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研究力ってのは、すぐには戻らない。。。だったら、今できることをみんなでやってくしかない。

少しキャッチーな出だしで始まる記事が日経に出ていたので、
ちょっと思うところもあり、書きます。

2000年以降に日本は19人がノーベル賞の栄誉に輝き、トップクラスの科学技術力を世界に誇ってきた。だが、そんな栄光に酔ってはいられない。
研究成果のほとんどは数十年前のもの。
過去約20年間、世界の中で日本の研究は質量ともに衰退の一途をたどる。
遠くない将来に受賞が途絶える恐れすら出てきた。
(記事のリンクは以下です)

この記事では、
研究者の雇用不安→研究者離れ→イノベーションを生む土壌が枯渇
という負の連鎖があり、こう締め括っている。

日本からイノベーションの担い手がいなくなれば産業界にも痛手となる。
学術界だけの問題にせず、企業も若い人材を生かす工夫を考えるときだ。


博士号取得者の能力を活かせていない日本

これに関しては大隈先生もこう考えられている。
「大学院の博士課程に進む学生が減り、研究を担う人材の不足が懸念されている。現状を放置すれば、企業も含めた日本の研究力の一段の低下につながりかねない。」と。。。


博士号取得者に関しての以前に書いた記事においても、博士号を持った人達はいるものの、その能力が上手に使われていないことを書いています。

これは国が大学への補助金を減らし、競争的資金への依存度を増やしたために、アカデミアにおけるポストが減少したことと、企業ではそもそもあまり博士号取得者を雇用しない状況があって、ポスドク1万人計画で生まれた多くの博士号取得者の行き場をひどく狭いものとしてしまっています。

そしていつもの議論「大学vs企業」

そしていつもの議論と言いますか、よく聞くこの議論。
大学は「企業が博士を採用しない」、
企業は「博士は使えない」と言うのがありますが、
どちらについても個人的にはそうじゃないよなぁと思っています

これに関しては、日本の中ではやはり難しいかのかな。。。。
と言うのが正直な感想です。。。
そう思うには理由があります。

企業側の課題

私も博士号を取って、ポスドクを国内外で実施し、
国内製薬企業に就職して、その後に外資系企業に転職しました。

単純な給与的な比較で言うと、製薬業界には博士号を持った人が多いものの、修士卒の人や企業にいながら博士号を取った人達と同等かちょっと上。
一方で、外資系企業に移ると博士号を持っていることへの評価は高く、年収はぐんとアップします。

仕事内容では、国内企業では専門性に全く関係のない業務もあったりする一方で、外資系企業では専門性に即した業務に専念する仕組みがあります。
専門性に全く関係がない業務がやりたくないということではなくて、私が伝えたいのは外資系企業では自分に期待されている業務がJob Descriptionと言う形できちんと定義されていること(まあそうでないこともありますが)。

すなわち、企業側は社内にどのような仕事があって、
それにはどの専門性が必要かを理解出来ていることが大切ってこと。
それが外資系の方がより明確化されている印象です。

大学側の課題

大学側は研究をしようとする人を増やしあぐねているし、
根本的に以下の2つの大きな課題があると指摘されています。
1)優秀な若手が研究者を目指さないという点
2)新分野への挑戦が日本は少ないという点

すなわち、知の探究と言う大切な部分が失われつつあると言うこと。。。

日本の科学技術力の低下に歯止めはかかるのか。
政府自らが低下を認めた2018年版科学技術白書や
8月に公表された文部科学省科学技術・学術政策研究所の
「科学技術指標2018」を読み解くと、
低下の流れを止めるには2つの課題の解決が不可欠であることが分かる。

この報告書ですが、
個人的にはまるで他人事のように書いているのがとても気になる。。。
だって、文科省(科研費の元締め)傘下の機関が分析結果としてさらりと言ってのけているのですから。。。

大学は稼ぐ力も模索

大学の話のほとんどは、国(行政)との関連だとも言えます。
研究費のほとんどは、文科省と厚労省が押さえていますから、
大学も色々な手立てで研究を存続させようと活動しています。

結局、お金を誰が出すのかって話に行きついてしまうのですが、
これはもっとしっかりと話をしていかないといけない議題です。。。

とは言え、これは理系、特に工学系で多い事例だと思います。
大学の全学部でこのような取り組みができるのかって言うと、正直言うとそれは非常に難しいと思います。。。

産官学、それぞれの状況

企業(産)では、時代の移り変わりが速まっているので、今年欲しい人材と来年欲しい人材は違うこともあると思います。また、誰を雇用しようととやかく言われたくないだろうなと思います。

国(官)では、財政が厳しいとか色々あるとは思います。また一度舵を切った大学の運営交付金削減と競争的資金政策をもう一度元に戻すのは言うのは簡単で実行するには本当に大変だとは思います。それに、どのようなことに役立つのかと言う視点で研究を捉える気持ちも分からないでもないです。

大学(学)では、数年かけて教育・指導しつつ研究推進することや研究費確保の大変さがあるのも理解しています。特に、運営交付金は削減の一途、競争的資金政策の煽りで昨今は国立大学の経営統合も始まっています。。。

どこも色々と大変ではありますが、ここは踏ん張りどきです。

でも、変えていかないと。。。

でも、日本の研究力(博士号取得者)の向上が今後の日本の産業力(イノベーション)に大きく寄与するため、自由で広範囲に渡って基礎研究に対する懐の深さを日本は態度と行動で示す必要があると思います。

そのためには、運営交付金復活かそれに替わる何らかの方策は本当に求められていると思います。単に自分で稼げと言っても大半の大学は難しいだろうと思います。そもそも理系だけでないですしね、大学は。

産官は、学の基礎研究活動をサポート(研究費、運営費)
官学は、産の実用化をサポート(減税措置、特許)
産学は、官の政策立案をサポート(ニーズ、理論援護)

こんな当たり前のことしか思いつかないけれど、批判し合うのではなくて、前向きにできることを素直に実行していかないことには、日本の科学技術レベルの回復もイノベーションを生み出す素地も望みが薄くなるばかりだと感じています。

最後に、、、

ただ、研究力を再起動するには時間がかなりかかる。。。。
(少子化問題ともなんだか構造的に似ていますね。。。)
でも、今からもっとやっていかないと、もっと遅くなってしまします。

産官学の3つで話しましたが、ここに民の興味が加わると良いのですけどね。最近は理系脳とかプログラミングとか少しずつ理系の大切さが論じられるのが増えている印象なので、ここの議論が増えると良いなと。。。
(これについては、色々な人と個人的には話していはいるんですけどね)

最後に中国の言葉のご紹介で終わります。
木を植えるベストなタイミングは2つあると言う話があります。
それによると木を植えるベストなタイミングは、
30年前と今
だそうです。

何だってそうですが、初めどきはいつだって今なんですよね。

#日本の研究力の低下 #イノベーションの枯渇 #COMEMO #NIKKEI #黒坂図書館 #カルチャー #テクノロジー

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