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Tech Giant と Big Pharma のダンスが始まる

ちょうど一年前(2018年10月15日)に日経でこのような記事がありました。

 米国のスタートアップ投資で脚光を浴び始めているのが医療分野だ。バイオ関連から保険、遠隔医療と幅が広い。医療の先端技術を巡って急速にIT(情報技術)化が進んでいることが背景にある。「医」に流れる巨額のマネーの出どころを探れば、IT業界でおなじみの面々が現れる。グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムのいわゆる「GAFA」を筆頭とするテックジャイアントたちだ。投資を通じてスマートフォン(スマホ)の次を担う事業の種を探る布石を着々と打っているのだ。

この流れはかなり前から伏流水のように見えない場所で流れていて、
最近かなり顕著な動きとなって見えてきています。
1年前に書いたnoteも一応載せておきますので、ご興味があればどうぞ!


さて、最近の動きの話です。
2019年10月2日:ノバルティスとマイクロソフトが提携

そして2019年6月20日:サノフィとグーグル

記事にあるように、ノバルティスは気合が入っています。

ノバルティスはいち早くその可能性(ビッグデータを駆使して研究開発を加速)に気付き、2018年2月にCEOに就任したナラシンハン氏は同社をデータサイエンス企業にする目標を掲げている。同氏によると、同社は社内の情報を3つの大規模なデータファイルに保存しており、属性の異なるため統合が難しいデータでも簡単に組み合わせて活用できる。同社では約800人のデータサイエンティストとバイオ統計学者が働いている。

もちろんノバルティスだけの話ではないのがこの競争が激しい製薬業界。

サノフィは、新たに最高経営責任者(CEO)に就任するポール・ハドソン氏(スイス製薬大手ノバルティスの元幹部)にデジタル能力の向上を期待しているが、これは競合他社も同じだ。
米イーライ・リリーは今月、AIを活用した創薬ベンチャーのアトムワイズと、新薬開発のための総額5億5000万ドル相当の提携を発表した。
グーグルの持ち株会社アルファベットの医療部門であるベリリー・ライフサイエンシズ(Verily Life Sciences)は先月、デジタル技術を使った臨床試験を加速するため、ノバルティス、大塚製薬、サノフィと提携すると発表した。
ベリリーは、英グラクソ・スミスクライン、米バイオジェン、ノバルティス、米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)などとも提携している。2016年に合意したサノフィとの合弁事業は、糖尿病の治療改善が目的だ。

創薬研究へのAI応用は非常に有用で、研究者が気付いていない分子間の関係性などかなり広範囲にサイエンティフィックなデータを見ることが出来ますし、どのような遺伝的な特徴を持つ患者が開発中の医薬品にフィットするのかといったことも推測できるので、研究開発期間を短くできるだけでなく、研究開発費用を抑えることもまた可能となります。
これによって医薬品が利用できるタイミングが早まりますし、薬の価格が低くなる可能性も含んでいます。

良いことずくめのように感じますが、これらの裏付けとなるデータはいわゆる臨床的なデータだけでなく、基礎研究からのデータも非常に大切となります。お金を生み出す下流側だけにフォーカスしてしまうと(基礎研究をないがしろにすると)、こうした医薬品開発に対する新しい知見を供給できなくなる可能性が高いことは肝に銘じておく必要があると思います。

そして2019年9月30日にDuke大学のDuke Forge(医療データサイエンスセンター)センターのセンター長Robert Califf氏がGoogle HealthとVerily Life SciencesのMedical Strategy and Policyのヘッドに就任するニュースが流れました。

このRobert Califf氏は、2016年から2017年にかけて米食品医薬品局(FDA)の長官を務めた方です。米国の医薬品の許認可をする機関FDAの元長官なれば、色々な人的なパイプもありますし、今後の米国での医薬品開発の方向性についても理解があると考えられます。
このようなバックグラウンドの方がグーグルに行くニュースは私にとっては結構衝撃的だったのですが、皆さんはどうでしょうか?

現在、国際的に医薬品価格の引き下げ圧力が高まるなかで、この両者の取り組みは効率的に革新的な医薬品開発をする必要に迫られている側面を如実に示す一つの指標かと思っています。

そしてこのIT分野と医薬分野の融合は医薬品開発のみならず、周辺領域(研究そのもの、研究試薬、研究機器、医療機器などなど)への波及効果も必ず見えてくると思います。

目が離せないことではあるのですが、医薬品というものが今後さらに公共性という視点が大切になってくると感じています。これが簡単ではないことは百も承知ではありますが、商業化と公共性、科学の発展といった視点で良いバランス感覚で舵取りをして頂きたいなと思います。


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