「丁寧な暮らし」に憧れるのは気が狂わないように、かもしれない。
*小説みたいに読んでほしいですが、小説ではないです。エッセイよりももっと非現実的。
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気持ち悪くなって。でもベッドの上からは起き上がれない。
部屋干しのにおいが、さらに気持ち悪さを加速させる。酔う。
薬飲まなきゃ。
その前に何か食べなきゃ。
そう思うけど、気持ち悪くて食べれる気がしない。外に行った方が良い気がするけど、外に出られない。ベッドからも出られない。
何も食べずにどんどん気持ち悪くなる。
なんとか起き上がって冷蔵庫の前に行く。
開けると以前買っておいた板チョコがあった。
齧る。もぐもぐと食べる。いつもなら一枚食べきれるのに、半分もいかず気持ち悪くなる。
もう一度冷蔵庫の前へ。
昨晩焼いてもらったお肉の残りを見つける。
LINEで食べる許可をもらってから、電子レンジで温める。
ステーキ1枚、切れてない。
ナイフを出すのも面倒だ。かぶりつく。
なかなか噛み切れない。
かぶりついていると、まるで、自分が人間じゃないような気がしてくる。狼とかライオンとか、そんな獣のような。
人間失格ー。
半分ほど食べたところで食べるのをやめた。
なんだか今日は人間じゃない気になってくる。
食べるのも気持ち悪い。外にも行けない。気が狂いそうだ。
丁寧な暮らしって言葉がもてはやされてるのも分かる気がした。
丁寧な暮らし。
手入れの行き届いた部屋。栄養バランスを考えられた手料理。堕落せず、無理せず、暮らす、みたいなコンセプト。
それはきっと「人間ならでは」の暮らし。
そんな生活なら、きっと気も狂わない。いや、正確にいうと気が「狂いにくい」のだろう。
板チョコとステーキは「食事」なんかじゃなかった。薬を飲むためのクッションと生命維持のための栄養補給。
ちゃんと「食事」をしたいなぁ
とボンヤリ思って
そして薬を飲んでまたベッドに戻る。
板チョコもステーキも中途半端のまんま。
また、眠る。
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