深まった夜なのか、早まった朝なのか、親しくも、親しくなくもない友人と電車に乗り込んだ。そして何ともない話を点々と続け、発車を待った。 ドアが閉まると、軋む音だけ…
彼は言った。 「僕は世界で一番悲劇的かもしれない。」 「と言うと?」 「僕は生まれてこのかた、苦労したことがないんだ。もちろん、多少の難しさはあった。でも、この世…
カトウ
2023年11月4日 04:58
深まった夜なのか、早まった朝なのか、親しくも、親しくなくもない友人と電車に乗り込んだ。そして何ともない話を点々と続け、発車を待った。ドアが閉まると、軋む音だけが車内に響いた。すると、友人がクスクスと笑い出した。どうやら静寂にツボったらしい。友人は、「先生の説教とかで笑っちゃう感じ。」と言った。合わせにいこうかとも思ったが、頭の回る時間帯でもなかったので、「あれってずっと同じ顔を見てるから面
2023年7月14日 03:10
彼は言った。「僕は世界で一番悲劇的かもしれない。」「と言うと?」「僕は生まれてこのかた、苦労したことがないんだ。もちろん、多少の難しさはあった。でも、この世界全てを恨んだり、妬んだりしたことはない。所謂、人間っぽさってやつさ。」「なるほど。」「でも、かといって楽観人生じゃない。ジョンみたいにカリスマ性を持ち合わせているわけでもなければ、ポールみたいに特出した才能があるわけでもない。サッカ