見出し画像

道場:株式会社松崎 と きみたつ ブランド〜木育インストラクター松崎裕太さん

はじめに

今回インタビューしたのは、神戸市北区道場町にある株式会社松崎の取締役であり、木育インストラクターの松崎裕太さん。裕太さんの曽祖父の時代から引き継がれる株式会社松崎は、木工の教材や家具を自社でつくり、提供していて、きみたつという木工教材のブランドは地元の保育園をはじめ、たくさんの施設で使用されている。インタビューの中では、きみたつ ブランドに込めた想いと会社の成り立ちをお伺いし、神戸市北区で木工教材をつくる株式会社松崎の今後の展望について語っていただいた。
株式会社松崎のHPはこちらから
きみたつ ブランドのInstagramはこちらから

松崎裕太さんのお人柄

裕太さんは、株式会社松崎の取締役を務める前は広告代理店に勤務しており、マーケティングやブランディングに関わる仕事を経験された後、2017年から本格的に株式会社松崎の家業を引き継ぐことになる。現在は、兵庫県産の木を素材として作られるきみたつという木工教材のブランドの商品デザイン・企画やマーケティングなどに尽力し、幅広い分野で活躍されている。

裕太さんは様々な分野に関心を持たれていて、その中でも教育分野に対しての関心が強い。自身が大学時代に部活のコーチを務めて"教育に関わった"体験を原点に、
幼稚園・保育園の現場に関わる先生である教育当事者などとの対話で得られるニーズなどを株式会社松崎の原点回帰となった木工教材きみたつブランドで商品として体現し幼稚園・保育園に通う未就学児やその現場の先生たちに届けようと日々奮闘されている。

また、趣味としては写真撮影とバイクがあるようで、神戸市北区をバイクで走っては写真を撮影し、自身のInstagramに掲載することもあるよう。裕太さん自身、神戸市北区で生まれ育ったこともあり、子ども時代に神戸市北区で過ごす良さはもちろんのこと、神戸市北区の歴史の奥深さや自然の良さ、利便性など今だからこそ感じる神戸市北区の魅力があると語ってくださった。

株式会社松崎 や きみたつ ブランドについて熱く語る 裕太さん

株式会社松崎は、創業70年以上の歴史がある神戸市北区の木工屋さん。
裕太さんが新たにつくったブランド「きみたつ」は、会社の原点回帰をはじめとして様々な想いがありました。まずは、株式会社松崎の成り立ちについてご紹介します。

株式会社松崎(さん)の生い立ち

株式会社松崎さんは、裕太さんの曽祖父である松崎平治さんが第2次世界大戦前の1940(昭和15)年に、神戸市の板宿で創業しました。曽祖父は高校の先生をしており、生徒のための木工教材を自作していました。具体的には、彫刻板やマシカクのような体積計算用具、板に釘を打ち付けて作るパチンコのようなコリントゲームなどがありました。板宿に工場を持っており、そこで教材を作成し、スタッフも雇っていました。その後時代は戦争に突入し、神戸の大空襲によって工場が燃えてしまいました。平治さんと当時中学1年生の裕太さんの祖父にあたる松崎幸弘さんが、人力で荷物を運ぶための二輪車の大八車(だいはちぐるま)で六甲山を歩いて越え、親戚がいる現在の北区道場町へやってきました。この地でもう一度工場を再稼働させ、株式会社松崎を法人化させた/設立したのが幸弘さんでした。

会社設立後は曽祖父が初めから生徒向けの教材を作っていたことから、板宿の工場と同じ木工教材制作を新しく事業として始めました。創業から一貫して木工教材を学校さんや保育園さんなどに提供していた歴史があることから、ロゴマークには「木と、子どもたちと、歩む。」という言葉が添えられています。父信生さんが社長となったタイミングで、木工の教材だけではなく家具を作ろうということで、学校やオフィスで使用する棚や机なども制作を始めました。現在も信生さんが社長ですが、次世代として裕太さんが原点回帰という観点から「きみたつシリーズ」を始めました。現在、学校の図工の授業で使う教材(裁縫キットや工作キット)は、予算の観点から海外製のものがほとんどです。それでも裕太さんは、「日本のものは日本の材料で日本の工場で作った方が良いよね!」という考えから、80年以上教材を作成してきた歴史を活かして、未就学児に向けた教材に近い知育玩具を提供するブランドを新たに作りました。

株式会社松崎 での作品制作の様子(撮影:裕太さん)

株式会社松崎さんのロゴには、鶴の羽と松の葉っぱがデザインされています。設立者の祖父が考えたもので、昔自宅の玄関に鶴と松が飾られていたそうです。花札言葉である「鶴と松」は、松鶴長春(しょうかくちょうしゅん)という中国の諺を表しています。「百花繚乱」という一度散ったら終わりだから華々しく咲かせるという言葉とは対照的に、一年に何度も花を咲かせる「長春花」という花があり、これを縁起として大切にしているそうです。さらに、松は常緑樹でずっと枯れない植物です。ここに松崎さんの「松」とかけて、松鶴長春をアイコン化してデザインしました。

