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3行日記(細長い人形、マツケンサンバ、チンゲンサイ)

九月三日(日)、晴れ。
処暑、禾乃登、こくもつすなわちみのる

夢を見た。何かの研究所のようなところ。壁も天井も白い。居住棟には数台のベッドが並んでいる。細長い部屋だ。私は一番奥の端のベッドに寝ている。だが、大学の同級生のたさんが何回も起こしにやってくる。いまいくよ、とやりすごして横になったまままどろんでいると、また起こしにやってきたので、寝たふりをしていると、足を私の鼻に近づけて匂いを嗅がせようとしてきたので、怒る。そんなこんなで観念して、一度は顔を出しておくかと、隣の部屋に向かおうとしたのだが、ベッドがたくさんある空いたスペースに、何かがある。ステンレス製のワゴンのようなものだ。そこには、布でできた細長い人形が穴におさまっている、ひとつではなく、規則正しく列に並んでいくつも。それが三段くらい重なっている。そのワゴンは、いつもは別の研究棟で保管されているものなのだが、きょうは停電かなにかの理由で、居住棟に移されていた。そうか、きょうはここにあるのかと認識して、隣の部屋に向かおうとしたのだが、そのときに、穴に刺さっている人形、五体ほどをてきとうに引き抜いて握ってから、隣の部屋に行った。隣の部屋では、たさんをはじめ何人かが慌ただしく働いている。きょうは夜だけど立て込んでいる日だったのだ。停電に関係しているのかもしれない。すっかりそのことを忘れて眠ろうとしたので、起こしにきたのかも知れない。悪いことをしたなと思いつつ、先ほどの部屋に戻ったのだが、今ごろになって、さっき引き抜いた人形のことが気になってきた。あれは抜いてはいけないものだったのだ。私は慌てて引き抜いた人形をひろい集め、A-3、などとふられたラベルを確認して、もとの穴に刺した。一定時間引き抜かれていると、警報がなるのだ。引き抜かれたままの人形はどうなってしまうのだろう。…… しばらく時間がたったころの続きだと思う。さっきの人形とは比べ物にならない、建物の三階くらいの高さのある巨大な布の人形が暴れまわり、人形が引き抜かれたことで騒いでいて、体が建物に挟まって動けないようだが、どうにか振りほどこうとものすごい力でぎしぎしとやっている。そのすきに私は少しでも遠くへいこうと走る。

午前、区役所でやっている地域のイベントに行く。一階で梨とさつまいもを買う。四階にはステージがあり、女性部のおばあちゃんたちが民謡を踊っていた。世界の遊びを集めた部屋があり、エジプトのボードゲームがあったのだが、先客がいてなかなか空かなかったのでまたの機会にすることにした。区役所ではいつでもゲームを借りてできるようなのだが、「青少年」に限られていて、三十歳までだった。妻が甲冑を着て、つきたての餅にきな粉をまぶして食べた。

昼、映画館に行ったが、見たかったものが満席で見れず、急きょ香りの展示へ。なんとなく気づいていたが、私はクリリンと同じように、鼻が利かない。かつて妻と通りを歩いていて、パンを焼いた香りに興奮する妻を横目に、私は何も感じないことがあった。この日も、妻は臭い! 良い香り! とはしゃいでいるが、私は何も感じない。だんだん不安になってきたころ、私にも唯一感じる香りがあった。山奈(さんな)という生姜のなかまの茎を乾燥して切ったもので、私にもその甘い香りを感じ取ることができた。私の鼻は匂いを感じ取るいくつかのセンサーがはたらいていないようだ。南へ。途中、駄菓子屋に寄った。

夜、河原町五条の南、菊浜盆踊りに行く。コロナをへて二回目の新しい祭り。炭坑節、江州音頭、河内音頭、マツケンサンバの四曲だけを繰りかえして三時間、踊りつづけていた。Youtubeで見たことのある個性的な居酒屋の女性がいた。踊らずにサッポロ黒ビールの缶ビールを飲み続けていたが、マツケンサンバだけは輪に混じっていた。

京阪で戻ってチャックの散歩。神社で湧き水は飲んだが、あまり元気がなく、それ以上遠くに行きたくないみたいだった。また明日ね。その後、秘密の会議、ろっく(参加者のひとり)は裸NGらしい。何やりたい? 大きいチンゲンサイをみんなでわっしょいしたい。OK、やろう。やりますか。そしたら昼間の明るいうちにチンゲンサイ祭しよ。でもおっきいチンゲンサイどうしたらいいか、わからへんねん。今年のチンゲンサイ男、決めたいねん。

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