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3行日記(羽黒蜻蛉、柴犬、エスカレーター)

八月十七日(木)、晴れ。

昼、出町柳から高野川を北へ。台風の雨の名残で、いつもより水量が多い。ふだんはちょちょろと流れている堰もきょうは、さながら落差の低い滝のように轟々と音を立てて飛沫をあげている。堤防でおじいちゃんがしゃがんでいる。腿の裏側とふくらはぎを隙間なく密着させて、砂に棒をこすって絵を描く小学生のように、うつむいている。手元を見ると、草なのか苔なのか、緑色のまじった湿った泥をいじっていた。桜の樹の根方に羽黒蜻蛉が飛んでいた。

午後、一乗寺のいつもの喫茶店へ。先日、店主の男性が熱中症になり店を休むとInstagramに投稿していたので、熱中症、大丈夫ですか? と声をかけると、豆を焼いてたら、くらっときちゃって。

夕方、一乗寺から出町柳まで歩く。柴犬(茶)にひかれる女性。立ち止まる柴。女性にひかれる柴。ふんばる柴。とっとっとっとっ、女性が駆けるふりをすると、足の力みをほどいて柴も駆けより、飼い主の顔を見上げた。しばらく進むと、今度は柴犬(白)にひかれる男性。道路を斜めに横切った。小学校の屋根の同じところに、なぜかいつも、雀が群れている。干からびて黒ずんだ玉蜀黍の芯が道ばたに転がっていた。出町柳の駅のエスカレーター、最後のほうで平坦な動く歩道になる。母親に手をひかれた男の子がゆっくりと歩いていたのだが、急に止まる。慎重に、ジャンプ。そういえば私も降りるのが苦手だったっけ。

夜、酒蒸しハンバーグ、スープ、梨。チャックの散歩、左右左、区役所の交差点を南へ、公園を突っ切って商店街を抜けて帰る。久しぶりのゴールデンコース。少しだけ涼しくなり、夏の終わりを感じる。

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