栗山

無気力系スーパーギャルの戯言

栗山

無気力系スーパーギャルの戯言

最近の記事

A LOVELY VICTIM

娘の部屋はいつも汚いんですよ。そのくせ、風呂の時間は人一倍長くてね。毎度死んでるんじゃないかって疑ってしまう程です。 夜になれば窓の鍵がちゃんと閉まっているのか何度も何度も確認してね。早く寝なさいと言うと必死な顔で「寝たいってば!」なんて言われるもんですから気難しくて理解できないところがあるんです。だからそっとして置こうと。 掃除をしたと思ったら永遠に終わらないし、皿洗いなんて大変ですよ。水道が悲鳴を上げるんじゃないかって思うくらい。 頻繁に手は洗うし、冬になればひび割

    • 如雨露ヘッド

      彼女は僕の全てだった。 彼女は本当に僕の全てだった。 彼女は僕の女神だった。 彼女は僕に新しい世界を教えてくれた。 僕はその世界を遠くから眺めているだけだった。 僕が欲しいのは彼女だけだった。 でも僕は彼女の瞳の色を覚えていなかった。 #小説 #文章 #ポエム #短い文やな #なかなか短い #瞳の色

      • エゴイスト

        死んだ胎児を抱いた女が彼の前に現れたんです。山奥にある彼の家の前で。 彼女は明後日の方向を見ながら、その胎児の頭を撫でていたんですよ。 普通なら驚きと恐怖で、穴という穴から汗だとか尿だとか出てきそうになるところをね。 彼は胎児の代わりに彼女に愛されたいと願ったんですね。いや、これが愛を知れる絶好のチャンスだと思ったんですよ。なんせ彼には身よりもいませんしね。ずっと一人だったわけです。彼は彼女を抱きしめたんです。胎児の腐乱臭にさえ快感を覚えながらね。まあ案の定、二人は一つになる

        • 逆流性食道炎

          君はいつも僕より素敵な歌を知っていた。 だから僕は毎晩、毎晩、君の聴いてる歌を探すんだ。 そうしているうちに僕は何者でもないことに気づいてしまった。 自分の付加価値を気にしてばかりだったが、僕にあるのは若さだけだった。 “若さにうつつを抜かす者は愚かだ。” そう言い聞かせて止まないのは、僕自身がどう足掻こうとそれに囚われているからであった。 そしてまた、この世は腐っていると嘆く以前に、腐った世界に腐った僕が生きているのはとてつもなく理にかなっていると思わざるを得なかった。 い

        A LOVELY VICTIM

          破滅とユートピア

          # 社会不適合者であったんですよ、彼は。 それで医者たちはこぞって彼の行動に興味を抱いたんです。彼のありとあらゆるところをかっぽじってね。そしたらね、なかったんですよ。彼には脳みそのシワがなかったんです。そりゃたまげたものですよ。あれだけ気違いだ気違いだと騒ぎ立ててた奴らがもしかしたら仏の生まれ代わりなんじゃないかだとか、今世紀最大の天才なんじゃないかだとか。こりゃもう仏様も神様もあったもんじゃありませんよ。医者たちはこれでもかってくらいに次から次へと自分の病院に彼を運んで

          破滅とユートピア