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【雑記_1】2023年の抱負は?


「じゃあ今年の抱負をひとりずつ発表しよう」

まだお正月気分が抜けない仕事始めの日。チームのミーティング終わりに上司が言った。途端に焦り始める私である。

なんも考えてなかった。


急いで何か良さげな抱負を思い浮かべる私を他所に、そりゃあもう十分に話すことを準備していた上司が抱負を語りだす。僕はやっぱり一次産業をうまく活用したビジネスを諦めてません!やはりせっかく北海道で働いているのだから土地の利を活かしてほにゃららら。

困った。そんなビジネス的な抱負を求められてるのだとしたらまずい。何も出てこない。当たり障りのないような「WEB広告の売り上げを伸ばします」とか「新規顧客を増やします」とか言おうと思ったけど、それは別に新年の抱負に掲げるまでもなく当たり前のことだし…。黙々と考えていたら別の先輩社員にバトンタッチされていた。

「僕はドラマの聖地巡礼ですね」
今度は思い切りプライベートな目標がきてしまった。そういえばこの先輩、年末ごろから再放送されていた東京ラブストーリーにどハマりしてたな…と思い出しつつ思考回路はショート寸前の私。プライベートも含んだらさらに考える幅が広がってしまう。思えば毎年なんとなく年を越して、なんとなく一年を過ごしてきたから(抱負があったとしても2歩歩いたら忘れる性質だし)、自分がどうしようもなく堕落した日々を送っていたのではないかと急にとてつもなく不安になった。

愛媛でリカとカンチがどうのこうの言ってる先輩の長い話がようやく打ち切られ、話の主役は私へと切り替わる。

「えー……えーっと……健康に生きたいです」

なんてしょうもない。



翌日、美容室。

昨日はボロボロだったなあ…とパサパサ落ちる前髪を見ながら思う。結局あれから今年の抱負もしっくりくるものは見つかってないし、仕事でミスをしてしまって他の人に迷惑をかけてしまった。ため息が溢れる。正月でぼけぼけになった頭がいつもより重たくなってる気がしたので、少しすいてもらった。うん、ちょっぴり軽くなった。

ラベンダーピンクに染まった髪が、蛍光灯の光を浴びるたびに艶々光ってる。「すごく良い色ですね〜さすが〜!」というと、「でしょ!似合ってるしめちゃくちゃ可愛い」と返される。美容室ってすぐ可愛い言ってもらえて自己肯定感あがるなあとマスクの下でにやにや。

「オイルつけますね」
「あれ、また前とちがうやつだ。でもこれも良い匂い」
「これ最近のお気に入りっス。イランイランの香り?らしい」
「イランイランってなに?」
「わかんない笑」

分からないことはすぐにネットで調べてしまう。
片手間にぽちぽちと「イランイランとは」と検索するとこのように出てきた。

植物名:イランイランノキ

イランイランの香りは、オリエンタル調の甘い香りが特徴です。

なお、イランイランという名はフィリピンの言葉であるタガログ語「ilang-ilang」が由来であり、「花の中の花」という意味を持っています。


「こいつ、花の中の花らしいです」
「こいつ、花の中の花なんすか!」


お会計をしながら検索結果を口に出すと、ツボの浅い美容師さんが吹き出した。そっか〜花の中の花なら僕が惚れ込んじゃうのも仕方ないですわ、とか言いながらタブレットをぽちぽち。全人類が虜になりますわ〜花の中の花なら、と言いながら私はカードを機械へさして暗証番号をぽちぽち。


じゃあ今年もよろしく、と美容室をあとにしてビルを出た。マイナス気温のあまりにも冷たい風に心の中で痛い痛いと叫びながら駅の方に歩いていく。ダウンジャケットに首元を埋めながら、駅までの短い(だけれど体感がすごく長い)道をゆく。
瞬間、風が吹いて例のイランイランの香りが鼻をかすめた。でた、花の中の花!とクスクス。あ、そうだ。今年の抱負。こんなふうに、新しい発見にクスクス笑えるような幸せな年にしたいな。どんなミスしても次の日には切り替えて笑って、「あーしあわせかも!」って思えるような、そんな2023年になりますように。



m.

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