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「廃王国の六使徒」没シーン

完成した小説には無数の没バージョン、没シーンがあったりする。
私の場合は主に、無駄なシーンや描写を削ることが多い。
以下は三笠書房刊、今はなきF-clan文庫の「廃王国の六使徒」(イラストはTHORES柴本氏)の幻のファーストシーンだ。
本をお持ちの方は、そちらの冒頭と比べてみてほしい。出版版のファーストシーンとほぼ同時刻、街の他の場所ではこんなことが起こっていた。
 ※有料記事です。小説部分4200字ほど。登場人物はアレシュとハナ。読んでいなくてもまったく問題ない部分なので、ご興味ある方のみ、投げ銭感覚で課金してみてください。

カフェ『緑の壁』は、百塔街に建ってからもう三百年にもなろうという古い店だ。
外観はすっかりと緑の蔦に覆われ、内装は美術館の一室のように美しい。白と黒の大理石を組み合わせて模様を描いた床に配置された黒檀の円卓たち、そして古びた花柄の布を張った椅子やソファ。天井では鈍い金色の扇風機が、ぬるい初夏の空気をゆっくりとかき混ぜている。

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