浅野中 2021【三】問八 授業コメント
有名中の解説を授業で扱いました。今回は浅野中2021を見てみます。
今回みてみたい問題は大問三の問八。
関係する文章の出典は道尾秀介「煙の謎」。
問題はこちらで見ることができます。
(あらすじ)
筆者は小学生時代、製紙工場の煙を見て、そこで働く人や未来の自分を想像していました。そうしていろいろな想像をしたことは、筆者が後に小説家になったきっかけだったのかもしれない、と述べています。
しかし、のちに当時その製紙工場は閉鎖されていて、煙など出ているはずがなかったとわかります。それではあの煙は何だったのか?インターネットなどで調べればわかりそうなものですが、筆者はそうはしません。そして以下の傍線部につながります。
問八 「ここは敢えて調べないことにして、せっかく手に入った魅力的な謎を、しばらくこねくりまわしてみようと決めた」とありますが、筆者はどうしてこのように考えたのですか。二十字以上三十字以内で答えなさい。
この記述は難しいです。はっきりと理由が直接説明されているわけではないので。
筆者は、なぜ煙の謎をインターネットなどで調べずに「しばらくこねくりまわしてみようと決めた」のか。
それは、その謎自体が「魅力的」だったからです。そうなのですが、その中身をどう説明するかが問題です。
その謎について、具体的な記述はどこにあるでしょうか。ぼう線部直前の「僕たちが眺めていた・・・」からはじまる段落にあります。何をしているのかというと、いろんな想像をしていますよね。答えを知ってしまうと、このように自分で謎について考えをめぐらすことができなくなります。この、「自分で謎について考えをめぐらす」ことこそが、ぼう線部の「こねくりまわす」なのです。
こうした行動は、子供のころ製紙工場の煙を見て、「見えない人たちを想像して心動かされ」たときと同じ行動です。それは、筆者が小説家になるきっかけとなった行動でもあり、筆者にとってとても大切なプロセスなのです。だから「こねくりまわす」ことに魅力を感じ、すぐに答えを求めたくないと思ったのです。
ということは、「魅力的」の中身を説明するためのキーワードは「想像する」だと思いませんか?
よって、解答例は、「煙の謎について想像すること自体に魅力を感じていたから。」などとすると良いでしょう。
あれ、前回の東大2014年度第四問の最後の問題も「想像すること」がテーマだったような?つながりますね。なんだか面白い。
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