エゴイスト
死んだ胎児を抱いた女が彼の前に現れたんです。山奥にある彼の家の前で。
彼女は明後日の方向を見ながら、その胎児の頭を撫でていたんですよ。
普通なら驚きと恐怖で、穴という穴から汗だとか尿だとか出てきそうになるところをね。
彼は胎児の代わりに彼女に愛されたいと願ったんですね。いや、これが愛を知れる絶好のチャンスだと思ったんですよ。なんせ彼には身よりもいませんしね。ずっと一人だったわけです。彼は彼女を抱きしめたんです。胎児の腐乱臭にさえ快感を覚えながらね。まあ案の定、二人は一つになるわけですよ。その翌朝彼は絶望を味わいましたよ。だって、愛がなんなのか余計にわからなくなったんですから。目に見えないものを大事にしなさいなんて言われてもね。どう大事にしろって言うんですか。目に見えるものと目に見えないものの比較なんてできるはずがないんですよ。それでね、彼は思ったんです。この世界は自分が思っている以上に目に見えたものがすべてなんだって。彼はある種、この世に対して利己的であったと言う訳です。
栗山の一句
ささくれ剥いたり、ニキビ潰したり、唇の皮剥いてるときの時間の流れ異常に早くね?
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