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城崎温泉イチな宿泊

今回の旅行記は番外編である。
初日に宿泊した本屋とカフェバー、そして宿泊施設が融合した

ブックストア・イチ

を紹介したい。

Book store iChiは、兵庫県豊岡市城崎町の温泉街にある本屋さんです。
旅先の宿で日々の喧騒を忘れ、ゆったりとしたひと時を過ごす時、寄り添う物語がここにあります。新刊の書籍や雑誌はもちろん、様々な小説の古本を1冊100円(税込)で販売しており、旅の思い出をより鮮やかに彩ります。たくさんの小説家や芸術家が訪れた城崎温泉ならではの、城崎温泉旅館経営研究会が立ち上げた「本と温泉」という出版レーベルの本もご用意しております。「温泉地文学」という本のかたちに是非触れてみてください。

書店公式HPより

本屋なのか? カフェバーなのか? 宿なのか?
その実態は果たして!

なんて大袈裟に書いても仕方ないが。
筆者の個人的印象を書いてしまうと、カフェバーの要素が一番強いのではないかと思える。なにせ、店主が一番初めに本屋は儲からないと強調していたのだから。それに関しては全くその通りとしか言いようがない。筆者が触れるまでもなく、街中の書店がドンドンと消え去っているのを見ればわかるだろうし、新たに出現する小さな本屋はどれもただの本屋とは違う独特な個性を持たせている。どこもただ本を売るだけの店ではない。そこからしても、昔ながらの本屋を続けるのは難しいのがわかる。それだけに、イチがただ本屋と表現するのは間違っているのが理解できるだろう。


◯本屋として

開店前、朝方の店内
ジャンプも売っている

店内は、入り口背にして右半分に本棚が設置され、左半分がカフェの席となっている。
店内にはYouTubeからのBGMが流れていて、わりと落ち着く雰囲気だ。
本のラインナップは流行りの漫画から城崎温泉にまつわる本までバラエティに富んでいる。個性的な店ほど、そのラインナップに硬派な印象を受ける時が多々あるが、このお店は他店と比べれば柔らかい方だ。大体の店がコンセプトを明確にし、それに合わせた本を選別して置いている。だからこそ、個々の店で置いている本に偏りがあり個性が強く出るものである。
しかし、店主曰く、ラインナップにこだわりはないらしい。そういう個性派な本屋とはまた違う趣と受け取っていい。

あえてこの店の個性を強調するならば、地元愛、つまり城崎への愛が滲み出てるところだろうか。

店主は元々都内で勤めていたらしいが、この故郷城崎の地に舞い戻ってきたそうだ。
そこでこのようなお店を展開しているのだ。城崎への愛が感じられる。


城崎温泉独自のレーベル「本と温泉」

このお店では、一般書籍以外にも、城崎温泉独自のレーベル『本と温泉』も取り扱っている。


「本と温泉」は、2013年の志賀直哉来湯100年を機に、次なる100年の温泉地文学を送り出すべく、城崎温泉旅館経営研究会が立ち上げた出版レーベルです。

城崎温泉は、外湯めぐりとあたたかなもてなし、そして松葉蟹や但馬牛などの食文化で多くの文人たちに安らぎと刺激を与えてきました。志賀直哉を始め、さまざまな小説家や詩人、歌人、芸術家が訪れた文芸の温泉地として、これからの100年読まれ続ける新しい本づくりをしていきます。小説に限らず、詩やエッセイ、紀行、写真集、アートブックなど、さまざまな表現による、愉快で驚きに溢れた本をお楽しみください。

NPO法人 本と温泉

本と温泉公式HPより

上記の説明通り、文学にゆかりのある城崎温泉では、独自のレーベルを立ち上げて作家さんの協力により城崎温泉にまつわるオリジナル小説を出版している。しかも、かなりこだわった装丁だ。この装丁だけでも価値があることがよくわかる。筆者も、実物を見てかなり衝撃を受け、その独創的な装丁に感銘を受けたものである。
城崎名物松葉ガニの甲羅を模したブックカバーや城崎をめぐる際に必須な下駄を模しながら、広げると絵本になっている本などかなりの独特な工夫が見られる。これだけでも買う価値は高い。
筆者は、タオルと融合し、風呂でも読める(水に濡れても平気な紙を使った)、万城目学氏の『城崎裁判』をお土産に購入した。
城崎文学館でも同じものを取り扱っていたが、宿泊者は是非ともイチで購入して欲しい。


