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マスメディアによる「印象の嘘」

この記事によると、雇用調整助成金が5兆円を超え財政危機となり、政府は保険料率を引き上げる方針だという。

一見もっともな話に聞こえるが、ちょっと待って欲しい。こんな記事もある。

コロナ禍の中、2020年度の税収は過去最高なのだ。

それに、今年度は税収の上振れ分が6.4兆円あり、それが補正予算に組み込まれている。

財務省:令和3年度補正予算
https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2021/20211125201916.html

今年度予算での税収概算額は57.4兆円だから、6.4兆円プラスすれば昨年度より多く、過去最高をさらに更新する勢いである。

雇用調整助成金は2020年度からの累計が5.5兆円。税収の上振れは2020年度が当初予算からの比較でも2.4兆円、今年が既に6.4兆円で、合計8.8兆円にある。単純に考えて、プラスではないか。

なんでこれで財政危機なのか、と思って冒頭の記事をよく見なおしてみると、「膨大な支出で保険財政は危機的な状況」とある。つまり、国全体ではなく、その一部の雇用保険に限定した話で危機的状況と言っているのだ。

それは確かに、嘘ではないのかもしれない。

しかし、こんな記事をふと目にすれば、日本全体の財政状況と誤認しても仕方がない。厳密に言えば嘘ではないのだろうが、間違った印象を与えることは容易に想像できる。共同通信社としては「ちゃんと保険財政って書いてるじゃないか」ということなのかもしれないが、不必要に危機感を煽って記事に目を向けさせようしているとしか、思えないではないか。

スポーツ新聞で「和田アキ子死亡」などと出て、実際には折り返してみると「説」がついていた、というような話と同じではないか。

こんな記事に惑わされて緊縮財政を支持する国民がいるかと思うと、実に暗澹たる思いである。

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