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3行日記 #184(破壊、松本さん、片足をあげる)

五月十七日(金)、晴れ

巣が壊されてしまった燕の話の続き。前回に日記を書いた翌日、壊された巣の前を通ると、なんと巣の一部が戻っていた。とはいえ完璧ではなく、身体をすっぽりとかくまう「巣」というにはほど遠く、身体を乗せることができる「島」、みたいな感じだった。下に落ちた材料を繰り返し運んだのだろうか。涙ぐましい努力だ。でもその巣には一羽が入るのがせいぜいで、もう一羽は変わらず少し離れた不動産屋の自動ドアのセンサーの上にいた。と、ここまで聞くとゆくゆくまたもと通りに住めるようになるかとも思ったのだが、その数日後、再び前を通ると、またもや巣が破壊されていた。しかも今度は完全に破壊され、残骸もきれいになくなっていた。そして、やはり不動産屋の自動ドアのセンサーのうえには、二羽の燕が縮こまっていた。ある日、帰宅すると、自分の家が完膚なきまで破壊されている。理由もわからずに。さぞかし人間を憎んでいるだろう。私にできることは二羽の前をすぎるときに、声をかけることくらいだ。

夜、豚汁、納豆。チャックの散歩、家をでると、角に近所のおばちゃんがいた。チャックがいつものように草を食んでいると、おばちゃんが近づいてきて、ちゃっくぅ、と言いながら頭を撫でようとする。しかし、チャックは身体を硬直させ、後ろに体重をかけて顔をできるだけ離そうとしていた。チャックにしては珍しい反応だ。このおばちゃんが飼っている犬のことが、チャックは苦手なのだそうで、その飼主のことも苦手なのかもしれない。南へ、団地を通り抜けて東へ。ぐるっと回ってファミマにでる細い路地を歩いていると、うしろで犬の吠える声がした。チャックは左の前足後足をひょいとあげて静止し、音のほうに顔をむけて気にしていた。チャックは何かに気になると、片足をあげる癖があるらしい。初めて気づいた。神社を抜けて帰宅。家に戻る途中、ねこおじとすれ違ったが、電話をしていなかった。

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