◯カフェバーとして

オムカレーなどのフードも充実
クラフトビールも

さて、もう一つの要素。カフェバーだ。
バーと付くからには当然アルコールもメニューにある。
ウェルカムドリンクとしてキンキンに冷えたビールも選択できる(ここ、大きい!)。クラフトビールもある。
とはいえ、どちらかと言えばカフェよりな空気なのかなと感じ取れた。
しかも、土地の人の憩いの場のような雰囲気。筆者が滞在している時も、何人かお客さんが集まり談笑していた。そうやって交流がはかられる場として城崎の土地にあるのかもしれない。
筆者自身も、店主とさまざまな話で盛り上がり、たまたま居合わせた人と豊岡演劇祭に関しての意見を伺うこともできた。まさに交流の場なのだ。
こういう地元の人と交流することも旅の醍醐味である。それを叶えてくれたイチにキンキンに冷えたビールで乾杯したい。

ちなみに、筆者おすすめはオムカレーである。

24時まで開いているので、温泉後に寄るのもいいし、宿泊の際に寝る間際までここでビールでも楽しむのもいいだろう。

◯ゲストハウスとして

肝心の宿泊施設である。
部屋は3タイプに分かれている。
ベランダへアクセスできる部屋と窓はないが4人が泊まれる部屋、それとはなれの部屋。

筆者が泊まった部屋
2段ベッドが二つ設置されている
元々は隣の部屋と扉一つで繋がっていたようだ。
2階の廊下
右が筆者が泊まった部屋

筆者が泊まったのは、4人が泊まれる部屋。
宿泊前はてっきりドミトリーハウスのように一部屋に知らない人間が4人泊まるのかと思ったが、1人、もしくは1グループで一部屋を占有できるようだ。
なので、この日は4人部屋を1人で占有。
窓がなく、部屋に大型のベッドが2つもあるので窮屈感は否めない。もし知らない人間が4人集うとなると、より息苦しかったかもしれない。とはいえ、寝るための部屋である。くつろぎたければ店でコーヒーやビールを飲んでいればいい。
ただ、ベッドが寝返りを打つたびにギシギシと軋んでいたのは気になったが。

音といえば、件の通りに下のお店が夜遅くまでやっている。少し早めに寝ようとすると気になるかもしれない。
筆者の感覚としては、少し聞こえてはいたが、馬鹿騒ぎするほどの話し声ではなかったので気にせずに眠れた。
むしろ、隣の部屋にはこちらの音がかなりハッキリと聞こえるだろう。
幸い隣の人はそれほどの音を出していなかったが、むしろこちらが隣部屋の存在に気が付かずに(途中まで空室だと思ってた)聞いていたYouTubeの音が騒音になっていなかったか。今となってはわからない。

フリースペース
温泉むすめ関連グッズ
城崎亜莉咲

一階お店の奥にはフリースペースがある。宿泊客なら自由に使える。
流し台もあるので、ここで歯磨きを済ませた。
モニターが設置されているが、ここでYouTubeや Netflixを自由に観られるそうだ。
もし4人部屋で複数人泊まっているのならば、寝るまではこちらで話していたほうがいいかもしれない。
ちなみに、レンタルスペースにもなっているらしく、筆者が泊まった日は朗読劇の練習として使われていた。そして、その人たちとも会話を交え、豊岡演劇祭への考え方を知ることにもなる。
非常に良い場であった。

聞けばこの宿、いつもは外国人の宿泊が多いとか。今回は街中ではチョイチョイ外国の方とすれ違ったが、話しかける機会は持てなかった。とはいえ、うまくいけばこのイチ店内で国際交流ができるかもしれない。そういう場となれば、より価値が上がるはず。

店の奥からフリースペースへ行く途中の廊下には、壁に温泉むすめのグッズがズラリと飾られている。
存在は知っていたが、イラストをはっきりと確認するのはこの時が初めてだった。城崎温泉にももちろんキャラが割り当てられていて、『城崎亜莉咲』というらしい。
こういうファンの集いがこの店ではあったのだろうか。
色々と交流の場として広がっているのかもしれない。

◯風呂は温泉(外湯)へ

お店に風呂はついていない。
歩いて1〜2分のところに鴻の湯があるし、他の外湯もそれほど遠くない。
ここまできたのだ。もちろん風呂は外湯へ行くべきである。
店主に聞けば、色々温泉のことも教えてくれる。気軽に話しかければ良い。

 

以上が筆者が泊まったブックストア・イチである。
とにかく店主が気さくな人で、居合わせた人も優しく、非常に居心地が良かった。そのために紹介記事まで書こうと決意してしまった。
記事中に何度か触れているが、ここは本屋やカフェ、宿泊施設だけでなく、旅人通し、または地元の人との交流するコミュニティの場でもあるというのがすごく実感できた。しかも、城崎への愛が存分に詰まっている。それを実感する意味でも、泊まる意味は大いにある。

皆さんも、宿泊で城崎温泉に行く際は、宿泊先として御検討してみてはいかがでしょう。特に、自分のような一人旅の人は。

お店正面から

支援いただけるとより幅広いイベントなどを見聞できます、何卒、宜しくお願い致します。