模範解答を先生と共作する、という勉強法
ある生徒さんの授業で、国語の現代文を扱っています。だんだん力がついてきたので、毎回1問必ず記述問題をやるようになりました。
やり方としては、記述問題の答案をチャットで文字にして送ってもらいます。そして添削するんですが、
ただ正答を示して終わり、ではなく、これをベースにして記述の正答を一緒につくる作業をしています。
答案を軽く添削したあと、もう一度本文にもどって、記述に必要なポイントをまとめます。
今回は比喩表現(麻薬中毒)に線が引かれていて、それを説明する問題だったんですが、こういう問題では「比喩そのもの」ではなく、「比喩の指している中身」を説明する必要があるんですね。
ポイントを参考にしながらもう一度答案を作っていきます。今回は50字指定にしたので、字数を数えながら・・・(下にある数字が文字数です)
いちおう解答ができました。そこからもう少し自然な日本語にしたかったので・・・
こんな感じかな?というわけで完成です。
こうやってじっくり完成答案を一緒に作り上げていくプロセスって、
国語力を高めるいい方法なんじゃないかなと思っています。
そう思うのには理由がありまして・・・
僕は某予備校の現代文の模試を作っています。
模試の原案を作ったら、必ず国語の先生に集まってもらって会議を開きます。現代文の先生だけでなく、古文・漢文の先生もそろっています。中には誰もが知っている「あの問題集/書籍」を著した有名な先生もいます。
そこで原案を土台に、侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を行うのですが・・・。
正直最初は思いっきりボコボコにされます(笑)。
「解答としては正しいが、日本語として美しくない」
みたいなこともしょっちゅう言われました。自分はまったく日本語が書けていなかったんだと痛感しましたね。
そんな中で、一番問題にされるのは、選択問題だろうと記述問題だろうと、「その『解答例』はほんとうに『正しい』のかどうか」です。
たとえば、
・本文の記述から読み取れる表現かどうか
・勝手な解釈が混じっていないか
・学生がおよそたどり着けない、変に「高級」な文になっていないか
などなど・・・徹底的に議論します。
正解は1つのはずなんですが、先生それぞれにアプローチのしかたは少しずつ違うんです。何回もやっていくとそういうことに気づいてきました。
そして、だんだん1つの正解に収斂(しゅうれん)していくんですね。
自分より実力・経験のある人がどう読んで、どう解答をまとめていくのか。そのプロセスを目の当たりにしながら、自分も意見を出していく、というのはめちゃめちゃ勉強になりました。
こういう経験をしたので、生徒にもこの体験を味わってほしいと思ったわけです。
解答を作っていく際に、もちろん僕の方で正答例をアタマに入れているのですが、それをすぐ出したりはしません。生徒に出してもらった答案を吟味して、もう一回本文に戻ってポイントをまとめ、答案を練り直して、さらに磨きをかけて、1つの「模範解答」を作り上げる・・・
これ、正直僕のほうも勉強になってますね。はい。何より楽しいです。
もちろん最終的には、一人で解答を作れるようになるのがゴールです。試験中は一人で解答しないといけないので。
でも、他の人と一緒に正解を作り上げる、という作業からは、多くのことを学べます。
大学入試改革がいろいろと物議を醸していますが、こういう「共同作業」というのは、少なくとも、今後も必要になってくる教育プロセスなんじゃないかとは思いますね。
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