせているわけでもなければ、ポールみたいに特出した才能があるわけでもない。サッカ

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