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島皮質とは

【引用、参考】
脳機能 脳血管障害と神経心理学
頭頂葉の入出力構造:2003

【島皮質】
①体性感覚機能
②前庭機能
③聴覚機能
④嗅覚機能
⑤味覚機能
⑥内臓感覚機能
⑦内臓運動制御
⑧心機能調節中枢
⑨会話、言語機能
⑩神経精神的側面

■体性感覚機能
☆非侵襲的皮膚刺激、疼痛・かゆみに対する情動反応、奇異性熱
非侵襲的な皮膚刺激に反応する。
味覚だけでなく素材や熱に反応するニューロンや味覚を統合するニューロンも存在する。
熱の知覚においても複雑な役割を果たしており、皮膚に冷たい刺激が与えられても熱く感じる(奇異性熱)時に右島皮質で活性化がみられている。
 島皮質全体に痛覚情報が入力され、二次体性感覚野の一部をなしている。
不快刺激である疼痛・かゆみには帯状回や島皮質、基底核や視床が関与し、情動反応を形成している。この島皮質の病変により疼痛象徴不能(痛覚に対して頭皮反応や防御反応が無く苦痛を表現しない)が現れる可能性がある。

■前庭機能
大脳前庭中枢:頭頂間溝(上頭頂小葉・縁上回・角回)、頭頂-島皮質前庭皮質
島皮質は前庭中枢に含まれている。

■聴覚機能
☆聴覚情報の統合、音のピッチ・パターン感知、音声会話に対する反応
 聴覚情報は後部島皮質に入力される。この部位では聴覚ー体性感覚の統合機能が推測される。
前部島皮質では音のピッチ・パターンの感知がなされ、左側は言語的情報の場合に働き、右側は非言語的情報の場合に働く。音声的・非音声的会話過程において両側の島皮質が活性化するという報告がある。

■嗅覚機能
 前部島皮質の電気刺激により嗅覚が生じる。快い匂い:左島皮質、不快な臭い:両側島皮質が活性化するという報告がある。

■味覚機能
☆前部島皮質・尾側眼窩前頭皮質は食物関連の情報統合を担っている。
 味覚中枢:前部島皮質
第一次味覚野は前頭弁蓋部から島皮質にかけての領域に存在し、味の識別を行う。
第二次味覚野は眼窩前頭皮質の尾側に存在し、味の嗜好性や味に基づく行動に関連する。
前部島皮質には口腔刺激(素材感や温度)に反応するニューロンも存在する。

■内臓感覚機能
☆嘔気、腹部症状、内臓刺激、食欲(欲望化・価値化)、情動「むかつき」を司る。
 島皮質の刺激により嘔気・多彩な胃・腹部症状(グルグル感、ヒリヒリ感など)が出現することが報告されている。
 息こらえや最大吸気、バルサルバ手技などによる内臓刺激により島皮質の味覚中枢の尾側が活性化される。
 空腹刺激で島皮質と視床下部に著明な活性化がみられるという報告や正常の食欲機能(食物刺激への欲望化・価値化)に側頭葉と島皮質が関連したという報告がある。
 腸管刺激により右前部島皮質の活性変化が報告されている。
情動ストレスにより「むかつき」を誘発すると右前部島皮質や眼窩前頭皮質の活性化が認められたという報告もある。

■内臓運動制御
☆内臓運動関与、嚥下、舌運動、摂食と報酬に関連した行動
島皮質の電気刺激により脈拍や血圧の変動、嘔吐や胃腸運動の変化、呼吸停止などの多彩な内臓運動現象が現れる。
嚥下運動時に前頭弁蓋部、下中心前回、小脳と共に島皮質が活性化し、頻回の舌運動時にも島皮質が活性化する。
誤嚥性肺炎患者のSPECTにおいて前部島皮質の血流低下が示されている。
このことから上位の嚥下中枢として関与していると推測される。そして、味覚と自律神経機能と関連することで、摂食と報酬に関連した行動に繋がる。


