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カンヌ脚本賞を受賞したドライブ・マイ・カーを観てきたので感想を書く

遅ればせながら「ドライブ・マイ・カー」を見てきた。第74回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞したらしい。原作は村上春樹の小説「女のいない男たち」に収録されている短編集。

話を強引にまとめるならこう。「人生は辛い。それでも現実に目を背けず、己と向き合う他ない。そうやって生きていこう」。

最近はハッピーエンドの映画に疲れてきた。「辛いこともあったけど、最後はみんな幸せで、友情と家族の愛で世界は回っている」。そんな映画に疲れてきた。人の人生はそんな単純に語れない。希望を見せつつもどこか影を感じる映画の方が好き。

実は、カンヌで賞を取ったというのは全く知らずに見てきた。ある日の仕事終わりのことである。久しぶりにレイトシューでも観るかと思って、ネット上映中の映画を探した。ストーリとあらすじを読んで、なんとなく面白そうとチケットを予約したのがこの映画だったのである。

上映スケジュールに普通に掲載されていたので、最近の映画かと思ってたら1年前に公開された映画だった。つまり、カンヌで賞を取ったので再上映されていたのである。

大阪駅の遥か上。エスカレータで延々と登った先。「大阪ステーションシティシネマ」で20:15からの上映だった。レイトショーというだけあって、客先はまばら。一番後ろの端の方でゆっくり鑑賞した。

あらすじは公式サイトを見てほしい。

妻との記憶が刻まれた車。聴けなかった秘密。孤独な二人が辿りつく場所──

再生へと向かう姿が観る者の魂を震わせる、圧巻のラスト20分

舞台俳優であり演出家の家福(かふく)は、愛する妻の音(おと)と満ち足りた日々を送っていた。しかし、音は秘密を残して突然この世からいなくなってしまう――。2年後、広島での演劇祭に愛車で向かった家福は、ある過去をもつ寡黙な専属ドライバーのみさきと出会う。さらに、かつて音から紹介された俳優・高槻の姿をオーディションで見つけるが…。

喪失感と“打ち明けられることのなかった秘密”に苛まれてきた家福。みさきと過ごし、お互いの過去を明かすなかで、家福はそれまで目を背けてきたあることに気づかされていく。

人を愛する痛みと尊さ、信じることの難しさと強さ、生きることの苦しさと美しさ。最愛の妻を失った男が葛藤の果てに辿りつく先とは――。登場人物が再生へと向かう姿が観る者の魂を震わせる圧巻のラスト20分。誰しもの人生に寄り添う、新たなる傑作が誕生した。

https://dmc.bitters.co.jp/

村上春樹の小説はほとんど読んだことがない。昔一冊だけ買ったことがある。「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」という本だが、結局最後まで読まずに本棚の奥で眠っている。

小説でないが村上春樹の紀行文は面白かった。「ラオスにいったい何があるというんですか」という村上春樹の旅行記のような本である。もともと海外旅行好きでラオスにも行ったことのある私には響いた。

映画は179分という超大作だった。

上映が終わったのは23:30頃。

ほぼ終電の時間である。

眠い目をこすりながら大阪ステーションシティシネマのエレベーターを降りる。1階に着くとJR大阪駅の中央改札前を通り、家の方向へ向かう。終電前の駅は静けさの中にあった。

帰り道、これもいい機会と思い原作が収録されている「女のいない男たち」をAmazonで買った。

おしまい。


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