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〈あの絵〉はここに〜本のひととき〜

「〈あの絵〉のまえで」 原田マハ

旅先で訪れようと思った美術館があった。
そこで浮かんだのが本書。実在する美術館と、そこに収蔵されている絵画が登場する短編集だ。
旅の前に再読。

国内を縦断するようなラインナップ。
中には私の知っている美術館もある。

5つの物語。
登場人物は人生の岐路に立っている。迷ったりあがいたり、揺れている状態だ。
そんな折に浮かぶのが1枚の絵。手帳のモチーフや、カレンダーのデザインのこともある。
アートに精通する著者のこと、実際にその絵を見ていなくても読み手に伝わってくるのだ。
質感、色の重なり、美術館内の雰囲気。
しんとした気持ちで絵と向き合っている心情が細やかに表現されている。
図録やポストカードで絵を楽しむことはできるけど、あの「美術館で味わう感覚」はなかなか再現できない。絵と向かい合いながら、そこに自分を見つける。

体験は自分の中に残るもの。
のちに形を変えて、包んだり支えたりしてくれる味わい深いものだ。
〈あの絵〉があれば何度でも。

大原美術館に地中美術館、また行きたいなぁ。


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