■心機能調節中枢
☆脈拍・血圧の変動、心電図異常、自律神経に関わる。
 島皮質の電気刺激により脈拍や血圧の変動が生じる。また、島皮質を含む脳梗塞が心房細動やその他の心電図異常をしばしば伴うことがよく報告されている。
 さらに、心機能障害は右病変に多いことが報告されている。
また、右前部島皮質が交感神経系の反応に、左前部島皮質が副交感神経系の反応に関与している。
一過性の左心室拡張症候群であるタコツボ心筋症が左島皮質を含む脳梗塞急性期に生じたという報告がいくつかなされている。

■会話、言語機能
☆発音形成、会話、歌唱、発語失行等に関わる。
 左前部島皮質は発音形成に重要な役割を持っている。この病変により発音の計画と開始が障害され、構音不能(発語失行)が現れるという報告がある。
 その他言語関連機能として読字障害、感情的・非感情的プロソディー、聴覚失認との関連も論じられている。
 伝導失語との関連も長く議論されてきたが、島皮質下白質、すなわち最外包の損傷が重要であるといわれる。
前部島皮質は左が会話に、右が歌唱に寄与し、互いに異なるネットワークが示唆される。

■神経精神的側面
☆報酬の予測・期待、嫌悪感情、他人の痛みの共感に関わる。
嫌悪感情では島皮質が中心的役割をもち、嫌悪に伴う身体反応を検知する受容性感覚に基づいて行動を開発・制御している。また、前部島皮質は他人の痛みの共感にも大きな役割を果たしているとの報告がある。
 前部島皮質は辺縁系と相互的連絡をしており、辺縁系機能と感覚機能を結びつけて、身体外空間におけるさまざまな事象を関連する動機付け状態に関連させる機能を有している。
すなわち、内受容性感覚だけでなく、報酬の予測・期待にかかわっていることが示唆される。


★島皮質全体
非侵襲的な皮膚刺激
疼痛感覚:後上方部
振動触覚刺激
奇異性熱・疼痛象徴不能
大脳前庭中枢
嘔気、多彩な胃・腹部症状(グルグル感、ヒリヒリ感)
息こらえ、最大吸気、バルサルバ手技での反応
空腹刺激に対する反応
内臓運動:脈拍・血圧変動、嘔吐・胃腸運動制御、呼吸制御
嚥下・頻回の舌運動
嫌悪感情

★前部島皮質
会話
音のピッチ・パターンの感知
嗅覚
味覚中枢
口腔刺激(素材感や温度感)
食物関連の情報統合
誤嚥性肺炎による血流低下⇒機能低下

☆左
会話
言語的情報
副交感神経系の反応
発音形成:発音の計画と開始の障害⇒構音不能(発語失行)

☆右
非言語的情報
腸管刺激
情動刺激「むかつき」
交感神経系の反応
歌唱

★後部島皮質
聴覚情報の入力
★島皮質の線維連絡 入力 出力
体性感覚系
一次体性感覚野 ○
体性感覚連合野5野 ○
体性感覚連合野7b野 ○ ○
視床:後部腹内側核:VMPo ○
前庭系
視床:上下後部腹側核:VPS/VPI ○
聴覚系
聴覚連合野 ○
運動系
内側運動前野6野 ○
高次連合野
前部前頭眼窩皮質11野 ○ ○
前頭前皮質45野、46野 ○ ○
上側頭回堤 ○ ○
嗅覚系
嗅覚皮質 ○ ○
味覚系・一般内臓感覚系
視床後内側腹側核内側部 ○
視床後内側腹側核外側部 ○
辺縁系
嗅内皮質28野 ○ ○
嗅周囲皮質35,36野 ○
側頭極38野 ○ ○
後部前頭眼窩皮質12,13野 ○ ○
帯状回23,24野 ○ ○
扁桃体(皮質内側) ○ ○
扁桃体(基底外側) ○ ○

頭頂葉の入出力構造:2003
島皮質の後部50%の細胞は三半規管刺激に応答する。
少数のニューロンは移動する視覚刺激に応答する

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