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レビー小体型認知症の母の幻視/幻聴/妄想etc.

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2007年〜 レビー小体型認知症の母の幻視、幻聴、妄想(あるいは夢と現実の区別がつかない状態)を始めとした症状についての記事です。
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記事一覧

もうひとつの世界

もうひとつの世界

2008/07/08
(この記事は2008年、母が、まだレビー小体型認知症と診断される前のものです)

入院して間もなくから、母の話を時々おかしいなとは思っていたが、何気なく聞き流していた。

だけど隣の部屋やそのまた隣の部屋の、患者さんと誰かさんとのやりとりの一部始終が、そんなに母の部屋まで筒抜けだなんて、やっぱりあり得ない。内容にもだいぶ「?」のところが増えてきて、昨晩母に付き添った帰宅後に

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箱の中のしあわせ

箱の中のしあわせ

2008/07/12
(この記事は2008年、母が、まだレビー小体型認知症と診断される前のものです)

幸せって、何かしらね。
母を見ていて、そんなことを想う。

母は狭い個室の箱の中で、すでに10日間を過ごしている。幻覚がどんどん増長していってからというもの、母は時々とても幸せそうに見える。

被害妄想もあって、そんな時は険しい顔をしているけれど、たくさんの自分が見聞きした(つもりの)ことを語る

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介護タクシーに乗って

介護タクシーに乗って

2008/07/14
(この記事は2008年、母が、まだレビー小体型認知症と診断される前のものです)

今朝は7時半頃家を出て、バスで中野へ向かった。朝のバスは本数も多いけれど乗客も多くって、あんなにバスが混むなんて知らなかったよ。

病室に着くと母はすっかり身支度を整えていて、朝食抜きのせいかぐったりとした様子でベッドに横たわっていた。

8時40分頃看護師が病室に、今日の検査のための説明書(紹

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食べること生きること想うこと

食べること生きること想うこと

2008/07/16
(この記事は2008年、母がようやくレビー小体型認知症と診断された時期のものです)

これは母が入院している病院の近くの風景。初めて見た時、えらく感動してしまった。ファミリー中野センターには、溜息が出そうな八百屋だとか何店舗かが中に入っている。昔はこれでも、ちょっとした市場だったんだろうな。

今日は夕方から病院へ向かった。税理関係担当の方と病室でアレコレ。母の今後と家族のこ

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「壊れてきちゃった」

「壊れてきちゃった」

2008/07/20
(この記事は2008年のものです)

夕方6時10分過ぎに、病室の母から電話があった。今日は上の姉が行く日だが、夕飯の6時に間に合わなかったようだ。誰も来ないから、心配になって電話してきたのかと思った。

「今日の午前中、病院に来た?」と母は私に訊く。仕事で行けなかったことを伝えて、詫びる。母いわく、病室の外で、自分の名前と私の名前を口にして、何か話をしている人がいたのだと

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見えないもの 見えるもの

見えないもの 見えるもの

2008/07/22
(この記事は2008年のものです)

今日は半月分の入院費を支払って、それから14時に病室で、介護保険区分変更申請のために調査員の方とお話をして、そのまま19時半まで病院に滞在した。

私が13時半ごろ病室に着くと、母は背中を向け、暗い顔をして横たわっていた。振り返るなり、「完全に壊れちゃった…」と言う。

ーー私の話を誰も信じてくれない。私の言うことは皆が全部否定する。「何

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雑然

雑然

2008/07/27
(この記事は2008年のものです)

毎日が、こんがらがったまま過ぎていく。私は自分の気持ちのやりくりにも、結構忙しい。

家の中は雑然としている。息子の学用品なんかがソファの下だとかに散乱していて、床にも散らばっている。何度か注意したけれど、私は怖くないので、そのままになっている。さっき改めてお願いをしたら、「早く言ってくれよ」と息子は笑顔で言って、気持ちよく自室に引き上げ

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生きる

生きる

2008/07/28
(この記事は2008年のものです)

病室の窓から、夕焼けに染まった空を見る。

好き嫌いしながらも、なんとかご飯を食べて、便秘しながら、薬を飲みながら、ポータブルトイレで用を足す。

今日の母は、足がすくんで歩けない。母の歩行は普段、ベッドからポータブルトイレへ移動する1~2歩か、食事のときに椅子に移動するほんの2~3歩だけだ。

廊下で過酸化水素を持った人が現れて、煙が出

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疲労

疲労

2008/07/30
(この記事は2008年のものです)

今日は午前中から姉と病院へ。入所を希望している、自宅近所に新しくできた介護ホームの担当者2名が母の様子を見に、そして私たちに話を聞きに来るからだ。

母の食事の嗜好だとか、いろんなことを尋ねる。そこでは魚嫌いの母にも、肉を用意してくれるという。朝は母の好きなコーヒーとトーストを用意してくれるという。ああ、私もそんなところに行きたいよ。

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不安

不安

2008/07/31
(この記事は2008年のものです)

寝ている息子が今朝、ベッドの上で大きな叫び声を2度あげた。何事かと思ってドアを開けたら、「夢でよかったーーー!!」と喚いている。

部屋から飛び出してきて、私の腰に両腕を回す。息子が泣いているよ、真剣に。「夢でよかった、夢でよかった…」と言って、泣いているよ。なんでも自分が死刑にされる直前だったとかで、それも絞首刑ではなく、脳の中に薬を打

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坂を転げ落ちる

坂を転げ落ちる

2008/08/03
(この記事は2008年のものです)

ものすごい勢いで、坂を転げ落ちていく。この4~5日の間の母。

31日から新たに追加した、薬のせいもあるのだろう。筋の強張りはもう、半端ではない。幻覚や妄想はおさまってはいないが、ほんのいくらかは減ってきたようにも思う。そのぶん、パーキンソン症状が悪化しているようだ。

楽しくはなくても、いくらかワクワクするような妄想は姿を消し、主に残っ

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声

2008/08/03
(この記事は2008年のものです)

母は声の明るい人だった。よく通る、綺麗な声だった。

だけど最近は、声が出にくくなっている。かすれかけた小さな声でゆっくり話す。これも病気の症状のひとつだ。

今日は母の言葉を聞き取ろうと、私は自分の耳を母の顔に近づけるほどだ。喋っていても疲れるらしい。母は無口になった。一時期の、夢みる少女のように妄想を語る母はもう、どこかへ行ってしまっ

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枯れ枝

枯れ枝

2008/08/05
(この記事は2008年のものです)

母はすっかり痩せてしまった。
…って、また母の話題かぁ…。まあ仕方ないかな。

そう、母の身体はすっかりやせ衰えてしまって、枯れ枝のようなのである。私がものごころついた頃には、母はもうふっくらとしていて、若い頃には痩せていたというけれど、私は母が痩せている姿は、最近まで見たことがなかった。

母は食事をほとんど食べたがらなくなった。「鶏肉

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夏の日々

夏の日々

2008/08/09
(この記事は2008年のものです)

夏は過ぎていくわ。
昨日は立秋だったのね。

私は今日も昨日も一昨日も、病院通いの日々でございます。毎日姉たちと、「じゃあ明日の昼は私で夜はアナタね」「あさっては一日ダメなのよ、明日の夜なら大丈夫」などと手分けをして、どうにか凌いでいるのでございます。

母が介護ホームへ移るのが、16日の午前と決まり、退院をするのが14日午前。自宅に戻

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