株式会社松崎のロゴ

80年以上、子どもたちや生徒のために教材を作り続けてきた「想い」が一貫しており、理念をすごく大切にされてきたんだなと感じました。4代にわたって、家業を継いでこられていることも素敵だなと思いました。きみたつが立ち上げられるまでの、経緯がより深く理解することができました。

次の章では、裕太さんがきみたつブランドに込めた想いや実際の商品について、詳しくご紹介していきます。

兵庫の木工玩具ブランド「きみたつ」(について)

“きみたつブランドのコンセプトは何ですか?”
「おもちゃとしてだけでなく、考え方を育てる。」

株式会社松崎が手がける木工玩具ブランド きみたつ のロゴ

特に、子供たちの自分自身や自分の力を肯定する非認知能力を育てられるようデザインしています。また、ブランドのロゴにもこのコンセプトが込められています。ロゴマークは、親という漢字が由来となっており、木の上に立っているお父さんとお母さんが子どもたちを見守っていることを表現しています。一般的なおもちゃは説明書があり、ルールや遊び方が開発者によって定められています。しかし、きみたつシリーズのおもちゃは子どもたちがルールを決め、親は子どもが安全に遊べるように見守るだけです。

きみたつシリーズのおもちゃにはコンセプトに沿ったたくさんのこだわりが詰まっています。例えば、同じ基尺で合わせて遊べることです。他製品と組み合わせて遊べるだけでなく、片付ける際も綺麗に並んで見えるようになっているので、紛失に即座に気付くことができたり、子どもたちが片づけを楽しむことができたりするようにデザインされています。また、素材にもこだわっており、地元である兵庫県産のヒノキを使用しています。香りや手触りなどから自然を感じることができます。今回のインタビューでは、くみきとましかくという2つのおもちゃについて紹介していただきました。

1つ目のくみきはお寺の伝統的な建築技法である、くみつなぎ、あいかきつなぎ、ほぞつなぎという組み方を使って遊ぶおもちゃです。形が全く同じパーツで構成され、穴の大きさ、厚み、幅、奥行きの全部がパーツの厚みを基準に、その数字の倍数になっています。タワーやツリー、線路、動物などなんでも創ることのできる、積み木から一段ステップアップしたおもちゃです。建築的な考え方としてのバランスの取り方や、ここが揃えばこっちも揃う、というような理数的なことを座学で勉強するのではなく、感覚で覚えることを大切にしているおもちゃです。

くみき で遊ぶ様子(撮影:裕太さん)

2つ目のましかくは、1cmの立方体で正立方体のパズルや、平面で8×8のパズルを作ることができるおもちゃです。ましかくは、少しずつ紙やすりで均一に削ることや、昭和中期くらいの機械が必要になるため、誰でも作ることのできるおもちゃではありません。職人さんの手で綺麗に揃うように作られています。ドットアートを作ったり、可能性としてリアルマインクラフトのように自分たちの世界観を作ったりすることもでき、遊び方・使い方共に自由自在なおもちゃです。

ましかく(撮影:裕太さん)

“きみたつの今後の展望はありますか?”

「最大のゴールは、全国の保育所さんの50%はきみたつが入っている状態にすることです。」

段階としては、まず地元の保育園・幼稚園さんがきみたつを知っているという状態になってほしいと考えています。認知された状態になると、使用している先生方から直接アンケートが取れるので、使い心地や改善点など、どんどんアップデートすることができます。もっとこんなものがあった方が嬉しいという話があれば、新商品開発や製品改良を極め、最終的には全国の50%というところを目指していきたいです。

実際にきみたつシリーズのおもちゃで遊ぶと、コンセプトやプロダクトに込められた想い、こだわりなどが至る所から感じることができ、とても驚きました。「楽しみながら学べる、自由自在に遊べる」きみたつシリーズのおもちゃの魅力をたくさん発見することができました。

おわりに

きみたつブランドや、株式会社松崎の歴史について語って下さった裕太さん。
きみたつブランドに対する熱い想いやそれぞれのおもちゃに込められたこだわりを直接聞くことができ、とても貴重な機会となりました。また、実際におもちゃを手に取ると、インタビューで聞いたこだわりをたくさん発見することができ、夢中になって遊んでいました。
株式会社松崎の歴史をたどり、ずっと昔から木と子どもたちの関わりを大切にしてこられたこともとても素敵だなと思いました。そのコンセプトを踏まえて、広告代理店での経験を活かし、自らきみたつのロゴやコンセプト、そしてマーケティングまでもこなしてしまう裕太さんの多才さには非常に感銘を受けました。
これから、関西や全国とより多くの子どもや先生のみなさんに手にとっていただけるよう応援しています!一緒に神戸市北区の魅力発信活動も盛り上げていければ嬉しいです。

株式会社松崎のHPはこちらから
きみたつ ブランドのInstagramはこちらから

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?