黒色天国/夢色地獄

黒色がいつもの名前、夢色が創作をする時の名前です。

黒色天国/夢色地獄

黒色がいつもの名前、夢色が創作をする時の名前です。

最近の記事

鯨の家

理子さんの家は、環状線駅から少し歩いた住宅街にある。 正確に言えば「理子さん夫婦の家」だ。でも俺は旦那さんに会った事は無い。彼は俺が生まれる前に、飛行機ごと海の底に沈んだきり。 理子さんと俺は血の繋がりもない、半世紀以上も年の離れた、ただの他人だ。 高校で和真と隣の席に座らなかったら、きっと知り合う事もなかった。同じクラスの人間とも殆ど離さない俺にグイグイ絡んできて、一方的に肩を組んで教室を出て、「良い店あるんだよ」とか言いながら近所の駄菓子屋に寄って……次に向かったのが理

    • マッガヨー

      マヨヒガを知ってるか。 母にそう問われたのは、まだ私が10歳の頃だった。 知らないと答えたら、ひどく馬鹿にされたのを覚えている。 「感性が貧しいのよ」 実の娘に向かってそんな事を言ってから、母は仔細を聞かせた。 曰く、マヨヒガとはこの世のどこかにある不思議な家のこと。 偶然そこに辿り着けたならば、その者には多くの富が与えられる……という伝承の一種だった。 母はその話を私と妹に聞かせて、それから何か石の連なった首飾りのようなものを妹に渡した。 「これがその時カミコちゃ

      • 縺翫メ繝ウ繝√Φの独白

        僕が生まれた国は2つの島に分かれていて、東の島に生まれた人の方が偉いです。 僕のように西の島で生まれた人は、5歳になったら東の島へ渡って奴隷として従事します。 そして35歳になったら雇い主が決めた相手と結婚して、子供が出来たら西の島に帰れるんです。 西の島に帰ってからは、子供を奴隷として送り出す度にお金が貰えます。 だから皆たくさん子供を産みます。 僕は8番目の子供で、弟と妹が3人います。 西の島では離婚が認められないので仲が悪い夫婦もたくさんいます。 でも、お

        • 「走馬灯」

          きみに逢い やるべき事がまた増えた 復讐の足は止められないのに ▼ ※この話は先日公開した「映画の外」という短編の別視点です。 ※本作「走馬灯」も全年齢向けの内容ですが、「映画の外」に比べるとやや残酷な表現が含まれます。 「映画の外」は下記リンクより https://note.com/kuroiro0225/n/nd0dd64697d98 ▼ 幼い頃、よく母に連れられて映画館へ行った。 昼も夜も働きづめだった母は休日になると僕を連れ街に出て、路地裏の小さな映画館に入

          「映画の外」

          きみ亡くし 柱に縋って泣いていた 背比べの跡を搔きむしりながら ▼ ※この話は夢色地獄名義で小説家になろうにて連載している「Nightmare In The Moon」という小説の番外編として執筆したものです。 本編にはR18G相当の表現が多大に含まれているため、閲覧はお勧めしません。 本作「映画の外」に関しては全年齢向けとなります。また、本編を読んでいなくてもお楽しみいただけます。 というか、「映画の外」の登場人物はまだ誰も本編に出ていません。 ▼ この世が明確な善と