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アイムシリウス。

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特にやりたいことは無い。でもつまらない人生にはしたくない。これまで、悪くはないけど別に良くもない人生を送ってきた瀬名月見(セナツキミ)には、みんなから羨ましがられる「女優」の彼女…
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2024年6月の記事一覧

小説「アイムシリウス。」(7)

小説「アイムシリウス。」(7)

「カット!」
 助監督の豊島(トヨシマ)が進行中の演技を止めた。部下役のエキストラが、動き出すタイミングになっても一向に動かなかったためである。周りのスタッフ達は、何が起こったのかと気にしながらも、相変わらず自分の役割に集中している。

「え?」
瀬名月見(セナツキミ)は、自分が招いた事態であるにも関わらず、まるで何も理解していない声を発した。すると、いつの間にか間近にいた助監督の木部(キベ)と目

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小説「アイムシリウス。」(6)

小説「アイムシリウス。」(6)

 本番前の現場に戻った瀬名月見(セナツキミ)は、周りのスタッフに迷惑を掛けないことを最優先にしながら、助監督の木部(キベ)に教えてもらった芝居の段取りを1人で確認していた。演技を見た事はあってもしたことなどは無かったため、相変わらず自分の心臓の鼓動は聞こえていたが、もうこれ以上人に迷惑を掛けまいと覚悟を決めていた。ふと部屋の窓から下の広場を覗くと、デモ隊がわらわらと動いているのが見えた。彼らの中に

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小説「アイムシリウス。」(5)

小説「アイムシリウス。」(5)

「すいません部下の方、もうちょっとゆっくりめに歩いてください。先に白金さんを通してほしいです。」
 助監督の豊島(トヨシマ)は、唖然とした表情でこちらを見る瀬名月見(セナツキミ)に声を飛ばした。声も見た目も、自分では普通にしているつもりなのに、なぜかいつも周りから怖がられているのが豊島の悩みであった。今回も怒っているわけではなく、むしろ意識して親切に言ったつもりであったが、月見の精神に追いうちをか

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小説「アイムシリウス。」(4)

小説「アイムシリウス。」(4)

 この日「裁定者 Second」の撮影は1日を通して行われる。現場には撮影スタッフの他に、主演の勾坂雅弥(サキサカマサヤ)と何人かのキャスト、それから100人超のエキストラがいる。エキストラ達の今日の主な役割は、検察庁のビルの下でデモ活動をする住民の役である。その登場シーンは、とある検事に裁判での重大な不正が発覚し、検察全体の信用が問われる事態になるという、かなり深刻なものであった。
 撮影は、建

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小説「アイムシリウス。」(3)

小説「アイムシリウス。」(3)

 2021年3月27日土曜日。オフィスビル下の広場には、100を超える数のエキストラが密集していた。彼らの中には、俳優の下積みとして参加している者もいれば、今日撮影するドラマの主演、勾坂雅弥(サキサカマサヤ)を一目見るためにやって来た者、さらには「裁定者」ドラマシリーズの続編と聞いて駆けつけた、ドラマのファン達などもいた。そんな彼らは、ちらちらとオフィスビルの上の階を気にしていた。最上15階。ここ

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