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温室・ビニールハウスの自作について

目次
①温室が暖かくなる仕組み
②温室やビニールハウスに保温効果はない
③温室が冷える原因は放射冷却・伝熱・対流・凝縮熱の4つ
④温室でも放射冷却は発生する
⑤「藁囲い・藁立て」は優れた先人の知恵
⑥保温効果を高めるにはどうしたらいいのか?
⑦温室の熱源
⑧暖房方法
⑨温室を自作してみた


①温室が暖かくなる仕組み
温室を自作するにあたって「温室やビニールハウスがなぜ温かくなるか?」という温室の仕組みについて理解する必要があります。温室が温かくなる理由は主に2つあります。

1つ目は、
ガラス・ビニール・土・植物など温室内にある物体に光が当たると熱せられて暖かくなります。暖かくなったものと空気が触れ合うことによって空気も温かくなります。この温かくなった空気が、ガラスやビニールによって留まることで温室内が温かくなります。

二つ目は、
温室内に入った光(紫外線・可視光・赤外線など)がガラス・ビニール・土・植物などに当たると熱をもちます。すると、そこから赤外線が発せられます。つまり温室に入った光よりも、温室内の光に含まれる赤外線の割合が上がります。その赤外線が温室内で反射や吸収を繰り返すことで室内に熱が蓄えられて温かくなる。

②温室やビニールハウスに保温効果は無い
意外に思われるかもしれませんが、ガラス板やビニールフィルムには断熱材としての性能はほとんどありません。①②の所でも書きましたが、温室は主に光として入ってきたエネルギーを赤外線に変換して温室内で反射させたり、温まった空気を逃がさないことでエネルギーを一時的に滞留させているにすぎません。

しかも、ガラス板やビニールは赤外線を簡単に透過させてしまう性質があるので、赤外線という形で大量のエネルギーが外へ逃げ続けているのです。
昼間は「入るエネルギー量が超多い>>>出るエネルギーの量が多い」という収支の関係で温まりますが、日没後のエネルギー供給が絶たれ状態では「入るエネルギー量が少ない<<<出るエネルギーの量が多い」という収支の関係になるので急速に室温が下がります。

しかも窓を閉め切った状態では、屋外の空気と撹拌されないので放射冷却が強く作用します。その結果、暖房設備が無いと夜間から早朝にかけて外気温と同じか外気温よりも温室内の方が寒くなることも珍しくありません。

つまり骨組みを立ててビニールを張っただけでは、雨除け・風よけ程度にしかなりませし、最悪の場合は低温の害がより強く出て植物を枯らしてしまうのです。

③温室が冷える原因は放射冷却・伝熱・対流・凝縮熱の4つ
温室が冷える原因には主に放射冷却・伝熱・対流・凝縮熱の4つがあります。

【放射冷却】とは赤外線などの電磁波によるエネルギーの放出のことです。放射冷却が起こると地表付近では氷点下でも6m~8mほど高い所ではプラス5℃くらい高いことがあります。これを【逆転層】と言います。茶畑の画像を検索すると扇風機のついた電柱が写っていることに気付くと思います。これは放射冷却で冷えた地面付近の冷たい空気と上空の温かい空気とを入れ替えることで、お茶の新芽を温めて霜焼けを防ぐための工夫なんです。

グラフィッuhbクス1

【伝熱】とはガラス・ビニール・温室の柱や梁を伝わる熱のことです。

【対流】とは空気や液体などの流体は温度によって密度が変わります。温室内で気温(密度)のムラできれば、それによって対流が生じます。この対流が温室の内側で熱を運ぶ役割をして、急速に熱が逃げていくのです。

【凝縮熱】とは冷たい飲み物をコップに入れると結露が生じますよね。この結露ができるときにコップ周辺の水蒸気から熱を奪います。この水滴が熱を奪う働きのことを凝縮熱といいます。

④温室でも放射冷却は発生する
天気予報を見ていると「曇りの夜は放射冷却が起こりにくく、晴れの夜は放射冷却が起こりやすい」という話がよく出てきますよね。これは雲が多ければ、地面から放たれた赤外線が雲に当たって反射されて地表へ帰ってくるのに対し、晴れの時は雲で反射されずに宇宙へ逃げてしまうからなんです。

温室の放射冷却1

先に「ガラス板やビニールフィルムには断熱材としての性能はほとんど無い」と書きましたが、それは、ガラスやビニールは透明なので画像の赤矢印のように赤外線を屋外(宇宙)へと放出してしまうからなんです。これは、晴れの夜に放射冷却でキンキンに冷えるのと同じ現象が起こっているということです。しかも窓が閉じられていれば外気と撹拌されないので、冷気が溜り続けて屋外よりも冷たい冷蔵庫状態になってしまいます。

⑤「藁囲い・藁立て」は優れた先人の知恵
牡丹やエンドウ豆の栽培では冬の寒さ対策として藁囲いや藁立てが行われます。スカスカで風が抜けるような構造をしており、防寒として意味があるようには見えません。

しかし赤外線の動き、放射冷却対策という視点で見ると理に適っていることが分かります。藁囲いや藁立ては、赤外線を利用して放射冷却から植物を守っているのです。

グラフgjhyィックス1

⑥保温効果を高めるにはどうしたらいいのか?
先に書いたように、ガラスやビニール自体には断熱・保温効果はほとんどありません。

そこで温室内に2重・3重にビニールを張って、その隙間にできた「空気層によって断熱・保温効果を高める」という方法がとられます。この時に空気の対流が起こると、対流によって熱が逃げてしまうので、対流が起こらない程度に隙間の間隔を狭くすることが需要です。

内張りによって対流を抑えることは、同時に結露を抑えることにつながります。結露(凝縮熱)でガラスやビニールに熱が伝わらなければ、伝熱も抑えられます。

内張り31

温室の構造にもよりますが、作業性なども勘案して内張りの隙間の間隔は1㎝~20㎝程度で十分です。広すぎると対流が発生して内張りの効果が半減してしまいます。一般家庭で使われるような小型温室であれば夜間だけシートを被せて朝に外すだけでも効果的です。

⑦温室の熱源
温室の熱源には暖房の他に太陽光と地熱の2つがあります。太陽光については説明不要ですね。

地熱についてですが、この場合の地熱とはマントルから来る熱のほかに、日中に蓄えられた熱が夜間に放出されるモノをさしています。実はこの地熱が重要な働きをします。

日光・半地下温室1

日光温室や半地下温室という形式の温室があるのですが、これは熱の逃げやすい外気に触れる面を減らすとともに、地面や壁に接する面積を増やすことで、蓄熱性と保温性を高めることができる優れものです。

片屋根温室1

家庭用の小型温室の場合は、地面に接する面積の多い温室(背の低い温室)を使ったり、断熱性能が高い家の壁に密着するように設置して、外気に触れる面積を減らすだけでも効果があります。壁があることで赤外線による熱の放出も避けられます。*私が自作したものは、この家の壁に密着させるタイプの片屋根温室です。

⑧暖房方法
石油ファンヒーター:燃料代が安い、安全装置付きのものは比較的安全だが3時間ほどで自動消火する機種が多いので夜間の暖房に使えない。

石油ストーブ:燃料代が安い、小型温室の暖房によく使われるが一酸化炭素中毒の危険性が極めて高い。

電気温風機:出力が低くて電気代が高いが安全、温風で植物が焼けたり空気の乾燥で傷みやすい。

電気毛布:出力が低くて電気代がやや高いが安全、温風ではなく赤外線でマイルドに温めるので扱いやすい。

⑨温室を自作してみた
1、はじめに太めの角材で温室の骨格を作ります。
2、次に窓の形に合わせて細い角材で”田の字型”のフレームを作ります。
3、このフレームの裏と表に両面テープを使ってビニールを張り付けます。このフレームの裏と表にビニールを張るので2重窓です。しかも、このフレームを窓1か所あたり2枚重ねにすることで4重窓にします。ビニールが4枚になるので空気層は3層です。
4、これだけでは隙間風が多くて熱が逃げてしまうので隙間テープなどを使って隙間を埋めます。

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暖房は、火を使う方法は火事や一酸化炭素中毒が怖いので電気毛布で代用しました。毛布2枚で約100wの出力です。出力的にはかなり貧弱ですが夜間の外気温に対してプラス7~9度くらいは維持できました。

温度の調整は熱帯魚用のサーモスタットを流用しました。温室内の日光が当たらない場所にサーモのセンサーを設置して、サーモの出力側に電気毛布をつなぐだけです。昼間はかなり高温になるので逆サーモや換気扇を使って自動的に換気できるようにすると理想的ですね。

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